インチキ革命明治維新

 石の扉を読了。amazonなんかを見ると賛否両論で、否定的見解の一つが「フリーメイソンに贔屓されてうらやましいだろう?という自慢が嫌」というレビューがあったが、総じて面白かった。確かに鼻につくところはあるのだが、メーソンの実態はどうあれ、現実の社会ってかなりコネで動く部分が多いだろ?というのを考えると結構納得がいく。世の中身内びいきで動いているよね?と考えるのも萎える話だが。そうは言っても食い詰めたら最後に頼るのは家族だろうし、生存保険として一番頼りになるのが身内ってのは現実ではよくある話だ。
 そもそも江戸時代ってのは綱吉の時代で頂点を迎え、その後は停滞期を経て地球寒冷化による不作も相俟って、下降線を辿るばかりであったわけだ。人口的にはほぼ平衡を保っていたわけで、ある意味退屈ではあったが、欲をかかない限り安定した時代。しかし、幕末は役人の腐敗も凄く、多くの藩が財政危機に陥っていたという、ある意味現代に通じるものがある。
 まぁ正確になぞるつもりも無いのだが、池田・田中内閣のころが綱吉の元禄文化だとすると、その後の賄賂が横行した田沼の時代はバブル時期と重なるような気がしないでもない。田沼意次は景気は良くしたが、贈収賄が横行したといわれる。とうぜんリクルート事件などでトップの中曽根なども汚職をするのだが、なぜか失脚しない不思議。まだ江戸時代のほうがまともだわな。寛政の改革はせいぜい橋本内閣までのいずれか、天保の改革はすっ飛ばして、アメリカの年次改革要望書に粛々と従った子鼠・ケケ中内閣は安政の改革にあたるのかな?。不平等条約である日米和親条約を結んだのもこのときだしな。しかもその後の後を継いだ井伊直弼が大弾圧を強いたってのも、バカ安倍とやり方は良く似ている。

慶喜と春嶽は 故・井伊直弼が行なった大獄は「はなはだ専断の計らい」であったとして

  1. 井伊家に対し10万石削減の追罰を下す。
  2. 弾圧の取り調べをした者達を処罰
  3. 大獄で幽閉されていた者達を釈放
  4. 桜田門外の変坂下門外の変」における尊攘運動の遭難者を「和宮降嫁の祝い」として一斉に大赦

 安倍は殺されるどころか、まだ議員職にしがみついて見苦しい発言をしていることを考えると、やっぱ江戸時代のほうがまともだったといわざるを得ない。福田は慶喜や春嶽にくらぶべくも無く、ひたすら国民を痛めつづけているしな。自民党最後の総理大臣になるかもしれないのに、この醜態。そうはいっても自民党独裁がまだまだ続くかもしんないので何とも言えないわな。しかし、結構現状日本が幕末の混乱期に非常に良く似ているような気はする。
 さて、本の内容だが、結局明治維新はイギリスの武器の調達を受けた長州の勝利だということだ。メーソンのグラバーの内意を受けて坂本竜馬薩長同盟を完成させってのも、彼がグラバーのエージェントだったから浪人風情のくせに、あの身分制度の厳しい江戸時代に、両藩トップの仲を取り持てたってのがね。普段は諸藩に偉そうに振舞っていた徳川幕府が、実態はネポティズム満載の機能不全政府で、ペリーに大砲をうたれただけで見苦しく不平等条約に調印するってんだから、武器の力は凄いもんだ。幕府は長州征伐に一度は成功しているし、それこそ日本全国に大号令をかけることが出来るんだったら、薩長がくっついていたって数で勝つわな。でも転覆した。
 本によれば、グラバーは幕府を転覆させるために、長州には武器を売り渡したが、幕府とも契約していて、そっちのほうは武器の引渡しの際にトンズラこいたらしい。そりゃ武器が無ければ、ペリーの大砲にひれ伏した幕府だから降参せざるを得ないだろう。ちなみに勝海舟も幕府には居るが、無血開城させるためのメーソンの息のかゝった役人だったらしい。いくら長州の武器が強いといっても、大部隊が展開できない江戸城下で、数を恃みに抵抗したら被害は甚大でも撃退できた可能性は大きい。勝は他の幕臣に長州が強いと触れ回って戦意を萎えさせ、降参させる埋伏の毒ってところだ。実際に江戸城無血開城したとはいえ、やっぱその後幕府軍と政府軍は死闘を繰り広げるわけで、そんな中、「殺し合いはバカ同士でやらせて、自分たちは漁夫の利を得るため金になることだけ勉強しよう」と言っていた不心得者が福沢諭吉なわけであって、それが100年以上の時を超え、慶応閥として、福沢諭吉の生き方そのまゝに寄生虫のようにはびこっているというのがまた感慨深いわな。
 ま、言うなれば長州はイギリスという外患を国内に誘致して大英帝国の日本殖民地の総督にならんとした害毒と言えなくも無い。そりゃ外敵を城内に引き入れた坂本竜馬は裏切り者以外の何者でもないわけで、別に幕府側の人間でなくともスパイと見做してもおかしくないわな。ぶち殺されても文句は言えないというか。ま、みんな苦しいんだから、少々の悪事は見逃すが、コイツだけは許せないって思われたのが坂本竜馬
 明治維新が無血革命として世界的に賞賛されているとか言われているが、そりゃイギリスにとっては日本の裏切り者の手引きで日本政府をひっくり返したなんてとても口では言えないわけで、日本人の手で行われたきれいな革命というしかないわな。明治維新以後、実はイギリスの影は見えなくなるわけだが、それは大航海時代に世界がスペインとポルトガルで分割されていた*1ように、太陽の沈まない帝国イギリスと、新興海洋国家アメリカで、シンガポール→香港とフィリピン→台湾を境に両国に分断されていたというだけの話だろう。イギリスもヨーロッパのゴタゴタでインドぐらいまでが実効支配の限界点であって、シンガポール、香港は点の支配で精一杯。アメリカは当時眠れる獅子と呼ばれた中国*2の太平洋進出を抑えるためにフィリピン→台湾→琉球→日本の壁を確保したかったというだけに過ぎない。
 さて、今の日本の不幸は、いくら腐敗していたとはいえそれなりに気骨のあった幕臣にあたる政治家が自民党公明党の与党には一人も居ないことだ。清和会のバカ森の次の小泉に狂奔した(というマスコミの誘導か?)日本国民のバカさ加減は呆れるほどだが、口だけ番長のキチガイ安倍、サラリーマンの味方になりすまして実は権力欲の深かった、これまた無能力の福田と、騙されつづけたわけなんで、もういくらイメージ戦略で来られても自民党議員である限り信用は出来ない。
 じゃぁ、衆議院野党に志がある政治家がいるのかと言われれば、これまた絶望的だ。小沢がまだ日本が独立国としてやっていくために必要なことを考えているのかと思いはするのだが、所詮元自民党、慶応閥、で、今読んでいるのが竹下派死闘の七十日 (文春文庫)で、これまた政局で小沢の信義に悖る行動を読んでいる最中。当時の自民党はいわば893の親分・子分の関係と同じ組織体系だったわけで、自分の志があったとしても発揮できない環境だったのだろうが、ま、人間だからね。こう自民党のでたらめを見せ付けられると、自民党の色が染みついた人間が、同じことをすると考えるのが妥当だろう。
 やっぱ菅かねぇ?。小泉が庶民に人気があった(とマスコミに見せかけられているだけかもしれないんだが)のも、厚生省時代に、菅が薬剤エイズで政府の責任を認定して人気をとった官僚叩きのパクリのおかげだしな。しかも菅と違って中身の無いスッカスカのパフォーマンスのみ。バカ安倍が年金のデタラメを菅厚生相のせいにしていたが、あれは小泉が菅の物真似しかやってないというのが念頭にあって、小泉のデタラメはきっと菅の真似をしたせいだという思い込みがあったからだろう。しかし、民主党では露出が少なくてインパクトが無いよな。東工大出身なら、どんな日本の大学の経済学部出身者よりは経済に明るいような気がしないでもないが。
 うだうだ言っても、結局、混乱を収束させるリーダー要素を備えた人物が幕末期に較べて圧倒的に少ないわな。能力がある人でも世襲や派閥で頭を抑えられていて地べたを這いつくばっている状態かな。その人たちを伸ばしていくためにも、明治維新みたいなインチキ革命ではなくて、売国奴は遠慮なくぶち殺す革命が必要なのかね?。

*1:トルデシリャス条約。考えてみればキリスト教国以外は全部野蛮人の国で、カトリックに染まるべしって傲慢な考えだよな。実際にスペインは南米で原住民を虫けらのようにぶち殺しているわけだし。

*2:中国が実質舐められて分割されるのは日清戦争での敗戦以降である。日清戦争のときはまだ日本は弱いという認識で、その小国日本に負けるから中国が喰い物にされたわけだ。実質日本が強国と認定されるのは、強さがヨーロッパで認知されていたロシアに日本が打ち勝ったためである。つまり、1900年台になるまで、日本は、現在で言うイラク・イラン・リビア北朝鮮ソマリアですらなく、ネパールぐらいの国だと思われていた。ま、ペリーの大砲に怖気づいて態度をひっくり返したんだから、鉄砲で脅せば言うことを聞く土人ぐらいの感覚だったんだろう。