ひまわりっ!! 第8話「つきよの森は危険がいっぱい」

 叩いたら太鼓のように鳴る帯と、飛び道具を撃つときの表情はさすがヒメジならでは。
 さすがにきらきら〜つきよ姫Ver.〜はありませんでした。もしかしたらと思ったけれど、どう考えてもeufonius大竹裕子な筈もなく。
 まず、ひまわりが劣等生とか言っておりましたが、それはないんだろうなと思う次第。飛行機事故でというのも方便で、背広の男*1の空中要塞でたくさんの実験体が培養されていたから、ひまわりもその一人で、彼女を隠すためにばっちゃにそう説明したに違いない。そしてそれとは知らずひまわりに興味を示して武智先生も内心は緊張しているに違いない。しきみたちが優秀な遺伝子をもち、生まれつき忍者と言ってはいたが、まず優秀ったって、それは作ったものがそう判断しているだけに過ぎない、いわば作ったものにとって都合がいいというのを言い換えているだけなのである。生まれつき忍者というのも、忍者というものが自分の意志をもたず命令に忠実であるというのは、言い換えれば奴隷というわけであって、しきみたちはそういうことに対してなんの疑問も持っていない、いや持たされてこなかったのだろう。だからこそハヤトが(そういう構造を見抜いている視聴者に成り代わって)なぜそういう忍者になりたいのかという問いをひまわりに投げかけるわけですよ。ではひまわりはそういう忍者のあり方を肯定するのではなく、忍者の(権力者の都合がいいように働く奴隷という)あり方自体に踏み込んで役割を再構成*2してみせたわけで、これは胸がすく場面ではありました。
 つきよ姫の活躍に期待していたのではありますが、よくよく考えてみればめざましい活躍を望むべくもなく、苦悩者の記号を背負っておりました。土地にしがみつく旧弊に侵された田舎モノという見かたができないわけでもないのですが、ここは素直に古き良き日本を隠喩していると思いたい。物質文明の便利さに、つい我々は経済発展のために変わらねばならないという権力者の扇動にのってしまいがちなんだけど、別に今も世界の大部分では機械や電気がなくとも人間生きていけるという生活を送っている人はたくさんいるわけで、それはひまわりとばっちゃの生活に活写されていたわけなんですよね?。物質の豊かさを追い求めて我々が幸せになったのか?、本当に豊かになったのか?と言われれば、ちょうどバブルの崩壊以降から、どうもそれは違うらしい、権力者がより権力基盤を強固にするための貨幣経済を磐石にし、かつ権力者に有利な経済システムに載せられて、ひたすら労働させられ精神的にも肉体的にも追い詰められていっているという状況なわけですよ。金持ちと貧乏人がなんのルールもなく競えば優勝劣敗なわけで、そういう強者のわがまゝを制限して大部分が助け合って生きていくために規制があったわけなんだけど、いま金持ちが弱いものを思う存分叩いて財産を合法的に強奪するために規制緩和を行っていて、そしてそういう真理を理解せず賛同してしまっている日本国民が非常に多いわけなんだが、そしてそういう状況に日本がなってしまっているというのが前回の描写であったわけなんだが、前回のマクロ的な描写に比べて今回はミクロ的なものではあった。
 つきよ姫の自己犠牲的なあり方にも自己陶酔的な、言い換えればセンチメンタリズム的なものを感じずにもいられないのではあるが、そこは滅びの美学で済まさずに弾圧対象であるひまわり達が共同して立ち向かっていく姿にも躍動を感じた。背広の男が武智先生に業を煮やして自分で仕事をやるといった割には手下に丸投げ、対するつきよ姫は森と仲間を背負って不利な力勝負に自分から乗り込んでいくというのも悲劇的。ブリザードでタジタジのひまわりたちの裏切った裏切らないの齟齬は本気だったと思うんだけど、温泉に放り込まれてからの協力体制は美しいことこの上ない。またあとで引用しますが、ここでひまわりたちとつきよ姫が仲間割れしてたら敵の思う壺なんだよね。素直に視聴している人にはつきよ姫の駆け引きが引っかかるかもしれないんだけど、つきよ姫の今までのあり方もさることながら、それほどまでに切羽詰っている状況ってのが泣ける。策を弄するかもしれんが、ほんらいつきよ姫はおとぼけキャラなわけであって。
 まぁちょっと私も錯乱してきたが、あまりに多くて触れなかったこともあるのだが、いろんな要素が溶け込んでいて解釈が一筋縄にはいきません。学校が物理的に潰されること、住み慣れたところをおん出されること、新しい環境での対処法、と舞台の移り変わりだけでも一つの考察対象にもなるし、都市と田舎の対立なんかも含まれているんだろう。当然仲間や家族に対する視点もあったりと言いたいことは山ほど浮かんできます。でもこれだけ事態が重大になっているのに展開はのんびりとしていて決してアニメという目くらましで論点をぼかしたりしていないんですよ。脚本が山田由香って女の人で、よくこんだけ詰め込んで破綻がないなぁと感心もするのだけど、監督やシリーズ構成もあっるのだろう。そこらへんの意思疎通がうらやましくもある。これだけ静かなのに水面下では奔流が滾っているというか。

*1:とEDロールにはあった

*2:これが本当のリストラなんだけどね。今多くの企業がやっているのはリストラという名の首切りで、エセリストラなんですよ。