ARIA The NATURAL 第21話「その 銀河鉄道の夜に…」

 うーん、これまたメタな。
 アリスの指摘どおり銀河鉄道が死へのメタなのだとすると、アリア社長を通じて灯里が切符を貰ったのは即ち「死ね」といわれたということなんだろうか?。猫があの日あれだけいっぺんに死んだということなんだろうか?。灯里が子猫に切符を譲ったということは即ち子猫に死ねと言ったということなんだろうか?。と考えてもしょうがない。
 灯里の不思議体験と灯里周辺の人物キャラとの接点ですが、藍華とアリスはかなり避けられておりました。まぁ藍華も灯里の恥ずかしい台詞には閉口しているらしいので、どうやら彼女達は灯里の話を初めからヨタと認識しているっぽい。アリシアには切符の話もスタンプの話も結構しているのですが、絵的には切符や額のスタンプをアリシアに見せる場面は巧妙に避けられている*1。原作ではアリシアが切符やスタンプを確認している場面があったりするのだろうか?。信者には悪いんだけど、幽霊を見たとかサンタは本当にいると主張する子供をうまくあしらう母親とアリシアは重なって見える。灯里自身が感受性の強い娘だし、別に銀河鉄道があの世界では実在しているという設定であっても構いはしないんですよ。ただ感心なのは、灯里の不思議体験をうまくあの世界の現実と交錯させている匙加減は上手いんじゃなかろうかと思いました。
 読み込んではいないんだけど、話の筋をおさらいするというために青空文庫銀河鉄道の夜をざっと斜め読みしてみた。猫出てこねぇじゃん!。それはさておき、天球を走り抜ける様はさすがにファンタジーなんだけど、わりとメタな話が多い。引っ張ってきたことをぼかすために、パシフィックとか言わせてますが、氷山にぶつかって沈んだってのはタイタニックを翻案してるんじゃないだろうかとか想像は膨らみます。さすがに農家の窮状を憂えていただけに経済的にも言いたいことがあったようで、

ダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと穫(と)れないふりをして、かくして置いた金剛石(こんごうせき)を、誰(たれ)かがいきなりひっくりかえして、ばら撒(ま)いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、

 なんて表現もあって胸がつかえる*2。ジョバンニの緑の切符の意味とか死んだ直後のカムパネルラの父親のやたらあっさりした態度とか考えさせられる部分があって、かめばかむほど面白いんだろうなとは思いますが、未定稿なので作りこみは完全でないのかもしれず。そういやこの作品の登場人物は名前からするとイタリアっぽいな。もともと童話として作られたんだろうけど、灯里が読んだという絵本は、見かけのきれいさとかはあっても、作品にこめられた意味は捨てられてそう。見送る場面で銀河鉄道に乗りたいとあこがれていたし。まぁ原本のまゝ子供に読ますのはつらいとは思うんですが、おもしろおかしいところだけ童話として読ますのはどうなんだろう?。毒気を抜いたつもりが大いに旨みまで抜き取っているような気がするんだが。何年か前、日本のむかしばなしに触れる機会があったのだが、結構しかえしとかの場面が省略されていてびっくりした記憶がある。そこを抜いてしまったら話にならんだろう?と思ったものだったのだが。なんつーか、話ってのは人を面白がらせるためだけにあるものではないと思うんだが…。

*1:ラストの場面を見ると、どうやらアリシアは灯里の額のスタンプを見たっぽい台詞でしたが。

*2:宮沢賢治が16歳ごろのときにタイタニック沈没事件があって日本でもセンセーションを巻き起こしていたみたい。当然第一次大戦時のバブル景気も知っていたであろうし、米騒動なんかも経験していたんじゃなかろうか。