スターシップ・オペレーターズ最後の戦いで、アマテラスを追い詰めるのに王国側はコンキスタドールを旗艦とする合計5隻の艦隊を差し向けています。シュウ星域での戦いではエルロイ提督がアマテラス一隻を沈めるのに3対1にすべきだと言っているのに、今回は5隻と奮発しています。私も今回の描写では4隻沈めるのはやりすぎだと思っていましたが、よくよく考えてみると5隻用意したのには必然性があるのではないかと思います。
宇宙では3次元の広がりがあるため、一隻といえども包囲するのには骨がおれます。お互いが殴りあうつもりなら2対1でも十分だとは思います。しかし、たった一隻でも逃げようとするのなら、進路を防ぐために用意すべき数は多くなります。では3席ではどうか。3隻をどのように配置したところで、カバーできる範囲は平面に限られてしまいます。包囲陣がうまく機動できれば逃がさないことも可能ですが十分ではない。
4隻あればどうかと考えて、実はこれで立体的な包囲網ができると考えられます。理想的なのは正四面体の頂点に占位して、内部に敵艦を収めれば包囲の完成です。コンキスタドールが予備兵力として後ろに控えていますが、万が一アマテラスが包囲網を強行突破しようものなら、戦闘の推移から判断して頭を抑えるように動いて攻撃すればまず取り逃がすことはありません。すなわち、今回のパルミア星域戦での王国側の5隻投入には必要十分な理由があると考えられます。
そのように考えると、今回の王国の戦術は基本的に万全の体制であったと考えられます。アマテラスの進路(先にはコンキスタドール)に対して直行平面上に4隻を配置しています。しかも正方形の頂点に4隻を配置し、アマテラスの進路と正方形の中心が重なるようになっています。戦闘開始時には対角にある2隻を先行させています。その2隻がアマテラスを撃沈してくれれば良し、失敗したときでもその2隻はアマテラスの後方に進出させ、先ほど言った「正四面体包囲網」を完成させつつ、後方の2隻で攻撃を行うという戦術です。3次元空間での戦い方として十分納得できる戦術と思いませんか。
さてアマテラス側ですが、超速回頭はともかくとして、大まかな対応としてどうだったかを考えてみます。まず相手が包囲してくるのがわかっているのに、じっとしているわけにはいきません。4隻包囲網で苦しいのなら、1隻でもすばやく沈めてしまえば見通しは楽になります。3対1にしてしまえば平面の上下方向に逃げることが可能です。コンキスタドールが予備として残っていますが、さらに1隻を沈めてしまえば逃走は容易になります。ではどの1隻を沈めるべきか。やはりリサを選んだのは納得がいきます。突撃艇の攻撃はやっかいではありますが、一回一回の攻撃による損害は軽微ですので、突撃艇の攻撃を無視して本体に集中しています。本体がやられれば突撃艇は無力化されますし、本体自身の攻撃力はあまりないと予想されます。シェンロンが撃沈されたのも、リサの突撃艇にはあくまで力をそがれただけで、とどめはコンキスタドールでしたし。普通に考えても理屈には合っていると考えられます。
その次のマリアナの行動ですが、別にスターシップ・チャンネルの陽動がなくても全速力でアマテラスを追いかけていく必然性は考えられます。アマテラスがリサに向かっているとわかった時点で、アマテラスは防御の薄い後部をさらしているわけです。絶好の攻撃チャンスなわけです。しかもアマテラスはリサに向けて進行しているので、全速力で追いかけなきゃなんないですし。以前はマリアナがアマテラスの射程に都合よく入ってしまっているのがおかしいと述べましたが、射程内に入る行動をマリアナが取ることに違和感はありません。
あと残りの2隻ですが、最大戦速でなくてもアマテラスに近づいてはいますから(しかも少なくとも一隻はアマテラスの頭を抑えるような行動をとると思われますから)射程内に入っていたとしてもおかしくはありません。
実はここまでの経過はコンキスタドールの戦況表示画面に示されてはいます。アマテラスはリサに向けて最大戦速を指示した後、推力の指示は行っていないと思われます。戦闘開始時からアマテラスの進路は緩やかなカーブを描いているだけです。姿勢変更だけは盛んに行ってはいますが、軌道自身は大して変化がない。4隻目のアクティウムがアマテラスの背後に迫る特異な運動を行っていますが、むしろなんでこいつは潜航艦の特質を生かして早く攻撃しなかったのかが不思議なくらいです。アニメの記述ではアマテラスがリサの射程内に入って以降、次々と他の艦の射程距離内に入ってはいくんだけれども、王国側は自軍の艦が次々と沈められていくので、あっけに取られている間に自分もやられてしまうということなのだと思います。最後コンキスタドールも自軍のやられ具合を見て殺到するんだけれども、それが仇となってアマテラスに攻撃される結果となりました。
繰り返して視聴することによって無理やり納得しているような気がするのですが、大体こんな感じではないでしょうか。よくよく見てみれば考えられないことではないのでしょうが、やっぱり胡散臭さは感じます。戦況表示画面では各艦の武装の射界が示されており、この戦闘を無理なく納得させるにはその射界が小さすぎる感じがします。もっとも、戦況表示画面の射界が実際の射程距離をあらわしたものではなく、あくまで目安ということは考えられるのですが。実際の射界を表示してはごちゃごちゃして見にくいという判断かもしれませんし。
基本的に王国の戦術もアマテラスの戦術にも大きな間違いはないと思います。私はやっぱり射程距離の怪が気になりますが、それほど非難することでもないかなと思っています。