エムデン号最後の航海 ホイト 筑摩書房

 確か中学生ぐらいのときに読んだ記憶があるということで、スターシップ・オペレーターズの視聴を機に探しておりました。実はタックマンの「8月の砲声」も読み進めている最中です。今まで第二次大戦のほうが兵器的に好きだったのですが、年をとってみると人間模様の点で第一次大戦のほうが面白く感じられつつあります。上の言うことを全然聞かない将軍がいて、でもそいつのおかげで戦いに勝ったりとかね。エムデン号のほうは100p強なので読み終わったのですが借り物なので今手元にありません。記憶が確かではないと思いますがご容赦のほどを。
 エムデンは青島にあったドイツ東洋艦隊の軽巡で、膠州湾を出撃後太平洋西部・インド洋を荒らしまわり、最後には重巡のタコ殴りにあって沈んでしまいます。重巡と戦闘する直前に下船していた上陸隊がボロ船を調達しながらインド洋を渡り、最後コンスタンチノープルまでたどりつくのも圧巻です。淡々とした書き口なのですが、散々な目に遭いながらも威厳を失うことなく帰還する様は感動的ですらありました。なんか中学のときに読んだのと印象が全然違うんですが。
 描写の中に補給のことについて触れた部分がたくあんあり、石炭を頻繁に積み込んでました。というよりよく補給船を随伴してました。拿捕しちゃぁ補給、拿捕しちゃぁ補給。騎士道とか言ってますが海賊と変わりないような。でも積荷が中立国のだと代金とか結構気にしてるんですわ。次に補給船と落ち合う場所をその都度指示してたり、交渉の際石鹸をやったら相手が喜んでうまくいったとか、砲をぶっ放すだけが戦争ではないのが良く分かります。子供の時は戦闘ばかり気にしながら読んでいたので、沈めたか沈められたかに意識が集中しちゃってたんでしょうね。再び読み返してみると任務遂行の上で何が必須なのか、危機に際してどんな判断をとるべきか、もっと言っちゃえば人間如何に生きるべきかについて深く考えさせられてしまいます。無線所があるといってもほとんど情報は遮断されたまま作戦を遂行しなければならないので、不安の中での決断とか今とは様子が全然違うんでしょうね。人工衛星のある現代ではもう望み得ない状況だろうけど。のんびりというか、冒険的というか。なんか今のほうが便利だけど昔のほうがわくわくするな。タックマンのだとゲヱベンの活躍も必読です。これもある意味痛快でした。あるんだったらシュペー提督の東洋艦隊のも読んでみたいですね。
 スターシップ・オペレーターズの世界設定が、まだ戦闘技術が未熟であるとか、宣戦布告してからの攻撃とかおおらかで、結構この時代の雰囲気と似ているような気がします。ドイツ潜水艦戦のもそれらしいけど、敵の顔が見えてきた今となってはやっぱり水上艦艇物に似ている気がする。でもなぜにドイツ物?