3rdQ2017アニメ新番チェック。

 ちょっと今までを振り返ってぼんやり考えていたのだが、このアニ感サイトを立ち上げた頃はちょうど子鼠劇場のあたりで、それから10年以上たっているんだなという事実に感慨が深い。あの頃は能天気にオモロイアニメ云々をお気楽にとらえていたようなんだが、当時はまさか日本がこのような状況になるとは思ってもいなかった。自分の人生を振り返ってみても、なるほど転換点はあの時期であることが今更ながらにわかるわけで、子鼠劇場前と後では日本のあり方が全然違う。地方在住ということもあって、急速に悪化する日本の経済状況からなんとか地方がやっていけるようにならないかという風にサイトを始めてから考えるようになっていったのだが、時代を経るにつれ、どうやら政府は日本全体を立て直すつもりはなく、本気で地方を切り捨てにかゝってるんだなというのが明らかになるにつれ、どうも個人のアイデアはともかく、地方の財界ですらもうお手上げの状態であって、少々の工夫程度で地方をなんとかできるような状況ではないというのがわかって、考えるのが無駄なんじゃね?ということに思い至るようになった。
 思えばこのサイトを立ち上げるきっかけとなった作品であるスターシップ・オペレーターズを振り返ると、あれは当時問題になっていた若者の厳しい就職状況を「若者自身が」なんとかするという筋立てゞあって、そこにはあまり社会の悪意が感じられなかった。しかしその後注意深くいろんな作品を読み込んでいくと、割とアニメスタッフが社会的構造についてぼんやり言及するようになり、どうも視聴者に対して気軽に萌え記号を消費させているだけではなくなってきているんだなという風潮が感じられた。で、来期(7月〜)の作品をザッピングしてみると、そういう傾向があっさりきえているように感じた。とはいえ、見かけがそうなっているだけであって行間を読めば全然そんなことはないという作品もあろうから、即断は禁物だとは思う。で、現状に対する問題提起という点においてみれば、おそらく「甲鉄城のカバネリ」がもしかすると山場だったのかなという気がしてる。問題提起という意味では大岡昇平の野火の再映画化とか「この世界の〜」のヒットなどもあるが、フィクションと現実をファンタジーの皮で包んで提供するアニオタ向けとしてはカバネリは力の入った作品だと思っていて、しかし結果的にみるとおそらく作品のメッセージはあまり好意的には受け取られなかったと見るべきだろう。自分は「この世界の〜」についてはアニメは未視聴だが、原作は既読であって、それを基準に言わせて貰えば、カバネリはファンタジー世界を舞台としていても描いているのは現実であり、「この世界の〜」はディテールに凝っており、過去の事実を扱っていながら描いているのはファンタジーであると感じた。そこまで言うのもアレだが、血なまぐさく暑苦しいカバネリはそういう現実を視聴者に突きつけるからこそ視聴者に忌避されたのであり、「この世界の〜」は過去の過ちを描いていながらおそらくそこから逃げるのを善しとしているから、そのやさしい世界を視聴者は好んだのではないかとさえ思える。繰り返すが「この世界の〜」は友人から聞いた話だと原作とアニメでは違った作品になっているとのことであったので、原作基準で語っている自分のこの感想は的外れの可能性が高い。
 さて、カバネリが期待したようなヒットをせず、イゼッタがあの出来だったというところからして、これはもうそういう作品は世間受けしないという結果なのであって、それが君の名はだとか今期でいえば月がきれいなどの、どちらかといえば大きな構造から再びミクロ視点での作品に重点が移動していってるんだなという段階のように思える。社会的矛盾に目を向けるのではなく、日常から得られるさゝやかな幸せに目を向け、まぁ余計なことを考えるなといった感じ。が、別にそこにはそういう誘導があるのではなくて、むしろ視聴者が望んでそういう作品を支持しているという印象。そのへん織り込みたいライターは諦観しかなかろうが、サブカルメインカルチャーでないがゆえのサブなので、収まるべき位置に収まっていくってだけなんだろう。


 さて、かなり前置きが長くなってしまったが、社会のあり方として面白い視点をもってきていそうなのが「恋と嘘」のような気がするが、生憎あまり視聴意欲は湧かない。あと「ようこそ実力至上主義の教室へ」もこれまた視聴意欲は湧かないのだがチェックはしとくかといったところ。チェックするという意味では海外でそれなりにヒットしたらしい「RWBY」も視聴しとくべきなんだろうけど、これもあまり積極的に見に行くかという気分にはなってない。
 個人的な興味でいえば「異世界食堂」にちょっと食指が動いているが、原作がなろう小説なので仮に出来がよかったとしてもあまり他人にお勧めするような作品ではないと思っている。
 これも個人的な興味で他人にお勧めしたい作品ではないが、「天使の3P!」は雑破業がシリーズ構成なのでさゝやかな期待をしてる。