ROBOTICS;NOTES 第22話

 ボムは3回まで。
 いろいろお約束が盛り込まれていてワロタ。それはともかく、少しでも現実のロボットに近づけるためにいろいろ考えられていたのが面白かった。とはいえ、最終決戦で、ワイヴァーンの中から出てきた小型の人型ロボットは、ガンつく1との対戦で、いち早く電池切れになるんじゃないかと思っていたけど、そこまでリアリティは追及してなかったな。とりあえずガンつく1のリアリティ設定を補強するために使われたウソ設定は、主人公の時間制御とモノポールエンジンが大きなもので、この色付けはよく考えられていたかも。そのいちおうリアリティを重視したガンつく1の敵がリアリティ無視のラスボス設定ってのもな。
 最終回ということで、熱い展開だった。まぁ今までの蓄積あればこそではあるんだけど、実際これうまく作れば半クールに圧縮できるんじゃね?とすら思うが、それはまぁともかく。まさか正義は勝つなんてのが現実には全くありえない台詞にこの作品のメッセージが込められているとは思わないが、正統派ロボットアニメをメタで踏襲している以上、そのへんは外せないんだろうね。まぁそのへん二つや三つのお子様じゃないだろうから、あき穂に作品のメッセージが込められているのではなく、しらけているように見えた八汐が自分の未来を形にしていくビルドゥングスロマンという部分に重点があるのは中高生ともなればわかるとは思う。そこに現実のロボット技術が順当に向上したらこうなるんじゃね?というリアリティっぽさ、居る夫というギミックを挟んで、実際に我々が見せられているものが果たして現実なのか?という問いかけ、主人公達が対峙する敵がいちおう主人公達に対応できるように、政治屋だとか官僚、経済界と切り離されたスタンドアローンなものにされていたからこそ処理できた(大げさに地球を救ったといっているが、それは誇張と看做すべき)バランス感覚と、終わってみれば構造としてよく考えられていると思った。リアリティを志向しているとはいえ、もちろんフィクションなのは間違いないんだが、そこに現実のロボット技術者や日本の宇宙開発者に対するリスペクトもきちんと入れられていて、それが劇中劇であるロボットアニメと対比されている構造もなかなかにしてよい。
 と、枠組みを考えたら凄く感心できるものではあるんだけど、じゃぁ物語として面白かったか?と言われたら、そこはうーんといった感じ。あき穂はそれこそコンピュータがマイコンと呼ばれ、7セグメント表示が2桁分しかないコンピュータを自作していた昭和期の工作少年のメタファーであり、八汐が友人と一緒に居てもスマートフォンやゲーム機ばっかいじっている現代の若者のメタファーであって、それらを対比しながら摺りあわせを行い、テキストに仕上げているというのは考え方として面白いんだけど、その関係性は所詮昭和期のドラマでしかなくって、現代性があまり感じられない。高校生チームは皆コミュ障に設定されていると以前に述べたが、人見知りの大徳、オタクの古郡、プライド上等のMr.プレアデスなど、確かに軋轢は描いていたが本来混ざることがない面々をテキストの巧妙さで混ぜ合わせている。初めっから無理があるとわかっているから結局そのキャラ同士の繋ぎに恋愛要素を持ってきているのはうまいというべきなのかズルいというべきなのか。無理がないのはロボット製作について共有意識を持てるMr.プレアデスとあき穂ぐらいなもんで、あとは何で一緒に居るのか、普通に考えるとおかしい。趣味趣向がこれだけ違う面々が繋ぎ合わされるために必要なのはこの作品に見られるような、ベタベタくっつく関係でなく、むしろお互い協力し合えるところと人間的に合わない部分を区別して、適切な距離を保つことであり、それは以前述べたロケット製作における各部門を統合するフォン・ブラウンのようなプロデューサーであるんだけど、そのへんやはり浪花節じゃないと視聴者(ゲームであればプレーヤー)に理解されないと判断したのだろうな。だからこそ全体としては新味に欠けるものにはなったと言わざるを得ない。とはいえ、別にこの作品が新味を提供するのは目的ではないだろうから、むしろ視聴者に理解しやすい革袋に少々新しい中身を詰めているというのはもともとの方針なんだろうけど、ネットでの評判を見るとわかりやすい形にしたから評価されたというわけでもなさそう。もちろん新味の感じられるように構成して、それによってより人気が出たか?と言われると、これまたそうとも言えない。
 まぁ個人的にはリアリティの感じられないロボットアニメよりよっぽど良心的だし、既存技術に敬意をもって描いているのはかなり評価できるんだけど、本来ならもっと早く世に出てくるべきだったというか。現実路線のアニメというと、オネアミスの翼が思い浮かぶけど、これは失敗してる*1からな。ほんでもって、ガンダムが評価された直後、アニメがどっち方面に動いていくか?といったときに現実路線を志向したアニメが支持されずに来たわけで、もしかするとオネアミスの変わりにこれがあったらちょっとは違ってたのかなという気がしないでもない。言わば手遅れ感があってこの作品が作られたんだろうけど、現実に添って方向性を提案してないからアニメ自体が手遅れ感満載ってものになってしまっているというか。半田ごてを握ってマイコンを自作していた時代はともかく、PC自作が全盛の頃ぐらいにこれがあったら(自作と言うには大げさで、モジュール化されたパーツを組み合わせるだけではあるが、むしろそれはロボット製作に近いのでアリ。)、それなりに支持されてたんじゃないだろうか。
 いまやもうノートPCが2万で買え、それでパッケージゲームをやるのではなく、ネトゲやソシャゲをやる世代がターゲット層にならざるを得ないことに気がついて(いるんだけどしょうが)ないというか。もう出来合いのもので済ますのが当たり前であって、問題の解決は自分でその仕組みを理解することではなくて、政治的に行動するほうが圧倒的に効果的になってきているわけで、よっぽどのことがない限りそれに逆行して物事を変革するのはかなり難しい段階(日本経済が衰退しているから、ちょっとしたきっかけで逆転する可能性はあるのだけども)だと思う。スタッフの意気込みは買うし、既存のロボットアニメとリアリティの対比構造をとったのも評価するんだけど、なんで難しい条件を設定しちゃうの?というところが惜しいと言ったところ。別に物語の感動要素だとかも忘れずに詰め込んでいるし、クライマックスには燃える展開にはなったが、それだけといった感じかな。おそらくスタッフもこの作品はB級であるとわかっているだろうし、低い確率でスマッシュヒットになった可能性も否めないけど、自分的にはまぁ確かに評価されなかったのもわかるわ…ぐらいには思った。何が足りなかったとか何が余計だったかというわけでなく、悪い作品ではないと思うけど、出来の良し悪し抜きにしてというか出来はよいとは思うんだけど、好きか嫌いかと言われて、嫌いな要素もないが、好きな要素もほとんどなかったといったところか。おもろ。

*1:世の中的には圧倒的につまらないという評価。実は自分は初めて視聴したときは面白いと感じたので釈然としないものがある