ラストエグザイル-銀翼のファム- 第9話

 ジゼル拗ねるの巻。でも回復早ぇなぁ。
 うーん、フツーにいゝ話のようにも見えるんだけど、なんだかなぁで。ジゼルが自分を見失ったのは存在価値の喪失のハズなんだが、よりを戻したのは自分のことばかり考えていてファムのことに思いがいたっていなかったから?…という流れなのか?。ファムもジゼルの気持ちを考えてなかっただとか、じゃあミリアが自分のために二人を混乱させてスマヌと謝って雰囲気が変わるとか、一体ジゼルの存在価値の問題はどこいったんだ?って感じだ。そもそもミリアがクラウディア機関に弾を当てたのだって、シロートが発砲の衝撃に耐えかねて銃身が跳ね上がった末のまぐれ当りだしな。でも画面にハッキリそう描写されていてもジゼルにその真相がわかったわけでなし、なんとも言えぬ。
 脚本がどれだけキャラの心情を真剣に描こうとしているのかわかんないのだが、前にカルタッファルに帰りたがっているジゼルに、ファムがジゼルの能力の高さをあげてごまかしたという前歴があるので、そういうものなんかなと思ったりする。落ち込んでいてもうまいものを喰えばハッピーだろと思い至って実行しようとしたミリア然り、内面に立ち入らずホッケーで気晴らしを仕掛けたシルヴィウス整備クルー然り。
 まぁ視聴者としてはファムの決心は揺るがないことがわかっているので、ジゼルの処理はどうでもいゝちゃぁどうでもいゝのではあるが、かくもジゼルの問題意識散逸についてはあっけにとられるほかはない。そこまで考えていないように思うんだが、これは'80年代以降の男女共同参画あたりからの女性の自分探し・自己実現に対する断絶宣言なのなかと思ってみたり。いや、そもそもジゼルはファムを支えるのが使命と考えていたんだろうから、結局のところ再確認したゞけということなのかね。
 シリーズ構成としての視点からすると、第3艦隊の待ち伏せで空賊は壊滅的な打撃を受けており、ファムとしてはカルタッファルに帰ってもジリ貧なのはわかっていることだろう。それを言うならジゼルも認識していることだろうし。ファムの立ち位置としてはアナトレイという三番手ぐらいの大企業の最前線の支所に雇われている派遣労働者なのであり、しかもスーパー営業マンぐらいの働き手なんだろう。カルタッファルなんてのは一番手大企業アデス連邦にしっちゃかめっちゃかやられてしまった、無許可営業の中小企業であり、まぁファムとしては別にカルタッファル所属をやめなくても(むしろ請負か)よくて、自分の実力を大企業の庇護のもとでフルに発揮できるわけで、そこらへん迷う必要はないワナ。女房役のジゼルとすれば、むしろファムの背中を押すべきなんだろうに。が、こう考えてみると、そういうファムの出世物語というのをあからさまにしないがためのジゼルの悩みの卑小化*1だとすれば、なるほどこのほうがいゝやと思ってしまう。
 さて、今回は待ってましたとばかりに料理の描写が奮ってた。あと本当はルスキニアがサーラを操っている云々だの、シルヴィウスやミリアを取り逃がしたばかりでなく、第一艦隊に甚大な被害を受け、旗艦まで喪失し(奪われ)たサドリ爺さんの処遇は如何?だとか書きたい項目は山ほどあったんだけど、時間が経って勢いも薄れてしまいますな。

*1:こゝで物語の方向性とジゼルの自己実現を一致させてしまうと、そのほうが胡散臭くなってしまう。別にジゼルの悩みに世界情勢がなんらかの考慮をくれるわけではない。