バカとテストと召喚獣にっ! 第11話

 なんでこの作品の女性陣は、料理が壊滅的なのが多いのか。
 しかも男はそうでもないって設定らしいし。で、今回は多分視聴者が一番見たかった(というか、スタッフが見たくなるよう仕込んでいた)サイド?ストーリーだったと思う。というか自分がまさにそう。小学生の頃から因縁があるらしい明久と瑞希もなんか知りたいエピソードっぽいんだけど、見せ方としては消極的というか、明久と美波の仲をいっぺんに吹っ飛ばすためには、まだまだ見せられないって隠し方なんだよな。いや、原作を第3巻まで読んだ感触だと、実はそれほど翔子が雄二にぞっこんって感じは正直受けなかったので、やはりアニメ版の印象が自分には強かった。即ち、アニメ第1期での翔子と雄二の絆の描き方が秀逸なんだろうな。無事故の改新エピで、自分には十分伝わったもんな。
 さて、その機会があるならぜひにとまで思っていたエピだが、なんか想像していたよりずっとフツーでちょっと肩透かしな感じだった。雄二が翔子を助けるにいたったある事件で、翔子がインプリンティングされたんだろうというのは誰しも想像つくと思うんだが、もっとトラウマになるほどの猟奇的なものだったんだろうと思っていたのだ。ところが、蓋を開けてみると年端も行かない子供の至らなさ程度のことであって、拍子抜けしたというのが実感だ。翔子が上級生に囲まれて圧迫を受けている際にも、「あぁ、多分雄二はこの場面では翔子を見捨てゝ、事後戻ってみると翔子がそれはそれはいたゝまれないほど痛めつけられてしまっていて、見捨てた自分を許せなくて上級生にケンカを売り、その結果メタメタにのされてしまう」っていう展開だと思っていたぐらいだ。それが親が口出しをするほどのこともない子供の喧嘩程度のことであって、昨今現代日本で問題になっている陰湿なイジメほどでもない。本当はもっと凄いことがあったけど、この程度にしているから視聴者はそのへん汲んでくれってものかもしれない。が、もちろんこの作品自体がそれほど現実のエグさをオブラートに包んで視聴者に示しているって形をとっていないのでそれも考えにくいんだよな。
 但し、そういう判断を下すのも早計だろう。翔子を守るために身体を張ったってのがどちらかといえば子供のまゝごとっぽいとは言っても、スタッフ(多分原作もだろうが)が視聴者に提示したかったのは飛び出すまでの雄二の心境であり、この部分は翔子・雄二の絆の範疇を超える。イジメの場面は容易に現実の問題に転嫁することができるのだ。即ちより陰湿な現実の生徒間のイジメだとかパワハラだとか、現実の政治だとか。現実にあなたのためを思って踏ん張ってくれている人を、あなた自身は実際の場面で見殺しにしてませんか?ってモノだ。
 で、後から考えるとなるほどゝ分かることではあるのだが、翔子と雄二の絆はこの上級生との掴み合いの結果形成されたのではなく、実はそれまでにがっちりできていたというものだ。転校当初、孤立していた翔子に、少なくともある程度かわいそうであるという意識は雄二にあったに違い無く、またその中に翔子に対する好意が全く無かったとも言い切れないのではあるんだけど、雄二自身が公平と言い訳しながらも彼女に構ってやっているってのが示されており、しかも事件当初は翔子に友達が出来つゝあったにせよ、一番翔子の心の支えになっていたのは雄二であるという描写になっていた。で、面白いのが上級生の的になっている翔子の前に飛び出した雄二の心の中に、翔子を女の子として意識している風にはみられないような描き方がどうやら意図的になされているようなのだ。雄二自身他人とは深く付き合いをしてなかったし、だからこそ翔子につきまとわれるってのはある程度うざったいのも本当のことだったんだろうが、まんざら嬉しくないわけでもないってところだったんだろう。でも雄二の翔子に対する恋愛感情は徹底的に排除して描かれている。懐いてくれるのは悪くは思わないんだが、なんでそこまで自分に?という雄二の疑問が今もって彼の頭の中を占めているって流れはうまく表現できているように思うんだよな。大して翔子は相手を異性として意識するという恋愛でも「恋」の段階をすっ飛ばして強く雄二に惹かれているというのもまたうまいんだよな。
 いやぁ、なんというか、小さい頃のあの程度のことで実際問題長年一人の男に粘着するか?というリアリティには疑問を感じざるを得ないんだよな。もちろん翔子は雄二の追っかけをずっとしてたゞろうから、想いが強化されることはあれ、弱まる事は無いだろう。が、冒頭でも述べたとおり、現実社会ではクラスどころか学校(職場)全体を巻き込んで一人の人間を自殺に追い込むまでのイジメがあるわけで、そういう極限状態で救う救われるの関係ができたのならともかく…って所がどうしても自分には引っ掛かってしょうがない。女ってもっと残酷だとも思うんだよね。いや、経験無いけど。でも物語としては凄く納得のいく流れにはなっているんだよ。小学生のお話でなくとも、中高生でも職場でも、普段ハブられている女が誰とも分け隔てなく付き合う…というよりは自分との時間をとってくれる男であって、自分の危機のときには己がどれだけ傷つこうとも助けてくれる(というか男に尽くせば見返りがある)わけで、そりゃキュンってこないわけがないよな。しかもだよ、雄二が中学の時は悪鬼羅刹と恐れられていたということだから、多分雄二は勉強だけができても腕力で勝てなくては弱いのだときっと自覚して、むしろ自分を磨くために喧嘩っぱやくなったと思うんだよ。そこに翔子を守れなかったことを悔いてって側面があるかどうかは別としても、翔子の目には「自分を守ってくれるために努力して強くなろうとしてくれている」と映るわけで、そりゃ翔子はより雄二に惹き付けられざるを得んわな。ほんでもって、いくら雄二の口から翔子の気持ちは勘違いだと言われても、遊園地で食べて欲しかったことに気付いて翔子の弁当を食べてもくれ、喧嘩のあとのボロボロな姿を見せられちゃぁ、翔子は間違ってないと思わざるを得んわけよ。口では嫌々と言っていても、最低でも守るべき存在と思ってくれているんだから、そりゃ他の女を潰しとけってなるのは女の行動として正しいわけだ。で、翔子には生活に困らないほどの後ろ盾があるわけだろ。迷う必要があるもんか。
 っつーわけで、こゝまで書かんでもわかるだろ、フツーってところだが、見たかったエピのせいだろうか、ついつい熱くなってしまった。が、幼い頃の雄二じゃないが、マンガやアニメの中だけだってのには、現実を振り返っても、こういうストーリーがまさに本作のようなアニメでしか提示できていないことを考えても、深く頷かざるを得んわな。