伝説の勇者の伝説 第19話

 エンドロールを見る限り、内地作画に半島動画なんだけど。
 動きを見せる部分では明らかに崩しが見られていたよな。が、意図的にそうしたのか、単に下手糞なだけなのか迷う。怪しさを表現するための意図的なものと自分は解釈してるんだけど。
 いや〜、構造は単純なんだけど、ドラマとして迫真だったわな。ライナーが過去に多分両親を自分の能力の暴走で殺してしまっているんだろうという描写、自分が化け物として忌み嫌われてきた経緯が胸に迫ってくる。大体にして今までのライナーの暴走描写は仰々しくてわざとらしさを感じていたんだけど、いやはや、その効果はあったなと今さらながらに思い知らされる。
 フェリスの様子ももうこっちはウルウルで、今までのツンツンぶりがいとおしく思えて来る。アレだよ、やはりフェリスは自身の過去から、自分が愛される資格がないと思い込んでおり、頑なに他者を拒絶するという態度だったわけだ。それが、同じく自分が嫌われる存在として自覚しているライナーと共鳴し、なんとか彼を救いたいという熱情が溢れていて、こっちがどぎまぎする。フェリスの場合、ライナーに戦友的感情を持ち合わせていても、あまり恋愛感情のほうは感じられなくて、仮にフェリスがライナーを取り戻したところでどうなんの?といった心配はあるんだけど、そこはそれお約束の「見かけだけはいつも通りの腐れ縁的描写が続く」わけで、いやはやなんともなぁといったところだ。こゝらへん、高垣彩陽のいやに冷静な演技が職人的であとから感激してしまう。ツンツンの時と、今回の激情の時の対比というかバランスが誠にすばらしい。これ、下手すると今回感情を込めすぎちゃうよな。フェリスが自分を壊さない程度にかつ彼女の胸の奥を明かさない程度にライナーに語りかけるというところがなんとも。決して(大多数の)視聴者に涙を流させてはならない場面なんだろう。
 シオンの描写もなかなか。忌み破り部隊も、今回の描写だと対外的には国のため、その実ライナーを殺さないためのミルクという人材抜擢ってのが窺えるものだった。本当ならシオンは王として戸惑う表情を見せてはならず、今回のように迷ったり苦悶したりする表情なんて現実には見せないもんだけど、さすがにそれやっちゃうとドラマにならないからな。内面をあらわさず、たゞひたすら冷徹な指示を下すシオンを見た視聴者は絶対憶測を巡らせたりはしないわけで、これもなかなかいゝバランス。もうのっけから「今回はシリアスモードですよ」ってのがわかって、こちらも十分に浸ることが出来ました。
 しかし、女の子向けと何度も書いているものゝ、男としてもうまいヒロイン配置になっている。まず、ミルク視点ではライナーは自分を助けてくれた命の恩人で、献身的に尽くす対象として描かれている。キファ視点では女の罪をすべて引っ被って(許して)くれる包容力のある男として描かれている。フェリス視点では不器用なもの同士だが、心の奥底では通じ合っている存在として描かれている。シオンが大抵の女には手の届かない存在であり、ライナーはそうではない。女の視聴者が三人の女の誰かに自分を仮託して悲恋を妄想するのに随分適しているわな。反面ライナー視点では、ミルクは自分が何をしてもついてきてくれる包容力のある女性として描かれており、またキファは陰で慕ってくれる健気な女性として描かれている。そしてフェリスは普段は気の置けない仲で、危機の時には誰よりも必死になって支えてくれる女性として描かれている。三人に好かれている状態は確かにハーレムではあるのだが、かといってこの物語的に全員を選ぶことが不可能になっており、その分魅力的な女性を選択せざるを得ないという壁はあるものゝ、いや〜、誰を選んでいゝのか迷っちゃうよな〜という楽しみ方ができる。シオンにはなれないけど、どこか劣っているライナーだったら、男としても自分と重ね合わせることが比較的容易だ。例えば、おとめ妖怪ざくろのように男も女も複数用意するってのが、男女混合向けとして考え得る方策なんだが、これ、女は複数だけど、男は単数になっており、ある意味古典的ではあるが、なかなかよくできてる。男の子向けエロゲの構造なんだが、女も楽しめるわけだよ。
 個人的にはミルク@藤田咲のヘタレ声が聞きたくてたまらないんだけど、さすがに今回は場面柄不適切ということで。しばらくは出番ないのかな。