いやぁかなり泣かされましたよ。
冷静に振り返ってみれば三文芝居なんだろうけど、物語の構成要素を奇を衒わないで素直に組み合わせていることには好感が持てる。もちろんキレイ事に関しても直球勝負だし、過去の行動との重ね合わせ、繋がりあう気持ちなど、詰め込みすぎと思えるほどの贅沢さ。スタッフにしてみれば、頭を空っぽにして視聴して思いっきり泣けってことなんでしょう。
今回のキモはウィンリィの引き金ってとこですかね。流れからすると彼女がスカーを撃てるはずがないってことはわかりきっているんだけど、じゃぁだったらどう味付けするかって部分が秀逸のように感じた。そもそも銃口を向けないってことは、両親が殺されたことを自分が了承したことになるわけで、そうしないわけにはいかないってのが理屈付けとして挙げられる。スカー自身はウィンリィを煽るのだが、エルリック兄弟は言葉で制止する。まぁ通常なら撃つなんて事をしない人間だとわかっているわけなんだが、なにしろ感情的に不安定な思春期の女の子である。自分でも何をしでかすかわからないことなんてあの時期だと往々にしてあることなので、この制止はなるほど必要なんだなと後から思った。
重要なのはウィンリィ自身に引き金を引かないという決断をさせることであって、初めっからウィンリィとスカーの間に割って入ったり、無理やり拳銃を払い落とさないって構成もなかなかである。だからこそスカーが放った攻撃がウィンリィに届く刹那にエドが体を割ったってのも、人間身の危険を感じたら反射的に身を守る行動に出るもの…すなわち銃を撃つ…ていう瞬間を劇的に演出し、それなりの意味を与えているわけだ。ウィンリィは体の制御が利かなくなってしまっており、指を一本ずつはずすエドの姿から、彼の思い遣りってのが感じられる構成になっている。
で、タッカーによる娘を利用した実験動物が元に戻れないことをエルリック兄弟自身が悟っていたという再確認から、どうやら自分自身もきっと元に戻れないんだろうということを悟ったらしい弟クンや、だからこそウィンリィを兄に譲ったんだろうなというのもなかなか切なくてよかった。
まぁ饒舌なのは上記感想をうだうだ挙げているような自分が言うのもなんだが、もうちょっと台詞は少ないほうがいいような感じがするんだがなぁ。ま、ターゲット層は明らかに中高生なんだから、数拾い上げるにはこのくらいのバランスがいいんだろうとも確かに思うんだけども。