アタックNo.1 第35話 世界へはばたけ

 前半は総集編みたいな扱い。
 原作者も脚本家もこの時点で海外渡航の経験があるとも思われないので、彼らの描くアメリカ人やロシア人像が正しいかどうかも定かではないわけで、なんとも難しいところである。しかし、アメリカ人の陽気さとか、ホスト国として日本チームをパーティーに招待とか、なんからしいんだよな。まぁ渡米する日本人自体少なくとも、アメリカンドラマは当時から輸入はされていたわけで、それが虚構であったとしても、それなりの姿ってのはなんか頷けるものはある。
 対して、日本人側の描写もなんとも当時はあんなんだったんだろうなと思わせるような内容。“勝つ”ことばかりに目が向いていて、周囲が全然見えていないというか。深刻そうな感じであって、他をよせつけない近視眼的な性格なんだよな。全部自分のことしか考えていないというか。やっぱソ連にしたってアメリカにしたって、バレーで勝つことは重要視しているんだけど、シェレーニナがこずえの成長を楽しみにして、勝ち負けというよりはより高みを目指した試合を楽しみにしているし、アメリカは気楽さとまでは言わないものの、やっぱ試合を楽しもう的な雰囲気を感じる。
 それでも当時はこの作品のあり方が支持を受けていたってわけだし、なんとも当時から格の違いというか、日本人の狭量さってのが感じられて仕様がない。シゴキとも思われる苦しみに耐えて得た勝利などの結果って本当に正しかったのか?と言われれば、なんとも複雑な気持ちにならざるを得ない。それって結局他人から見たら「あいつら周囲への配慮もせず、勝手に努力して苦しんで、勝ったところで内輪だけで楽しんでいる自分勝手な奴ら」という風に映っていたんだろうという気がしないでもない。そんでもって、自分たちは国際的に周囲の空気をよまずに勝手に盛り上がっているくせに、その内輪では権力者が気分よく過ごせる空気を他人が読まないからといって、盛大に身内をいじめていたりするもんな。
 で、それはWWⅡで負けて自信を喪失し、で経済的に勝ってやろうと貿易で経済戦争を仕掛けて世界中の富をかき集めて好き放題した姿にもつながるんだろう。まぁユダヤ資本が今日本を食い物にしているわけなんだけど、ある意味しょうがないという気がしないでもないのだ。高度経済成長は自国での生産力であって国際的には関係なく、国際的な影響力を発揮するのは、オイルショックからバブル崩壊までがエコノミックアニマルとまで呼ばれた日本が貿易黒字を叩き出すころからだ。バブル時期には儲けた金で海外の名画・土地を買いまくり、ある日本の金持ちは世界的資産であるある名画を自分の死の折には、火葬で一緒に燃やしてくれとまでいって顰蹙を買っていた。農協を初め、海外売春ツアーに盛大に出かけたのも'80年代じゃなかったっけ?。とにかく勝負に勝って他国の文化を陵辱してきたのが日本であって、バブル崩壊後、しめたとばかり海外から仕返しをされている最中ってのはなにやらわかるような気もするのだ。
 で、海外がいい機会とばかりに日本いじめをしてきたときに、一緒になって日本国民を搾取していじめまくってきたのが中曾根以降の自民党だったりする。ちなみに中曾根→竹下までの自民党がバブルで見苦しくすき放題振舞った&派遣法の改正など日本人から搾取をする基礎作りをした段階で、橋本→清和会の段階が本格的な搾取の段階。ま、海外から見てれば海外資本と結託して国民から泥棒をしている政権を、本来長年の経験から見通すことの出来る老人が進んで選んでいるわけだから、バカ丸出しの国と見られていてもしょうがない。
 で、その基盤をつくった一因が本作の努力至上主義なんだろうなというのは気付いてみれば結構納得も出来るのである。うまく暮らしていくのに必要なのは周囲も見渡した上での協調主義でもなく、指導者の利害調節でもなく、本人の努力にすべてを帰する。結果が出ないのは当人の努力不足のせい。いくらがんばっても経営者にも管理職にも原因がわからなくて現場に行き詰まりが起こったら、今度は末端のプラス思考で乗り越えろというわけだ。で、人後を絶する努力の末に獲得された富は、中抜きや上前をハねられて、労働者に残るのは生きていくことが困難なほどの報酬。誰も使わない便利な機能が満載で、とっくに必要な性能は飽和してしまっているのに、それでも改良につぐ改良で新製品を作っては売れないと悩む。もうアホかというわけですよ。
 まぁそんな中、割と個人的要因につなげやすいものゝ、比較的中立で間違ったことを言わないのが猪野熊なんかねぇというのが痛烈な皮肉なんだよな。厳しくてとっつきにくくて、ほとんど誰にも気付かないような立ち位置ってのがまた意地悪で。こずえはパーティー参加を猪野熊が許してくれたと勝手に判断しているが、実際には判断をこずえにまかせただけであって。わかりやすさとは程遠いんだけど、教育者としては結構いい線行っていると思うんだがな。今ではモンペから袋叩きに遭うと思うんだけど。本郷と共に。いや、もう既にマスコミを通じて袋叩きにあっているという描写ではあるんだが。