っつーわけで、風呂に入って考えたり、いろいろ見てきた。

 よくよく考えたら、これだけ他のサイトさんがネタばれしてたら、わざわざ気にする必要もないんかな?と思った。くだらぬ意地なのかな?。まぁそれはいいとして…。
 風呂に入る前は、2007-12-19さんところで触れられている2点、すなわち、彼女の決意にはちょんまげ君を苦しめているという苦悩がきちんと(描写はないが)表現されていることと、記憶に残る残らないを対照的に描いていることについては私も気にしていました。ちょっと違うのは、たしか千尋は自分が他人の記憶から消えることが怖いとか昔言っていた気がするんですが、それがちょうど逆の選択になっているというのが彼女の強い決断を示しているなぁと思ってました。
 で、風呂から上がって、どうも違和感を感じると思い直したわけでして…。なにしろ、千尋はちょんまげ君との記憶をリセットしたときに、すべての想い出を失ったわけです。自分の変化に驚いている姿はきっちり描写されていましたから、そこでのブラフはないと思いますが…。
 で、改めて考えてみたのだが、火村から詳細を聞かされて混乱し、なんとか自分をパニック状態から取り戻した時に目にしたちょんまげ君とのダイアリーや、自分の書いた小説を見て、どう思ったか?がポイント。ちょんまげ君と過ごしたあの日々をいとおしく思う感情は千尋からはすっぽり抜け落ちているわけで、冷静に考えて見ると、知らない男の子と今となっては他人となってしまった自分がまるで他人事のように戯れる様子や、それをかけがえのないものとして必死に繋ぎとめようと努力する痛々しい自分の姿を見つけてしまうのです。もちろん自分の小説も「なに、この必死な妄想は」ぐらいに思っていたとしても不思議はありません。
 しかし、今回の流れからすると、そういう昔の記録から逃げないで、自分と向き合うということをしたはずで、そうまでして必死だった自分や、普通なら相手にされない自分に向き合ってくれるちょんまげ君の好意には心を打たれたに違いありません。しかし悲しいことにそれはあくまで他人事としてであり、彼女が感動をしたとしてもそれは記録の中に再現される雰囲気に酔ったというレヴェルに過ぎないのではなかろうか?と思うのです。記録が実感を伴わないものであるからこそ、彼女は自分のことを客観視できるのであり、ちょんまげ君の誠意に対してむしろ自分を“モノ”として与えてしまうというのには納得がいく。昔わけもわからずキスを許した彼女のことだから、それでもあの時は恋人であることに臆病だった彼女が、今回ばかりはいともあっさりと身体まで許してしまうってのは、やはりリセット前と後とで彼女の人格が変わってしまっているということではなかろうかと思うのですよ。絶望を見る前と見た後での変化があるという気がする。
 まぁ記憶を大切にするあまり火村にまで食ってかかった千尋が、いざ過去の他人の記録として読んだ時に、自分の存在が他人を苦しめるものだと悟るというのもこれまた自然な話だ。他人の記憶に自分が残らないと願うこと自体が、他人も自分も苦しめるということにまで思いがいたっていたのだとしたら、まさに神が捨てるという結論を下すのもわかる。たぶん千尋は小説も大幅に書き直したのだろう。
 ヘンな話、映画で涙したのもミスリードなのかな?とも思ったし、クレーンゲームのぬいぐるみに執着したのも、「捨てられる自分」を投影したものなのかな?とも思ったりしたんだけど、これまたミスリードなのかもしれないと思ってみたり。自分も錯覚していたんだけど、もしかすると大多数の視聴者が、「千尋はいまでもちょんまげ君のことをかけがえのない存在と思っている」という勘違いをしているのかも知れず…という可能性を考えてしまう。単に千尋は淡々と他人事としてリセット後の関係整理をしているだけなのかも知れないわけだ。というか、記憶障害という設定を素直に信じるとそうなる。
 さて、どうもそういう仮定の元で“千尋とちょんまげ君は幸せになって欲しい”と思っている視聴者は多そうだ。自分は物語的にはこのまゝ悲劇で終わってくれたほうが美しいと思う。が、少女漫画家パートがそれぞれのキャラが好き勝手やって一応のハッピーエンドなわけで、ヒロインの比較でいえば、わがままみやみやが幸せになって、控えめで他人を思い遣る千尋が不幸になるってことは、現実に起こることとして決して許されないよなというひねくれ具合です。
 でもこの物語でいうと、千尋が記憶障害を抱えたまゝ二人は幸せに暮らしました…ちゃんちゃんはあり得ない。やはり記憶障害が克服されないと二人の物語はいつまでも同じ所をぐるぐるまわって閉じてしまう。だから、まぁ多分ちょんまげ君の今までの必死の働きかけで千尋の記憶障害は治りかけている*1とか、もう一押しで千尋の記憶障害が直って今までの記憶が鮮やかによみがえってハッピーエンドとかじゃないか?というアタリをつけている。まぁ数ある可能性の一つでしかないんだけど。記憶のシステムのうち、想起の部分だけがダメになっていて、そこの留め金が外れてカタルシスってことかな。あーあと、火村の渡した鍵の謎がまだ自分の中では詰めきれてない。
 まぁどう考えても、よく練られたシナリオであることには変わりがありません。

来週最終回らしいが… 次回のサブタイがloveなので、実はdではじまるサブタイの第13話があるのではないか?とのこと。OP曲のタイトルeuphoric fieldから推測されるらしい。

*1:もう既にその兆候は現れているということかもしれないし