福岡国際らん展 in ヤフードーム 2006から帰還

corydalis2006-11-23

 つ、疲れた。移動中の交通機関ですべて睡眠をまかなうという強行軍。9:30開場で11:30には退場していたので、たった2時間のために片道10時間ぐらい費やすという、冷静に考えれば馬鹿げた行動でした。明日仕事なのがアレだが、あとあとのことを考えると今日行っておいてよかったとは思った。
 花の展覧会なんて初めて行ったので、入場してからすぐはまわり方が良くわからなくて困った。蘭自体つい3ヶ月ほど前に興味が湧いたものなので、蘭愛好家の観賞のポイントがそもそもどこにあるのかがわかっていないために、入り口付近のディスプレイが豪華なのはわかったが、どこがどうすばらしいのか良く理解できなかった。私自身は単純に博覧会を見学する気分で、ただひたすら珍しい蘭をみせてくれるものとばかり思っていた。
 展示自体は蘭以外の物産展みたいなものもあったので、それを除くと大まかに分けて1.蘭を利用したスペースごとのディスプレイ、2.株ごとの展示、3.園芸店の販売コーナーと思っていいんじゃなかろうか。全体を俯瞰してまず2.の株ごとの展示を鑑賞してみる。基本的には出品者がいて、その作品が展示されているだけなんだが、属ごとに分類されているので蘭愛好家の興味が全体的にどこらへんにあるのかがわかってよい。自分はサイトの画像とか本でしか見ることがなかったので、実物を見るのはそれなりに面白かった。だいたい本やネットでは花のクローズアップが多いので、株元を観察できたり用土の様子がわかるのは何気に役に立つんではなかろうか。生け花やフラワーアレンジメントもあって、切花は園芸家として邪道だと思いながらも、優れた作品を見ると、生け花で重要なのは立体的なバランス感覚なんだということがわかってそれはそれで新しい発見だった。とにかく蘭の花は豪華なので地味な素材と組み合わせると迫力があってよい。個人的には植物と鉢以外の素材も使うフラワーアレンジメントよりは生け花のほうがいっぱいいっぱい感がなく落ち着いて好みだと感じた。
 実は3.の園芸店の即売コーナーもかなり楽しみにしていた。実物を見て気に入ったらその場で手に入れることができるというところも魅力的だ。いくら気に入っても手に入らないというのはもどかしい。特に今回のように展覧会として株数は多くとも種類が少なかったりすると消費者のものめずらしさを刺激するような商品選抜をしてくる園芸店の店先のほうがかえって面白かったりする。九州・四国の園芸店が多かったが、東京あたりからも出店していた。海外では台湾が数店、あとブラジルやエクアドルからの出店もあったがどうなんだろう?。ブラジルからのブースでは花が枯れたのも展示せざるを得ない状況でちょっとかわいそうな気はした。で結局何も買わず。寒蘭に最近興味が湧いていたのだが、実物を見てしまうとどうにも地味でいけねぇ。寒蘭は温度管理が楽なので一株ぐらいは買って帰ろうと意気込んでいたのだが萎えてしまった。まぁ元からないとは思っていたが、ジュエルオーキッドの珍品でもあったらと思ってはいたがやはり無い。自分の捜索能力が無かっただけかもしれませんが。
 1.のディスプレイはまぁそこそこ。とにかくお題を消化するために必要な蘭や目をひくような鮮やかな蘭を使うために、私の目的である珍しい蘭が使われているわけではないので結局最後まで鑑賞のポイントがつかめなかった。公共の植物園が蘭の原種の展示をやっていたのが珍しかったぐらいか。いくらキレイだからといっても色ガラスなどの人工物が目立つような展示はあんまり興味が無い。蘭の用土に使う水苔を岩に見立てたディスプレイがあって、蘭自体は黄色のオンシジュームと白のファレノプシスのたった2種類だけなのに意図がわかりやすいものがあって、出品者を見ると実は高校だった。たしかに地味なんだが金をかけずにそれなりのものを作るというのはちょっと感心した。
 展示を見て回っている最中ふとスクリーンにきれいなネーちゃんが映っており、歌を歌っていたのでステージでちょっと拝聴した。シンガーソングライター 今成佳奈 オフィシャルホームページという大分在住のシンガーソングライターで、パンフによると4オクターブの美声なんて書いてある。残念なことに音響が今一だったせいか、あまり伸びる声が聞けなかった。どうも本人も調子が出ない風でやりにくそうだった。よくよくスクリーンと本人を見比べてみるとスクリーンの動作が遅れていた。展示場ではどこで聞いても画面と音が一致していたのでなんでかと思っていると、ドームの天井のスピーカーに合わせて画像にディレイをかけているらしい。納得。まぁ芸能人が東京一極集中でなく、地方で活躍して観客を循環させるシステムが出来たらいいなと絵空事を考えさせられた。最近私も共同体の復活云々を考えていたりするのだが、田舎の「おらが村システム」にもやはり重大な欠点はあるので、各地方都市へのバランスの良い人口の分散とか地域経済圏構想なんて夢想したりする。今成佳奈の曲を聴いて、どうも似たような曲調ばかりなので一〜二曲聞いたら飽きてしまうのだが、地方に居続けたら刺激も無いだろうし、かといって節操の無い行動で固定客を逃がしてもしょうがないし、かといって自分の成長のために東京に行くというのもアレだし、地元でがんばっても成長はせんだろうしで悲哀を感じざるを得ない。後でも述べるが、そもそも植物展目当ての客層なので年配の方が多く、男性よりも女性が熱心に聞いていてちょっと意外な感じはした。まぁ性別関係なく、観客は彼女を自分の娘とでも思って見ているんだろう。年を取ると躍動的な音楽はやっぱり疲れるわけで、そこらへんうまくニッチをつかめればいいだろうなと思ってやまない。声質のよさもあるだろうが、やっぱ見目麗しさが決定要因なんだろうなと、これまた救えないことも感じながら席を立った。
 展覧会といっても、園芸店と物産展とをあわせた占有面積のほうが多かったように感じた。栽培教室をはじめちょっとだけ拝見したが、そのなかで発言されていたように秋に咲く蘭に合わせた展示会は珍しいとのことで、それで展示数が少なくならざるを得ないのかもしれない。客層は年齢層が高く、女性は多いのだが、かといって男性が少ないわけでもない。優秀作品のお立ち台みたいなところの前で園芸談義を戦わせていたのは男性だったし、年齢層で言えば入場の順番待ちで私のスグ前にいたのは学生と思しき男性だった。平均年齢は高くとも、結構いろんな年齢層が観覧に来ていた。展示物に触れる仕込みの悪い餓鬼もいたが、自分は一例しか見なかった。総じて観客の行儀は良いように感じた。自分は開場時刻にあわせて入場したが、1時間もすれば結構混んでいたので、早めに行って一株をじっくり鑑賞できたのは正解だったと感じた。いやぁ、曇りの予報だったのに結局九州を出るまで雨がやまず大変だったですよ。