甘々と稲妻 第12話

 叱らない教育ねぇ。
 ついに最終回。ということで満を持して小鳥母登場。なんつーか、もう小鳥母無しで話が進むのがあたりまえになってしまっていて、個人的には「え、母親登場すんの?、まぁ最終回だからなぁ」「あ、やっぱり仕事で不参加なんだ」ともう母親抜きでやるほうこそこの作品のあり方だよなぁぐらいに思っていた。だから登場のときはもう感動も期待に対する満足もどっちもなくて、あ、来るのねというもう母親は物語上のお客様状態ぐらいに捉えてた。今までの話で、もっと母親の登場に対する期待度を高めてたら、カタルシスも得られるんだろうけど、そういう作品でもなかろうからなぁ。
 ほんでもって叱らない教育云々について、この作品に初めてストレスを感じてしまった。この作品の長所は、例えばうどんの国の〜を筆頭に、子育て要素をまぜてくる作品全般に対する子供への無条件の礼賛がないことで、それが最終回でなんでそれを持ってくるかなぁというのが正直なところ。いや、本作もうどんの国〜もどちらもテーマが子育てメインなので、むしろそれを取り扱うのは正しくて、むしろそうでない作品に唐突に出産風景を入れて誕生のシーンでこう無条件にそれを礼賛するとめちゃくちゃ白けるのだ。が、特にこの作品ではそういうイデオローグ的な原理主義というよりは、つむぎ(もしくはポコ)は、視聴者を惹きつける客寄せパンダ的な役割で、だからこそあざとい描写を臆面もなく出してきているわけで、マスコットで通してきたのに今更人間面してくるのかという気色悪さが感じられた。これは現実社会でも通じることで、親が子供の社会化について努力を怠らない態度を常にとり続けているからこそ、子供の失敗について“周囲が”「子供のやることだから」と親の努力に対して敬意を示し寛容になるのであって、そうでなく“親が”はじめから「子供のやることだから」と周囲に寛容を強要すると、それはおかしいと批判される。大人だろうと子供だろうと共有空間では誰もが「大人であること」を期待されもし、それぞれが努力すべきであるわけなんだが、だからこそ子供だから無条件に礼賛されるべきという描写は自分には受け付けないといったところ。叱らない教育もその延長線にあって、しかし無条件の礼賛よりは複雑ではある。教育方針なんてそれぞれの家庭に任されるべきであって、押し付けはどうなんだ?というのもあるし、子供が現に他人に迷惑をかけているのに叱らない教育だといって子供の好き放題やらせる親もいるしで、公共に対する共有感覚が保たれているかどうかもわかんないのにこんなに大きな扱いをして良いのか?という気はする。言わせてもらえば、叱らない教育で成果を挙げるのには高スキルが必要で、叱る教育はかけるコストが低いから誰にでもやれるわけで、今回作品中で言及されているような、余裕のない家庭では叱らない教育は弊害のほうが大きい。あと、別に親の行動が他人から見て何も間違っていなくても、うまくいくとは限らないというのが子育てゞもあるので、そのへんこういう主張を見て内心穏やかでない子育て世帯もあるんじゃねぇの?という気はする。とまぁ危惧は述べては来たが、別にこういう描写が間違っているわけでもないし、なにか越えてはいけない線を越えているわけでもないから、これはこれでアリではあるのが。が、なんというか、そういう押し付けがましさが少ないからストレス無く視聴できるのが本作のメリットだと感じていたのでちょっと個人的には惜しかったかなというだけの話ではある。
 評価はちょっとむずかしいところで、個人的には上記タラタラと述べたように、ストレスがないというのが好評価。しかし、ストレスがないというのはある意味リアリティが無いが故のものなので、それをもって本作が良いものだといってよいかどうか。うどんの国〜のほうが就職事情だとか地方の現状という意味では本作より問題意識は高いし、それなりに考えられてる。が、仮に続きが用意されているとしたらどちらを視聴してみたいか?と言われたら本作のほうを挙げる。料理のチョイスも毛色を変えながら、まぁそんなに突飛なものを出しているというわけでもなく、むしろ入手性や調理の手間の少なさなど忙しい家庭のためにバランスをよく考えているなという感じ。本当に子供がいる家庭が子供と一緒に調理をするんならこういう料理が良いのでは?というのがそれなりに考えられている。例えば、家庭でお菓子をつくるのは大変で、ケーキを焼くにしても調理時間が長かったり、用意する食材が特殊だったりする。今期だとクレープを取り上げていたが、生地は楽に用意できるし具は生クリームとその他季節の果物であっても構わないのだからヴァリエーションも工夫できる。調理が簡単だから子供と一緒に楽しめるし、できたものはいかにも子供がよろこびそうなものであって、なかなかにしてバカにはできない。実用性を考えるとこれはそれなりのものだとは思った。クッキングパパの少女マンガ版と考えたらこれはこれでよいものでは。