勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。 第9話

 なんじゃ?、この作品は!。
 労働を媒介とした社会参加*1だとか、ソ連の崩壊で食い扶持を失った連中が冷戦を切望するという構造とか、さらっと重要なことを提示するとか全然予想してなかったよ。かといってメインはコメディだしな。フィノが天然系お色気キャラなのがなんとも罪作りというか。
 レオンを潰すというほのめかしが前回にあったんだけど、今回のフィノ襲撃はそれに関係してるんだろうか?。ちらっと前回登場の長髪キャラが見えてたけど、途中服屋の店員に連れ込まれたってのがちょっとした驚かしだったからな。
 いやはや、フィノが到達した労働観にビックリしたが、じゃぁ現代の先進国が陥っている過剰生産だの金融資本主義の強欲ぶりだのにちょっと思いを馳せずにはいられないなぁ。戦争が経済問題の解消に使われてたりするし、なんとか労働というか、経済をバランスさせて、世の中をうまく運営できないもんだろうか?。資本主義というものが人間の欲望をドライヴさせて成り立っているってのがそもそも問題ではあるんだけど、じゃぁその欲が無かったら解決か?というほど単純な問題でもないし。かといって現代のように野放図にしてしまって強者がやりたい放題ってのもなんかおかしいというか、いやはやおかしいというのはズれているんだけど、破綻はするワナ…というか、フィノほどの到達点に立たなくても、なんかうまくいく方法はあるだろうにと思ってしまうんだよね。今の政治の流れを見ると、経済破綻の結果戦争に突入した先の大戦を反省するどころか日本は時代に逆行して先祖がえりしてしまっているもんな。自分はこの作品を今視聴しているが、原作は前に書かれたものであって、そのような兆候が見えていたとはいえ、今この瞬間の日本の経済政策の失敗とウクライナ動乱におけるロシアと欧米の対立激化だの、もうタイムリーとしか思えないタイミングなんだよね。
 まぁヘンな話だよな。フィノが奪うのではなく労働の連環で社会を構成すべきといったところは、大戦の反省から経済復興の流れなんだけど、この作品自体はそもそも若者に対する労働勧奨だしな。で、描かれているレオンは理想的な環境で、もちろんそういう職場もそれなりにあるんだろうけど、今日本で問題になっているのは企業のブラック化と政権による意図的な格差拡大政策*2で、単純にそれらをつなげると、結局若者は特権階級の燃料として働けという結論に流れそうになるんだけど、そうなる前に「そもそも理想の労働とは」という問いかけをしているから救われるというか。いやはやぼんやりしていると見過ごしそうにはなるが、結構深いテーマが秘められているという。

*1:マルクス

*2:バブル以降の政府の経済失政のつけを弱者である庶民から強者である政官財への付け替えで対応するという流れ。