ラストエグザイル-銀翼のファム- 第9.5話

 総集編その1。
 うーん、実は総集編なんてぶっ飛ばして次の話を視聴してみたいところなんだけど、じっと我慢の子でいようかと。新カットもありはしたが、基本今までのシーンの切り貼り。でもまぁ物語のミッションはゝっきりしたな。空賊であるファムが今日も今日とて鯨取りをしていたところが、悲劇の姫を拾って国際間競争に巻き込まれ、運悪くとある国に拉致され、もと居た空賊も壊滅的打撃を受けて帰る場所を失うも同然になる。で、めざすのは姫と共にグランレースの開催にこぎつけることらしい。まぁアデス連邦を倒すというのもあまりにリアリティがないし、トゥラン再興がどの程度までのものでよしとするのかにもよるんだけど、ミッションの行く末としてはそれほど無茶というほどでもない。たゞ、ファム以外のイニシアティブホルダーがまともに相手にしないんじゃないかというところは引っ掛かる。なにせ国家間の殺し合いをやってるからな。
 なんか前から気になっていたんだが、ファム・ミリア・ジゼルの関係が張飛劉備関羽に似ていてワロタ。髪型なんてモロそうだろ。ミリアが大国の間をウロウロしている状況というのもよく似てるしな。でもまぁあんまり意味はない。言ってみたかったゞけ。
 前のファムが非正規雇用のメタファーという視点でいえば、今回やたら鯨取りを連呼させていたので、やはり手に職をつけた一匹狼が、自分の存在感を示しつゝ、決して媚びることなく己を貫き通す姿なんてのが描かれているのかなと思わなくもなかった。このへんは前作のクラウスだっけ?、が不殺を信念として持つというところの昇華部分にあたるのかな。能天気な元気少女が敵を殺してしまってあたふたするというのはちょっとそぐわない。いやいや、自分的にはそれもオッケーなんだがこゝでジゼルだけでなくファムまでオロオロしてしまったらグダグダになってしまう。彼女は人殺しに関与させず、でも戦況を好転させる使い道は???と考えて、敵の戦艦の捕獲とは、これはこれでリアリティがないが、面白い試みとは思う。古代中世から世界中に戦場で死人の武器や防具、装飾品を漁って生業とするのがいたらしいが、そういう連中より下世話でもないな。
 さて、総集編であることをいゝことに好き放題書いてしまっているが、アデス連邦だ。どうもサーラの母親であるファラフナーズは偉大なアウグスタだったらしく、それが10年前のグラン・レースで暗殺されたらしい。OP動画で血に染まった手を見て動転する子供がいるが、あれはアウグスタ護衛官時代のルスキニアらしく、ファラフナーズを守れなかったのを後悔して今に至っているらしい。どうもファラフナーズは国家間の協調を旨としていたように思えるのだが、そういう彼女を暗殺した連中を許せなくて復讐に走っているのがルスキニアの基本行動のような気がする。ヴァサントが辺境国家の出身らしくてなにやら複雑な過去を抱えていそうな気はするな。が、サーラにはヴァサントが幼い頃はファラフナーズに仕えていたとかいゝながら、ケイオスのアメジストとしてアデス連邦を悩ませていたなんて発言もあったりして、何が本当かわかんない。
 そういやサーラもよくわかんないな。彼女は幼いせいかあまり裏がないようにも思えるのだが、どこまで国家運営をわかっているのか真意を掴みかねるところがある。粛清の勅命詔書にはΣαραと署名があって、次の話では私腹を肥やした貴族を殺して泣いちゃうわけだろ。ルスキニアもサーラを操りつゝも、サーラをたゞの道具としてゞはなく彼女の理想にもある程度敬服しているようにも見えるし、サーラはサーラで、強引なルスキニアのやりかたを支えているような節が見受けられる。本作の面白いところは大人の描き方がちょっと独特で、現代の政治屋経営層に対する批判もあってか、理想の指導者像を描きながらも、地に足が着いていないという軽さがあまり見受けられない。かといって大人の思惑が精緻を尽くしているという風でもないんだよな。前線指揮官が多いためにどうしても力強い大人が描かれてしまい、老獪さをもった大人が少ない感じがする。まぁもともとアニメはそういうのが少なくなる傾向はあるんだが、度胸と機転ばかりじゃ危なっかしい感じがしないでもない。
 しかしなんだな、空賊やシルヴィウスのヴァンシップ隊の塗装だとか、ヴェスパという呼称といゝ、やっぱイタリア風なんてのを狙ってるだろ。機械あたりには。