Hidden Value AES(Applied Energy Service)

 電力会社。発電所を買収したり建設したりして運用を改善し、売電で収益をあげる。この本でも述べられていたが、基本グローバル企業だ。収益の大半が海外の新興国からもたらされている。民営化に伴って買収ってパターンが多いらしいから、なんか胡散臭い感じはするなぁ。
 仕事の内容が紹介されてはいるのだが、全社員がどういう仕事をしているのかの概観が述べられていないので判断に迷う。が、基本一つの発電所を運営するのにチーム制を重視し、そのチームで一切の判断を行うっぽい。買収の資金調達についても、管理室のオペレーター2人が取り仕切ったり、買収先の検討でも、経験のほとんどない社員の提案を採用したりという具体例はあるのだが、それがどれほど日常的なのかが今一判断できない。が、とりあえず、仕事は経験の有り無しを問わず、むしろ経験を積ませるということで現場に任せるのが信条ということだ。
 そういうわけだから、社員は絶えず新しいことにチャレンジさせられていると思うのだが、あまり研修はないというか、いや、やりようがないだろうとは思うんだが、現場でヴェテランからいろいろ教えてもらうというやりかたらしい。で、新しいチャレンジで失敗しても、結果だけでクビということはないというのが、今まで述べてきた企業に共通すること。でも、買収工作段階での失敗ならまだしも、買収済みの発電所の運営なら、失敗しそうなら周囲がよってたかってアドヴァイスしてくれるんだろうとは思う。
 採用にあたっては、あまりスキルについては聞かれないそうだ。むしろ志望動機だの、人物アピールだの、日本の企業の面接でも問われそうな抽象的なものと変わりがないと感じた。時間をかけるのは今まで述べた企業と同じかな。ただ、抽象的な質問が主とはいえ、具体例に挙がっている成功例の対象者を見ると結構高学歴っぽいから、質問されないとはいえ審査はされているのだろう。経営者はMBA取得者・ハーバードビジネススクール卒業者で、政府にも勤めたことのある人だ。やはり技術を持っているかどうかは見極めていると見たほうが良い。
 給料の額は同業他社よりは安いらしい。時間給社員と給与社員の割合は、むかしはパートタイムのほうが多かったらしいが、本の出版時には給与社員がほぼ半分になっているとのことだ。まぁ日本のアルバイトと向こうのパートタイムの扱いがどう違うのかゞ良くわかってないので判断し辛い。昇給は本人の自己評価を元に周囲の評判も聞いて決めるそうだから、なんつーか、成果主義っぽいな。
 うーん、やはり初見での印象に比べると、二回目はまたずっと違った雰囲気に感じる。福利厚生の充実度とか一切書いてない(一つの所で社員が滞留しなくて、職場が全世界にあるせいだろうか)し、チームワーク重視と言っても、その雰囲気を掴みかねる。ざっと概観すると、社員はたぶんスキルが高いものを採用し、裁量というか権限をほとんど与えて仕事をさせる。知識は現場で調達させ、上司がやかましく口を挟むってのはなさそう。ただし、やはり合衆国企業らしく投資に対してのリターンは求めると。既に指摘はしたが、いゝ意味での成果主義っぽい。但し給料は業界トップクラスではなく、チームワーク重視らしい(というか未経験の場にポッと放り出されるワケだから、現場で知恵を出し惜しみなんてしてられないのだろう)から、抜け駆けしてまで高報酬を狙うって環境にはならないように見えるな。人をモノあつかいするような単語(経営陣とか労働者とか)は避けているとの記述があったが、瑣末なことだろう。現場にやりたいようにやらせて失敗を許容しながら業務拡大を進めて行くって感じかな。