社長「いまの若い人はお金を求めていません。何よりも、仕事のやりがい」 魚拓

 これ、元記事魚拓の後のほうに大体言いたいことが書かれてある。

 これらについて尋ねてみたが、いずれも同じ回答だった。「いまの若い人はお金のことを考えない。会社にぶら下がる考えを持っていない。それよりは、働きがい、例えばオフィス環境を整えたりすることを求めている」と。


 そして、ある社長は事務所の中を案内してくれた。確かに相当なお金をつぎ込んで作られたようだった。


 だが私は、腑に落ちないものがあったので、記事にするのを止めた。その後、知人の紹介でこのうちの数社の退職者から話を聞くことができた。それによると、会社は社員に対し「退職金制度が必要であるかどうか」はもちろん「給与や賞与についてヒアリング(聞きとり調査)をしていない」という。


 会社として、退職金の意味を社員に説明したこともないようだ。ここに矛盾がある。これらのうち5社の経営者は、かつて大企業に勤務していた。それぞれ30代後半〜40代半ばのころに、1000万円〜2000万円後の退職金を受け取って辞めている。このお金を資本金や運転資金に使い、会社の経営をスタートした。これは、本人たちにインタビューした際、答えていたことだ。


 つまり、彼らは、自らの退職金は受け取るが、自身が経営する会社では社員に支払わない。その点を問いただすと、1人はこう答えた。「私は入社する際に、退職金があるかどうかを基準にしたのではない。退職金が働く動機になっていたわけではない。たまたま、そのような制度があり、退職するときにもらっただけのこと」


 この回答は、詭弁(きべん)にしか聞こえなかったので、こういう質問をした。「社員たちに、次のことを伝える必要はないですか? 私は退職金をもらうことで、会社を創業することができた。皆さんには、この退職金を支給しない。そうすると、ハンディを負うことになる。それでいいですね」と。


 社長は苦笑いをし、何も答えなかった。退職金がなくとも、その分(積立の分など)を毎月の給与に上乗せすれば、問題はないかもしれない。しかし、これらの会社は一切支給していないのだ。


(中略)


 そのどさくさにまぎれて、退職金制度そのものを廃止にした会社が当時、あった。私が取材したベンチャー企業の中にも、そのようなケースがある。そこは以前、中小企業退職金共済制度(中退共)を利用し、毎月、社員たちの退職金を積み立てていた。だが、この時期にそれを止めてしまった。その浮いたお金がどのように使われたのかを聞いたが、会社の社長と人事部長は答えなかった。