宝石の国 第12話

 結局それなりに落ち着いた終わり方。
 スタッフも考えた末での原作のこの切り取り方なんだろうなという感じ。いちおうこのアニメシリーズを視聴し終わって、フォスフォフィライトの成長モノとしてまとまりはついているし、物語上のミッションとしては辰砂との約束をいちおう果たしたという形で風呂敷はいちおう畳めているという。
 個人的には、こう月人の本質だとか、鉱物と肉体のメタファーであるところのあの貝に代表されるものと、月人との関係性と世界の相似に、それなりの主張があると思っていたので、そういうのに対する言及があまりに少なくて肩透かし感パネェというのが先に立つ。原作ではもしかして述べられているのかもしれないし、設定の段階で原作者がそれなりの意味付けを与えていて、今はそれを見せないだけなのかもしれないが、少なくともこのアニメ版では原作者がこういう世界観を提示するに当たって、現実社会との関連性について、少なくともそういうものと格闘しているって姿があまりにも見えなくて、作品と視聴者と真剣に対話する態度が今の所希薄過ぎるという感じ。もちろん原作者が考えてないはずはないので、そのチラ見せの具合が戦略的に正しいのかどうかってところだわな。この様子だと気になる人は原作に誘導されちゃってくださいってことなのだろうから、個人的にはそこまで追っかける気にはならなかったかな。
 鉱物は鉱物でもとりわけ宝石と呼ばれるものを取り上げているからには、まぁおそらく、ターゲット層はきっと自分にはなにか光る個性があって、磨けば光る宝石の原石であると夢見がちな学齢期がメインなんだろうなと思う。そういう層に対して、挫折込みの鬱展開を見せ、世界観をキレイなまゝ主人公を成長させてみせたのはうまいんだけど、世の中キレイ事で動いているわけじゃないんだよというのを知ってしまった層には物足りないんじゃなかろうか。
 まぁおっさんにとっては世界を肯定した上で葛藤はあくまで自分の中で完結しているというのより、不条理な世界と格闘した上で、葛藤してみせて欲しかったかなというところ。自分が期待していたものがなかったというだけで、作品自体悪いものではないなという感じ。