生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)、到着。

 紹介でちょっと興味が湧いたので入手。本が袋綴じになっていて、袋綴じを開けずに読んでも短編小説になっているし、袋綴じを開けて短編小説部分が混じっても長編小説として読めるというもの。いちおう袋綴じを切断しない保存用に新本と袋綴じを開けた中古本の二冊を購入。中古本はすぐに届いたが、新本のほうは六冊在庫があるのを確認してポチったのに、二週間もかゝって本日到着。



 上のほうが新品、下(左)が中古。中古のほうは平成二十六年三月五日八刷、新品は平成二十六年三月二十日九刷。ちなみに初版は平成六年一月一日らしい。

 新品は16頁から始まって17頁を読んだら32頁に飛ぶつくり。以後33→48、49→64、65→…→208頁で終わる。

 こういう作り。中央にミシン目を入れた四枚を重ねて折り、16頁をまとめる作り。

 上(左)が新品、下が中古。袋綴じをあけても外観はあまり変わらない。袋綴じを開けてしまうと断ち切りでないためにページがめくりにくい。もちろん構造上断ち切りなどできるはずがないのだが、かといって袋綴じを開けないほうが、手触りで次の頁を確認しやすいので読みやすいという。



 というわけで、短編のほうは読了。長編のほうも袋綴じ一まとまりをちょっと超える部分まで読んだが、やはり短編のほうは今一。いや、それだけでもたいしたものだとは思うが、いちおう物語の形になっているというだけ。やはり2ページ読んで次の2ページに移るときは唐突感が付きまとう。中古本のほうが先に到着したが、短編を読むまで我慢していたから、長編の知識がなくてもこの唐突感があるのはやはり短編としては完成度は低いと言わざるを得ない。長編の一部はスムースに読めるので、実験としては面白いがというレヴェルかな。
 まぁ二冊買ってみたわけだが、おそらく長編を読んでしまうと短編は見向きもしないことになるため、一冊買うので十分だとは思う。短編も後で確認したいのならしおりでも挟んでおけばよい。そのしおりも12〜13枚あれば十分なので、小説の重要ポイントにしおりを挟むスタイルの人でなければそうわずらわしいものでもないだろう。で、長編の出来がよければ、短編のほうをわざわざ振り返って読もうとは思わないだろうから、そのしおりも無駄になる可能性が大きい。
 袋綴じを連続させて、その表裏に小説を書いて一つの物語になればという着想自体はエロ雑誌を何冊が読めばそれほどすばらしい思いつきってほどでもないんだけど、中身を開けて通して読んで長編小説になるというのを実際に形にする*1というのはかなり大変だったろうと思う。密林の著書一覧を見た限り、この取り組みはこの作品一本だけのようではあるので、労多くして益少なしというのがわかったのだろう。
 自分はミステリー自体それほど好きではないので、仮にミステリーの傑作というのをあてがわれても「ハテ?」と思う人種であり、おそらくミステリーとしてこの作品が面白いのかどうかを読後に判断できるとも思われないが、少なくとも短編の出来自体は微妙だからそこんとこ気をつけてというに留めておく。

*1:作者的には長編のほうが本筋で、短編はおまけだろうが