異国迷路のクロワーゼ 第9話

 なんかフツーになったなというのが彼の褒め言葉だと湯音は思ったんだろうな。
 フランス人ってのは、イタリア人などゝゝもに、しょっちゅう愛の言葉を囁いているってイメージがあるので、褒め言葉なんてあたりまえであってもおかしくないんだがな。ホラ、オスカーがそうだし。まぁ日本人だって調子のいゝやつもいればそうでないやつもいるので、イタリア人やフランス人だって朴訥なのがいてもおかしくはないんだが。
 クロードとカミーユの幼少時の思い出その2だった。いや、自分はてっきりクロードはカミーユの気持ちをいろいろ察していたのかと思っていたのだが、どうも違ってたみたいだな。幼い頃のカミーユの言葉の真意が今までつかめてなかったような描写のような気がしたが。が、逆にクロードは昔のカミーユの言葉を今までよく覚えていたよなと。物心つかないときって大抵のことは子供の戯言として忘れちゃうもんだと思っていたけど。
 いや、今話はそんなに内容が切れ込んでいるって感じでもなくって、でもひたすら切なさで泣いてしまった。やたら悟っているカミーユと、思い遣りはあるんだけど世の中を知らないクロードのすれ違いがね。どうせ二人がくっつくこともないだろうし、今回で何か進展だのがあったわけでもないんだけど、割り切るには情念の深い二人のような気がするので、こういうのを味わうのには一番いゝ年齢期だな。もうちょっと年取るとあきらめちゃうんだろうけどな。日本のドラマなんかでも昭和初期とかを舞台に身分違いの恋は実らないってフォーマットがあるんだが、これが身分違いの結婚をしてお互いの価値観の違いがありながらも、むしろその違いを成長のネタに話が展開する物語っていつごろから流行りだしたんだろうな?。自分が中高生の頃目にしたような気がするのだが、まぁ金持ちは貧乏人と結婚したがらないわなと思っていたら、郷土生活の研究 (筑摩叢書 79)を最近読んで、その中に

 「婿は横座から嫁は木尻から」という譬えにもあるように、以前の一般の婚姻においては婿はよいところからもらって、家の地位を改良してゆく反面に、嫁は働く階級から取って、これによって子供を働き手に仕立て、家の労働力を維持したのであった。実際に農村では嫁をよい家からもらうと、それが衰亡の一転回期となっている例が多かったのである。

 のを目にしてしまった。もちろんこれは武家とか公家の話ではなくって農民の話ではあるのだが、気働きをするのが嫁の仕事とでもいうのなら、これは確かにカミーユはいゝ嫁になるだろうが、アリスはダメってことになるな。あ、日本だと嫁の身分が低くて苦労するって話は多いような気はする。
 そういやフランスっていち早く市民革命を成し遂げた国だから、格差社会とかおかしくね?とか一瞬思ったのだけども、そういやフランス革命ってブルジョワ革命だったよなと思い直した。ナポ1、ナポ3と共和制がひっくり返ったし。なんだかんだいって、自分は身分違いの結婚が実るってのを期待しているんだろうなと気付いてしまって、恥ずかしいやらなんとやらで。