イヴの時間 再考

 キーワードを含む日記(とは今言わないんだっけ?)巡りをしてみた。ロボットと人間の共生とかいっている人がいて、それはそれで正しいんだけど、やっぱアンドロイドは現代日本の大人というか、親世代のメタファーだよねと思う。まぁ仮に作者もそう考えていたとして、なんかひけらかしているようで恥ずかしいのだが、視聴してそういう感想を書かないサイトさんは知ってて黙っているところもたくさんありそう。
 ポイントとして、

  • ほとんど大人世代のキャラが出演していない。主人公の親ですら一度も登場してない。
  • アンドロイドの果たしている役割が、現代日本の大人がやっている仕事に酷似。
  • 特にサミーの作業は、家庭における母親の役割である。
  • 子供がアンドロイドに対しての接し方が、現代日本の子供が親に対するのにそっくり。

 個人的な例で申し訳ないが、恥ずかしいことに自分が高校生の時の態度にそっくりなんだわ。今考えると思い上がっていたよなぁと赤面するのだが…。

  • アンドロイドはイヴの時間では自分をさらけ出しているが、仕事中は無表情で自分を押し殺している。これは大人が仕事中には何事にも我慢という態度に対応。子供キャラはどんな場所でも思ったとおりのことをそのまゝ口にしている。

 っつーわけで、どう考えても現代の若者に対しての批判に近い。アンドロイドを家電といっているが、今の若者世代も大人を便利に扱っているのに対応かな。これは内田樹の言及にある通り、子供が消費する主体として扱われているわな。
 トマトを握りつぶすと中から機械が飛び出し、ロボットが作る野菜を批判しているCMがあったが、これも近未来のことではなく、現代農業に対する消費者のあり方への批判だわな。今時農機を使用しない農業なんてありえないわけで、じゃぁ全部手作業でやるのか?と言われれば、あの世界の学校の生徒がそういう泥仕事に就くとはとても思えないわけだ。だから、アレは機械化される農業を批判するシーンなのではなく、世相が無責任に有機農法や無農薬野菜をもてはやすくせに、正当な対価を払わずキレイ事をいっているだけってことを批判しているんだろう。
 主人公の姉だって、アンドロイドというか高度機械文明の恩恵を存分に得ているのに、ドリ系と逆に馬鹿にしている態度だったりする。じゃぁ機械を馬鹿にする替わりに大学生として何かを極めようと一生懸命なのか?と言われればそんなことは全然ない。自分が大学生の頃も大学はレジャーランド化したと言われていたのだが、自分が利便性を得ているシステムをバカにしているぐらいだから当然今のFランと言われる、学力的には底辺の大学生と等価なんだろう。
 ヘンな話、近未来というギミックに騙されやすいけど、結局すべて現代社会の問題点に言及しているような気がしてならない。次回また2ヶ月後に公開らしいが、ロボットと人間の恋愛に近いテーマっぽくて、これはオタクとオタクが恋愛対象にしがちな二次元キャラ(いわゆるマルチだのセリオだのというメイドロボットに近い)に耽溺する構図とかじゃないのだろうか?とひそかに予想している。そりゃたったの15分なのに、中身がぎっしりと感じるはずだよ。視聴途中には気付きにくいんだけど、どっかで見た風景だよな…という感覚はずっと拭えなかったもんな。まぁすべてがそうだと断定するつもりもないし、いろいろな解釈が出来る作品こそ優れているとも思うんで、余所様の感想がだめだというつもりもなくって、まぁこういう見方も一つあるよねということで。