Fate/stay night 第24話「全て遠き理想郷」

 なんだかキレイにまとまった気がするよ。
 ブルーバック画面は製作が間に合わなかったのか?とかいきなり「死ね」の文字はどこのFlash動画なんだ!とか士郎のモノローグをわざわざ字にすることもなかったというのがツッコミどころかな。まぁ枝葉末節だわな。むしろ死ねの文字の素人っぽい気味悪さは効果を上げるという点では良かったと言えるかも。
 ストーリー上では士郎がセイバー自身の鞘というまとめ方もよかったし、攻撃としては単調なセイバーの戦闘シーンも演出がよかったせいか盛り上がれました。誇り高い恋愛のあり方も感情に溺れすぎない表現であとへのつながりも自然。後日譚はよくある形だったんだけど視聴者の興奮をうまく鎮めながら物語を〆る役割としてはようできておりました。エンドロールは役割を一切抜き取ってすべてのスタッフを五十音順に流していましたが、よくあることなんでしょうか?。ED曲も結構胸にキましたよ。あんまり歌詞は聞いてないけど。まぁ前回もあわせて最終話の出来はかなり良かったんじゃないでしょうか。
 折角最後にいい気分にしてくれたのに興醒めではありますが、やっぱり作品全体としては微妙感がかなり漂います。主人公の士郎があれほどこだわっていた“善”、そしてそれに対置される“悪”のテーマが不十分としか思えません。男女の機微をふくむ恋愛面はかなりよかったんだけど、いざ終わってみてもそれが表現したかったわけでもなさそうですし。やっぱり善悪の表現をしっかり行って欲しかった気はする。最終局面でも言峰に悪のどういう部分を背負わせていたのかわかりにくかったしなぁ。多分原作ではプレイを何度もして初めて明らかになるんでしょうけど。というかシナリオによってはどうでもいい部分にもなるんでしょうが。やっぱり原作をやりこんだ人が「この場面は原作のどこそこにあって、スタッフはそこを切りだしたかったんだろうな」と全体を高所から眺めおろさないと楽しめないんでしょう。物語として一本筋の通ったものにするためには、一旦乗り込んだら途中下車をしてはいけないのであって、せめて車窓外の風景を眺めたり、車内をくまなく散策する程度におさめなきゃならなかったんでしょう。面白い風景があるからといって途中下車して他の手段に乗り換えて、堪能したらまた再乗車するということを何度かやっていたんでしょうね。正直この作品についてはあまり他の感想サイトさんを巡回するのを途中でやめていたんですが、原作をやって肩肘張らない人だけが見続けて、それなりの感想をUPしていたんじゃなかろうか。あんまり非難するような噂も聞かなくなってましたし。まぁ途中で切ったか、試聴してはいたけど感想はしなかったというパターンが多そうですが。
 最終局面での盛り上げを見ると、どうも自分にはスタッフを責める気はあんまり湧いてこないんですよ。本当にテーマを描ききるためには視聴者にあたかも原作を何度もやり直しをさせてまでいろいろ確認させるぐらいの労力を強いないといけないことがあるだろうから、時間はいくらあっても足りない。かといって筋を立てた上で士郎とセイバーの関係に注力して描いたら、実はスグ終わってしまうんだろうと思います。そして時間は短いのに説明はもっと多くなりそうですし。他のルートにも魅力的な描写があって、視聴者の中にはそういうのを見たいという人もいるでしょうから、それを描かない手もないでしょう。プロなんだからそれらすべてをバランスよく配置して消費者に提供するのが仕事だと、口で言うのは簡単でしょうが、少なくとも私はそんなことを言うつもりは絶対無い。結構苦言を呈されるutumi_kさんだって原作を、そのルートをいくつも遊んでみて素晴らしい作品だと主張されているので、原作の中に込められた有機的な配置を表現しきるのは本来アニメでは不可能と考えるべきだと思っております。登場する女の子はすべて魅力的に描かれていたし、描写方法にしても萌えに耽溺しすぎることがない切り替えの良さは、やっぱりスタッフの冷静な判断があってのことだろうし、力量は優れていると思います。すべてを肯定はしないけど、全力を尽くして取り組んでいたんじゃないかと思うんですよ。
 我儘な視聴者の一人としては、なるべく手短にFateの人間関係と物語中の主張をかいつまんで話してくれればよかったわけで、いうなれば1クールでも良かったんですよ。イリヤや桜、ライダー・キャス子当番回は要らない。もちろんアサシンやランサーも出番すら要らない。切り捨てることが必要なのだったら凛すらそうしてもらっても構わない。まぁ凛は士郎の助言者としてでしゃばることもなかったし、物語の説明者としてなくてはならない存在でもあり、作品中でもうまく物語に寄り添わせる形にしていたので、問題はありませんでしたが。…でもそういう切捨てをしたFateってFateじゃないって絶対言われるんだよね。
 まぁ実は作品全体としてはけっして誉められたもんじゃないとは思うんですが、結構楽しませてはもらいました。スタッフの皆様方はむしろ非難に耐えてお疲れ様でしたというべきか。まぁその一端を私が担ってしまってはいたわけで、私の戯言は我儘な視聴者の一声ということで無視していただきたい。光希桃さんの終了番組調査は本当にやらないんですかね。手間が大変だと思うのでせっつくことはしたくないんですが。まぁこのまゝやらない可能性が大きいので、ここで評価表明しとき*1ます。…おもろ−。

*1:本当は何週間か時間を置いたほうがいいのですが