猫神やおよろず 第8話

 今まで女丈夫のことをおんなじょうぶと読んでいたよ。
 いやぁ、ためになるなぁ。というのはどうでもいゝのだが、今回のお話、いつも自分が意識している仕事観ってのと関連がなかなかつきそうにない。無理矢理こじつけると、取引の上で不正を行った鎮葉と不正をされた繭との間の戦い、損失の取り返しのように思える。今ドキの商慣行だと取引ってのは契約書を交わした上での債権・債務履行が主だから、正直契約書を交わした時点で終わりなのだが、取引の関係がダイナミックに変わっているところをみると、なんかそれほど厳密なものでもないように見える。あと、不正が行われると、正常化するためには今だと裁判って形をとるんだけど、これは交渉で解決されている。ネットや本など、巷で耳にするビジネスとはちょっと違うだけに仕事観というのとは違うように思ってしまうのだが、まぁこのように考えることもできるってことで。
 で、今回だと取引が賭け事で表されている通り、やってることがそもそも胡散臭いというか騙し騙されというのがベースになっていてまともな商売ではないというのが示されている。キレイ事を言えば、取引なんてのは本来Win-Winの関係でとりおこなわれるべきものであり、一方がもう一方を騙してがめつく儲けるものではない。そういう取引は一度やれば騙された側だけでなくその周囲も警戒するから永続性が無く、また市場も荒廃する。で、今後ともよろしく取引を続けるためには信頼関係の構築が必要で、じゃぁこういうトラブルが起きたら裁判などの第三者の手を借りることが果たして正しいのか?と言われると、そうではない。騙したほうが勝訴しても騙されたほうが勝訴してもしこりが残るわけであり、二度と正常な取引関係は構築できないのだ。となれば当事者同士で合意に達するよう関係の修復を行うのが適当になる。が、騙したほうはもともと欲深いのであり、そう易々と自分の非を認めるはずが無く、いや認めるんだったら初めっから騙したりしないだろというワケだ。ならば被害者が知恵を絞るしかなく、そしてそのスマートな解決方法の一つを繭が示したってわけだ。彼女が示したのは「公正であること」。もし繭がズルをしてたら「騙し」はエスカレートするだけだ。
 今回の話の面白いところは、繭がさいころの掏り替えをワザと行い、鎮葉に自分の行為に思いを至らせたということだ。それによって繭が公正に振舞ったことに注目させられる。ピンゾロが出たら(三十六分の一の確率で起こりうる)台無しだが、今回半が出たが仮に丁が出たところで鎮葉はオヤと思うはずであり、繭が公正に振舞ったことを示すことができる。繭が太っ腹なところを見せたという形にも見えるが、実はこの流れはかなり教唆的であると思われる。
 まぁ世知辛くなった現代とはいえ、すべて取引ってのが相手をだまくらかして利益を得ようとする契約書方式ってわけでもなく、相手との摺り合わせを行いながら双方の最大利益を追求する形のものもまだまだたくさん残っていると思われる。トラブルをいかに切り抜けるか?ってのじゃなくて、平常からの信頼関係の構築が重要であるってことなんじゃないかね?。鎮葉にしたって、繭からカネやゲームソフトを巻き上げたのは、自分の懐をうるおすためではなく、繭の目を覚まさせるためってのは十分に作中で示されていたし。
 ナンプララーメンの社長・社員、どうも成功したようだが、しゃもとの対応を見たら次回あたりまた不遇になっていそうだな。