C 第5話

 国債を買い支えて国民を救うことが馬鹿げているというのが政治家志望の若手の本音。
 うーん、物語中で出てくる台詞とか考え方とか、そうそう目新しいものでもないんだけど、いろいろ考えさせられる。ミダスマネーとか、IMFも流通を止められないとか言ってたから、日本のシステムじゃなくって、もっと大きな組織の所業だろう。まぁ合衆国がドル紙幣を刷りまくっているぐらいしか思いつかないが。でもあれだな、三國はミダスマネーは疑いようも無い悪だと断じてたな。自分はてっきり金融街でのディールによって現実社会にミダスマネーがもたらされていると思っていたが、どうも金融街の活動とは無関係にミダスマネーが現実に流通してきているらしい。
 で、面白いのがムクドリギルドだな。ディールをコントロールするとか言ってたが、これ、コントロールの語義通り規制のことだろ。瞬殺でもなんでもアリがディールの醍醐味という発言もあり、コレは明らかにカネ儲けのための規制緩和のことだろうし。まぁ三國率いる椋鳥ギルドメムバーと余賀以外はカネに目が眩んでいるわけで、今のところ子鼠改革の尻拭いを三國達がしているとみていゝのかな。
 しかし、ディール自体も僅差での勝負というのが提示されてなんかホッとしたな。初めの頃は"You are bankrupt"とか頻発していたような気がするが、今頃は"You lose"で済んでいるもんな。大きな負けが破産およびそれに伴う現実社会での処理、小さな負けがちょっとした不幸か。公麿が大勝ちか破産かといったピーキーな勝負だったらディールを避けるという気分だったのはよくわかる。が、僅差だったら現実への影響も少ないとなれば一息もつけるだろう。まぁ抜けられないってのは結局のところ金融街でのディールは別に現実と乖離した出来事なんじゃなくて、現実に起こっていることのなんらかのメタファーだと考えるしかないわな。菊地翁も強欲爺だったことが確定したわけなんだが、芭蕉製薬の不祥事としてニュースになっていた横領とかの不正の数々は、要するにディールに大いに関係していることなんだろう。
 いや、本当に強欲な人間の所業には困らされるワナ。強欲なだけに自分のことだけで、周りのことが見えておらず、カネ儲けしても人を悲しませるし、破産しても人を困らさせる。そんなに両極端じゃなくても、日常業務で人に指示したり自分が行動するのにも、基本は自分が得をすることしか考えてないから人に迷惑ばかりかけている。そういうのがなまじっか知識を身につけていると影響力が増大してしまうわけで、周囲は困るばかり。そしてそういう連中がこゝ20年ぐらいずっと日本をダメにしてきているんだよな。で、今だにそういうのがのさばっているという日本の不幸。三國だとか余賀だとか、元はそう影響力を持ちえていなかった苦労人に主役を張らせているんだが、カネ持ちの苦労はカネ持ちにしかわからないから、日本はどんな強欲な人間であってもカネ持ちに治めさせるべきって主張が全く説得力をもたないなぁ。自民盗の世襲議員が日本を食い潰したジャン。
 いやいやしかし、真朱がエライ可愛いな。インスタントラーメンを食わせてくれという場面は、チューをねだる恋人のようであったのだけれど、そういう意図的な描写じゃなくて、公麿と言葉はキツいが真朱が運命共同体であるってことがよく描かれていると思う。アセットはアントレの未来だと言っていたから、これは自分の未来との対話という形になっており、彼自身が目の前のカネ儲けに浮付いているわけではないという構図になっているんだろう。いやはや羽奈日より真朱のほうがよっぽど気の合った恋人って感じだな。