伯爵と妖精 第12話「伯爵と妖精」

 なるほど、バンシーはいわゆる日本の良心のメタファーというわけですか。いちおうイギリスを舞台にしたのは島国という共通点を考えてのことでしょうね。
 結局夫婦漫談は見られず。でもこういうヒキだとリディアは結婚しないわけにはいかないよねという流れになっているとは思う。あんまりアニメ的最終決戦という雰囲気ではなかったが、ダイナミックなアクションはちゃんと描かれていて、とても少女向けってレヴェルにとどまってはいなかったように思う。最終回でテンポ重視なのか、いつもの諧謔に富んだ台詞回しも、第4話で見せた知恵と決心の連続攻撃ってワクワク感も無かったけど、まぁ伝えたいメッセージに絞ったからだろうな。せっかくOPの時間分を稼いでも、余韻のある終わり方にはなっていなかったし、さらなる敵への決意もお急ぎって感じがしてちょっともったいなかった。OP曲とオーヴァーラップさせてさらに時間を稼ぐのは構成上ちょっとしんどかったのだろう。
 うーん、どうだろう?。いちおうプリンスとの決戦を残して「オレたちの戦いはまだまだ続くEND」になったわけだが、これだけ楽しませてもらったわけで、続編があれば見たくもあり、いやもうアイデアのストックは尽きているだろうし、たぶん今回一番伝えたかったであろう、ノブレス・オブリージュも引っ張ったところでクドくなりそうだしで微妙な感じだ。まぁ初回を見てなんでこの作品を視聴対象にしたのか戸惑ったぐらいで、最初のフックも今になって思えば、そういや少女漫画的設定を利用しながらも、個人の置かれた厳しい環境に興味を持って、それなりにギスギスした社会で主人公たちがもがく様子を期待していたように思う。それがまさに少女漫画的世界観を見せ付けられて面喰ったわけだ。いや、確かにある程度今の日本の惨状を織り込みつゝ、キレイに見せかけながらも個人の受けている抑圧を表現しつゝ、それと格闘する姿を活写して見せた力量は大いに買いたい。今期スタートの作品の中で一番泣かされたのがこの作品だった。よくよく考えてみれば不思議ではあるよな。
 まぁ正直腐女子少女向け作品をたまたま視聴対象にして実際に見てみて、毛色が変わった様子につい浮付いている部分はあろうかと思う。で、やっぱり思い出すのが「狼と香辛料」との比較だ。どちらもヒロインキャラは夫を支えつつ、度胸と機転を併せ持っている。ヒーローキャラというか、夫キャラは交渉の前面に立ちながらも決して軽薄ではなく、攻撃というよりは守備に重点を置いている。まぁ伝統的な家族像を描いてはいるわけだ。で、華やかな部分を担当するのが狼と香辛料ではホロ(女)であり、この伯爵と妖精ではエドガー(男)であるという違いになっている。巷間に溢れている作品のように、男女がくっつくくっつかないという動物的惚れたはれたではなく、あくまで男女一組を経済・運命共同体としてみた時の、お互いの役割分担だの共同作業だのってのが描かれている。二人は形式上は他人であっても事実上は家族として描かれ、しかも恋愛部分はうまくその他人部分が利用されて飽きを回避している。
 あとその他の部分でもまぁ音とか絵とかなんだけど、十分クォリティが高いレヴェル。音楽に関してはせっかくイギリス風の面影を上手く取り入れていながらも、肝心の詰めが甘いというか、せっかくだからオケベースに統一したらよいのに…というのが惜しいところ。なまじっか「かんなぎ」の最終回でうまく音楽が使われていただけに、躍動感を重視するためにロック風になったり、アコースティックが削がれてしまっていたりしたのが個人的にもったいなかったと思う。金が足りなかったのかね?。きっと全編クラシックで統一していたら、いいサントラになっていたろうに…。でもまぁサントラを作っても回収率はかなり悪いんだろうなと思うと、パフォーマンスではこのやり方にならざるをえないんだろう。
 っつーわけで、甘い評価なのかもしれないが、自分的にはかなり楽しませていただいたということでおもろ+にしたい。脚本というかシリーズ構成で筋が通っていたのと、総作画監督というキャストが載っていたが、そういう体制がうまく功を奏したと思われる。あんま注目されなかった作品のようだけど、もったいないなぁと思った。