夏目友人帳 第12話「五日印」

 蜘蛛の巣にカエルが引っかかっていることがオカシイと気付かなかったのかね。
 まぁある意味今回の話を象徴しているとはいえるが。普通カエルは蜘蛛を食う立場だろうと。で、夏目を試すとか、なんかおかしい。要するに三篠は夏目に呼んで欲しかったんじゃねぇか?。ヒノエの夏目へのお目通りとレイコの死を知らせることも兼ねて。ふさわしくないと貶しておきながら、今しばらく名前を預けておくとか、なんてツンデレなんだ。
 しかし、夏目の友人たちもよくわからんな。塔子さんにサンドイッチを作ってもらえと言った真意が人の世の甘いも酸いもかみわけているような大人っぽいのがまたね。夏目の気質はわかっていても不思議はないんだが、この歳だともっと遊び盛りでバカなはず。
 しかしなんだねぇ、そうはいっても凄く居心地のいい世界を作り出してはいるんだよな。ニャンコ先生はともかく、三篠やヒノエにしてもすごい能力の持ち主で、それが何でいくら霊力が強いとはいえ一介の人間であるレイコに名前を奪われたのか?を想像するとなんともな。いや、結局「アヤカシものに弱い心を見せてはならぬ、アヤカシは人の心の弱さや陰をうつす」という台詞も、寂しさをアヤカシで埋め合わせているというのも、過去の三篠の経験談なんだろう。アヤカシと人間は表裏一体。アヤカシにとっては人間こそが彼らにとってのアヤカシであり、彼らがつけ込まれた相手はレイコだったのだろう。
 ただ、今までの描写で明らかな通り、レイコは彼らを友人帳に記帳しはしたが、その後全く使役していない。で、名前を返すときに貴志に湧き起こる追想に見える通り、レイコはアヤカシたちの危急を救いこそすれ、決して無茶な戦いを彼らに挑んで勝利してきたわけではない。アヤカシたちは多分過去に彼らの内部の世界もしくは人間との関わりの中で、なにか辛い思いをした経験があって、たぶんレイコに急場を助けて貰ったのだろう。だからこそレイコに呼ばれたら喜んで馳せ参じるアヤカシが多いし、実際にレイコに呼ばれたがっているアヤカシも多かった。
 で、呼ばれて行ってみると、居るのはレイコではなく貴志。別人に呼ばれて尽くす義理もないよな。しかし、実際につきあって、貴志の言動はやはり志レヴェルでレイコと同じということを確認して、改めて友人関係を保つわけだろう。たぶんアヤカシたちは、大事なものを守りたいとか、迷惑をかけたくないという夏目を中心に据えてまとまったほうが居心地の良い関係を継続していけるのだろう。それこそアヤカシたちが過去に陥っていたことは、大事なものを奪われたり、迷惑をかけられたということであって、そういうヤツに関わって酷い目に遭っていたということだろう。言い過ぎかもしれないが、今回の話にしたってニャンコ先生による三篠(ヒノエ)への夏目ワールドへの招待であったとすら読めてしまう。
 しかし、面白いのは批判要素がほとんど見えないのに、ちゃんと奪われるだけの国民に対してのメッセージになっていることだよな。あらためなくても、アヤカシたちが現代に至るまでの被抑圧民のメタファーであることを確認させられてしまう。
 まぁこういう町に住みたいよな。