二十面相の娘 総感

 難しいところだが、やっぱり見終えても真面目くさった作品という印象がつきまとった。本来おちゃらけの中に真剣なメッセージを埋めなきゃなんない萌えアニメよりは、直球勝負の作品をもっと見たいと常々思っているだけに、期待もし、序盤はそれなりに満足もし、見始めるとそれなりに引き込まれるのではあるが、どっか頭の中ではコレジャナイという反問も浮かんでいた。やっぱ説明過多の部分なんだろうなとは思うが、スタッフの想定している視聴者層のことを考えると、それもしかたのないことだろう。自分で見て聞いて判断して…という大テーマは、繰り返されていただけによっぽど視聴者に対して刻印したかったのであろうが、物語なんだから声高らかにというのはもうちょっと控えて欲しかったかな。あとは戦後処理は実は現代に至るまで未だに終わっていないという部分はなかなかにしてよく考えられていたようには思う。これは政権批判の部分が強いと鼻につくのだが、こればっかりはバランスが良かった。チコは財産を受け継ぐ良家の子女という描写だが、かといって財界の特権階級という印象はなかった。むしろチコが受け継ぐべき財産を叔母が横取りしようとしたように、今の就職氷河期が政財界に使い捨てにされて、未来を喪失させられているのと対応しているんだろう。
 アクションは目を楽しませてくれたが、時代感を示すためか、キレが今一でせっかくのいい描写が泥臭く感じた。終盤にもあったが、チコのスカートの中が、画面の反対側からは丸見えだろという場面が多く、ここは隠微なエロではある。さすがにこの時代設定だとパンチラはあまりに下品で、いくらスタッフが切望した所でこのぐらいが限界なんだと思う。音楽自体はこれまた時代感を良くあらわしているのだが、ちょっと好みではなかった。
 先ほども述べた通り、説明臭いところからすると中高生向き(最終回の小林少年を見ると、どっちかというと小学校高学年ぐらいなんだろうけど)なのかと思うが、深夜放送ということから考えるとやはり大人向きとも見ていいだろう。っつーか、大人が深夜で録画して、休日あたりに子供と一緒に視聴するとか考えているのかな?。そういった意味ではあまり大人向けエンターテインメントというものでもなく、大人に話題を投げかける要素は少なめと思う。だからこそちょっと物足りない感じはするのだが、説教臭いところを除けば概して良作だろう。オジさんキラーのチコの自立はアニオタの夢を砕いたに違いない。自分的にはもうちょっと突き抜けてほしかったが、評価はおもろ+の実力があると思う。