きょうのいきいきホットラインは

 ゲストは今野晴貴というNPO代表の人らしい。まとめると、フリーター・ニートなどの格差問題は本人の問題ではなく、社会的な問題であるということ。うなづける話も多かったし、現状の総括的な話としてよかったんだけど、深い切れ込みだとかの部分は少なくて、現状認識の強化という作用が強かったと思う。
 まず、格差問題が若者のやる気の問題というすり替えを行って、政財界に都合のよい仕組みに知らないうちにされていたということからはじまって、年功序列で高齢者の給料が高い反面、若年労働者の賃金が低いまま将来にわたっても上昇がないという未来のない状態に置かれているということなど、だいたい投稿者も同じような視点で述べられていたように思う。まぁ正直私なんかも、今の状態が特権階級による都合のよい社会改造の結果であるということが肌身にも理屈にでもひしひしと感じるようになったのは最近なのではあるが、予感として「あぁ、このまゝだと結婚なんかして子供を持ってしまうと自分の首をしめることになるわな」という予感はもう10年も前に感じていたわけだ。そこらへん1983年生まれのゲストと比べると就職状況で幸せな時代をスルーしてきた割に、社会に実際に出てからの実感としては自分の予感が正しかったことに素直に喜べないのは悲しい。
 本当はエントリーを別にして書くべきなんだろうが、昨日のゲストが触れていたとおり、大企業としてはバブル期を超える大幅な増益を経験している(何割かはわからないが)わけで、それなのに労働者の賃金はバブル期に比べて圧倒的に低いというのはさすがにマズいだろうとは思う。ただ、バブル期の賃金状態も大概おかしかったわけで、やれ新卒採用者のボーナスがいきなり100万出ただの、200万近かっただのという狂乱状態であったわけだ。直に体のよい追い出しテクニックとして悪用されていくのだが、あの時期の転職といったら基本は能力を見込まれてのヘッドハンティングだったわけで、あの時代をいざ振り返ってみると、本当にほんの20年前の出来事だったのか、まるで別世界のことのようである。
 実は自分自身はバブル崩壊後に就職したのではあるが、古い年功序列制による「若年者は徹底的に低賃金に据え置かれる」という状態だったわけなんだが、バブル期の賃金体制は確かにおかしいと感じていたように思う。当時のトレンディドラマでも如何に取引先に贔屓されるか?という商法が提示させられていたように思う。やれ裸踊りをして受注してもらっただの、それこそ飲み屋街が賑わっていたのもあの頃で、取引先に飲ませ、打たせ、買わせで気にいってもらい、受注成立ってのが恥ずかしげもなく晒されていたようにも思う。もちろんそれまでの商売のやり方もサザエさんに見られる通り、休日を犠牲にして取引先の重役とゴルフをして…という世界。グローバル化やクレーマー全盛の我儘な消費者がはびこる現在の状況が全く正しいとも思わないが、それでも顧客満足性だの製品のコストパフォーマンス重視の商法の現在のほうがよっぽどまともな働き方の方向性と思わないでもない。
 で、バブルが弾けて流行語にもなったのが「賃金の下方硬直性」ではなかったか?。それが何で年収100万円台という社会になったのであろうか?。まぁ答えはそれこそ今日のゲストが言っていた通り、「特権階級が自分たちだけに都合のよいように雇用慣習も賃金体系もこっそり変えていった」ということに尽きるわけなんだが、そして私なんかはそのきっかけは中曾根内閣もしくは土光臨調の頃からといいつづけているのであるが、ここで冷静になるべきではないかとは思う。もちろん今日の投稿者が最后で言っていたように、いまこそ自分たちが戦って手に入れるべきものではあるが、やはりバブル期の狂乱状態を今一度反省すべきではないかと思うのだ。
 やっぱり採用間もない新人が、たいした仕事をしてもいないのに、目先の景気のおかげで営業成績がいいからといって高給を貰っていたというのは考え直さなければならないと思うのだ。むしろそのように、本人の才覚でなく景気のせいで成績がよかったという間違った成功体験からいつまでも脱却できない人間が今も現役で居座っていることにも問題がある。特に問題なのはそのとき裁量もなかった新人ではなく、決裁権限のある中間管理職だった層で、そいつらが一番現場の変化についていけずに末端を叱咤激励することが自分の仕事と勘違いしているのがまた事態を何百倍も悪化させている原因となっている。そいつらの給料が一番保護されているわけだ。
 バブルが弾けてからの4〜5年は、それこそ賃金の下方硬直性で役員の報酬はベースアップしつづけ、その後に起こる悲惨なリストラという名の首切りで、賃金のコストカットに成功したとうそぶいて成果主義のもと役員の報酬がアップし、グローバル化に対応という名目の元、非正規雇用に切り替えることによるさらなる役員報酬の引き上げなどを行っているのが、経団連会長をはじめとする特権階級ではないだろうか。労働者の約8割は賃金の引き下げを経験していると思われるが、たぶん特権階級はむしろ年功序列が健在だった時代よりはるかに大幅な賃金の上昇を体験していると思われる。裏金なんかを含めると格段に。
 今になってみると実は終身雇用とセットになった年功序列制度というのはよくできていたと思わされる。若手のうちは確かに気力体力も充実して、物理的な仕事量は確かに多いのだが、そもそも仕事のやり方になれておらず、空回りや勘違いも多くて実際に効率を考えてみると仕事量に見合う利益を稼げていないことも多い。分別のある上司に指導されながら経験も積み、いろんな部署も経験しながら、即戦力になるわけではないんだけど、総合的な実力を挙げるスキルアップという意味での社内教育がOJTという専門用語をわざわざ持ち出さなくても自然な形でなされるわけだ。
 賃金が低いというのも、むしろ終身雇用の年功序列というのが保証されていれば、年齢がアップした時の貯金と考えれば我慢もできるわけで、現在問題になっている「いつまでたっても賃金が据え置かれる」というのとは別個である。専業主婦が成り立っていた時代には結婚しても子供が小さければ実際に必要な現金は少なくて済む。バブル期にあぶく銭を手にした若者がやれ高級外車や国産でも新車を買っては5年を待たずに買い換えるとかやってた時には、そりゃ車のディーラーは儲かったかもしれないが、金の使い方として果たして正しいのかは疑問である。むしろ金額が少なくともやりくりすることを覚えるほうが社会コストを下げるのに有効だ。モンスターペアレンツの問題は、その当該世代がバブル世代だということを考えてみても「金(しかもあぶく銭)さえ払えばよりよいサーヴィスが得られる→金を払わなくてもサーヴィスされるのはあたりまえ」という変化であることを考えると、若いうちに不相応な金を持つことは経験的に言って害のほうが大きいと思われる。ガキでも作れば、育てるのに必要なのは金ではなくむしろ手間という名の時間であり、安い賃金でこき使っているのに残業で若手を縛り付けずに子育てに時間を振り向けてやればいいわけだ。
 で、職場での経験が殖えてくると賃金と働きのバランスが取れるようになる。年をさらにとると、さすがに物理的な作業量と賃金とのバランスは取れなくなるんだが、むしろ末端で力比べをすることに年長者のメリットがあるわけでもなく、今までいろんな部署を経験したり、一つの仕事を10年単位でやっての経験を生かして、仕事内容を整理したり、いろんな作業・仕事・人間を有機的に繋げることがやっとできるようになるわけで、そういうのは就職したてのぺーぺーにできるはずもない。もちろん子供がいれば、高等教育を受けたりする段階になっており、この時期になるとさすがに親として手本を示すよりは、子供の将来に対する投資という考えになってこようから、金が大量に必要になる状態になっているわけだ。すなわち、若い時の貯金が効く段階になっているわけだ。
 こういうのをすべてぶち壊しにしたのが今の政財界であって、じゃぁこいつらがやっていることはなにかといえば、自分たちは仕事上のポジションでも美味しいところをずっと占有し、末端の労働者は劣悪な環境に据え置くことで成り上がりを防ぎ、現場からの改良点を必然的に経営面に生かせないようにして、結果的に自分の首を絞めるようなことにもなっている。自分たちだけが情報を優先的に手に入れるようにしたりして、美味しいところを吸い尽くしてから現場にカスみたいな情報しかまわさずにして、かえって作業効率を低下させることにもなっている。もちろん情報を制限するというのは現場の若手教育にも顕著に影響が現れる。団塊世代が自分たちの雇用を守るために仕事の勘所をわざと若手に伝達しないことによって、2007年問題が云々といわれたのも今年のことのはずなのに今は昔のことである。
 実は今の首相は20年以上も企業に勤めていたらしいので、血筋のために危険な部署は渡り歩いてはいないだろうが、71歳と言えば、普通ドサまわりからやって中間管理職あたりでやめている可能性があって、サラリーマンの気持ちは割とわかる人なのかもしれないという一縷の望みがないわけでもない。が、清和会といったあたりで、何の信用もないんですけどね。
 まぁとにもかくにも、成果主義を押し進めていって、若手のうちから高給を取るというのにも問題があるし、転職が必要な職種がないとも言わないし、かといって非正規雇用で会社の収益万歳という今の状態は間違っているだろうし、まぁ今の2〜30代あたりの大部分は今から終身雇用&年功序列でも文句を言わないだろうし、少子化問題も26000円の手当てなんてなくてもそれである程度は回復するだろうし、じゃぁなんでそうできないのかといえば、特権階級がしがみついてしょうがないという現実があってで、なんとも難しい。
 方法自体も、実践するのも至極簡単なのに、特権階級が権力をもっているというただ一点だけが一番難しい阻害要因ってのは、構造は簡単ではあるんですけどね。