ロケットガール 第4話「カウントダウン -count down-」

 でっかい爆弾に乗るとは言いえて妙。
 ゆかり、居住ブロック製作セクションと燃焼セクションを巡視して拗ねるの巻。まぁロケットというのは質量の大部分が燃料なわけで、司令室の小さな質量の打ち上げのために莫大なリソースを割くのです。しかし乗員の減量分はデッドマスで対応できるだろうに。
 なんとなく画期的のように思えるのだが、実は燃料タンクの削減分のほかに、燃料の質量と得られる推進力の比も大事なんだよね。基本的にはロケットは後方に物体を放出した反作用で飛ぶので、燃焼後のガスの質量&燃焼時にガスに与える勢いを考えねばならないんですよ。燃料自体が重たいということは重量増加のデメリットにもなるんだけど、燃焼後にそれらは後方に勢いよく飛ばされるとロケットの推進力に繋がりますので一概に重たいことがいけないわけではない。どうせ捨てられるんだし。水素燃料の効率だけを見たのではダメで、燃料タンク込みでの効率も考えねばならないということだろう。多段ロケットの切り離しを考えてもらうといいと思うのだが、切り離し時にはタンクはロケットの推進には何ら寄与していないわけです。
 しかし固体燃料ねぇ。液体燃料は燃焼室への供給量をバルブでコントロールできるので燃焼自体を制御しやすいのですが、固体燃料の場合には、基本的に点火後は一切のコントロールができないと思うので、大変。酸化剤はあらかじめ混ぜられている場合ですが。ただし、この設定では液体酸素をつかったハイブリッドとか言ってたので、酸素の供給量で燃焼をコントロールするんでしょう。どういう配管にするのか想像もつきませんが。しかし外側にいくにつれ密度が大きくなる*1とかいってたから、燃焼の最後になればなるほどコントロールが難しくなるというチキンレース仕様なのが笑える。いやゆかりにとってはたしかに死活問題なんですが。いやホント燃焼の最終段階はどのようなコントロールをするのか興味津々ですわ。
 しかしシステムエンジニアとしてみれば、燃焼システムの選定は一番最初にやっておき、開発の中盤には信頼度を上げる段階に入っておかなくちゃなんないだろうとは思う。ロケットは複合技術の粋なので、作品中でも述べられているとおり、長年にわたって信頼性が確認されている技術のみの積み重ねで完成するものなのですよ。一番不安定な要素を開発の最後にもってくるなど下の下。そういう無茶をやってのけるからこそ、カタルシスが得られるってもんではありますが、わかんない人には全然わかんないですよ。かといってそれをわかってもらうためにグダグダ説明を積み重ねるわけにもいかんだろうし、まぁわかるひとだけニヤリとしてくれという構成なんだろう。
 うーん、私も20代ならわくわくしたろうけどなぁ。もう歳もいっているし、仕事で総括をやることが多くなると、いざあとは擦り合わせをやって終わりだ!という段階になって、海のものとも山のものとも知れないバクチ要素を持ち込まれて対応しろと言われて困る経験をたくさんしたので、苦笑するしかないんですけどね。むしろ作品中ロケットが爆発しまくるのも、この組織のこういう体質がそうさせるんだろうなと妙に納得してしまうぐらいだ。もしかして日本のロケット開発の現場もこういう体質なのか?。いや前世紀末に連続した衛星打ち上げ失敗は基本的な配線ミスが原因らしいとも聞いていたので、それ以前の問題だとは思うのですが。今は改善されたのだろうか?。
 かといって、ゆかりが各セクションを巡回して、それぞれの現場でこつこつと仕事をこなす様子を見て納得しながら訓練に励むってのもスリルがなくて物語にならないんだろう。今回専門用語の発音を妙に聞き取りやすく発声していたが、まるで教育番組になりかねない勢いにもなるだろうし。打ち上げ失敗→ゆかりもしくはマツリ死亡なんて結末にしようがないのだから、予定調和を楽しむぐらいで鑑賞するのが吉だと思う。

*1:正確には粘結力といっていた。燃焼剤は減らしているんだろうか?。減らしていたら連鎖反応が終息しやすくなるし、減らしてなかったら爆発の危険性が増す。燃焼終期には高温になっているから燃焼剤を減らしている可能性が大きそうだが。