N・H・Kにようこそ! 第24話「N・H・Kにようこそ!」

 最後のオチがよくわかんない。
 最初小説版を読んで思ったのが、結局恋愛に落とし込んで安直だなぁというもの。ひきこもりという新奇な題材を扱うにしては凡庸な結論だなぁと感じたものです。人質云々の結末だったかまでは覚えていないのですが、岬ちゃんが自殺しに行くという結末を知っていただけに、佐藤君のひきこもりをどうにかしたいと近づいたのは、実は佐藤君という他人を救いたいというのが本質ではなく、自分を救ってもらいたいが為という目的がわかっていたからなのです。そしてその構造はアニメ版(漫画版でもか?)でも踏襲されていましたと。まぁ岬ちゃん@牧野の演技にケチをつけようかという勢いだったのはそういうこともありまして、演出上必要なことだとはわかってはいるのですが、どうにも視聴者を惹きつけんが為の媚び演技が気になって仕方がありませんでした。でもかわいいから許す!という次元ではありましたが。まず以上をお断りしておきます。
 今話に限って言えば、佐藤君飛び降りの前後で私の評価が違ってます。前はどんくさいということに尽きるのですが、むしろ後のほうが胸には迫った。ただなんとなくあっさり気味ではあった。佐藤君と岬ちゃんの物語でいえば、クライマックスそのものなので、スタッフが狙ってあっさりさせたのか、それとももっと感動させるつもりなのに力が足りなかったか、いや十分感動できる描写なのだが私の感受性が足らないのか判断がつかない。冒頭にオチがわからないと書いたが、岬ちゃんと佐藤君の本人たちはいっぱいいっぱいだが穏やかな日々、つまり終わりなき日常はまだまだ続くということであればなるほどとも思う。ひきこもり脱出に必要な要素を示唆しながらも、別に結論付ける意志もないということであれば十分ではある。脱出に岬ちゃんが必要ということになったら大変だし、ひきこもりの数だけ岬ちゃんがいるわけでも、いやそもそも岬ちゃんみたいに都合の良い女の子なんているはずもないだろうし。
 全体を見てみると、評価するポイントとしては小説版に比べて注目すべきエピソードが多いので、以前述べたようにオムニバスとしては良く出来ていると思った。先輩(&自殺ツアーの面々)*1、委員長*2、そして山崎*3という精神的に問題があるとされている*4人を焦点に当てた手法はなかなかだと思う。1クールで佐藤君と岬ちゃんだけの物語にしてしまっては話的に物足りないと思ったに違いない。それぞれの話が割と本編にも関連しているのではないか?と述べたのは前話の通り。ただ、今回の描写の物足りなさも手伝って、佐藤君と岬ちゃんの物語に焦点を絞ればパンチが弱かったと感じる。ちゃんと伏線は張られていたけど、どうにもとってつけたような感じが抜けなかった。自分的には山崎との別れが胸にきたので、まだまだ古い価値観に支配されているんだろうな。
 そういうわけで、ヘンな話だがスタッフの思いをしっかり受け取れなかったからこそ、いいかえればあまり肩肘張らないで視聴できたからこそよかったという結論になってしまいました。ひきこもりという現実を過剰に意識してしまったらかえってそこから抜けられないっていうことにも重なるんだろうけど。実際には女の子にもてるはずもないのに、もてるかもというファンタジーをどこかで抱えているような楽天さがむしろ現実に押し潰されずに健全に生き続けていくことが出来るコツなのかもしれんということで。夢も希望もない現実が未来永劫続いていくとなったらそりゃひきこもりたくもなりますわな。でも自分は最近欲を持たないほうが気楽に生きてゆけるのじゃないかとも思ったりしております。ありもしない幸福を追い求めるからこそ罪深いのであって、そもそも生きるために感動を必要とする社会こそが歪んでいるのかもと。楽しいことが得られないから生きるための糧を求めることに意味を感じないというのは人類の歴史からいうと本末転倒のような気がしてならない。別に他人が生きるための意義をどのように定義するのかどうでもいいことだが、昔の人間はそんなに分をわきまえないような幸せを求めて生命活動を営んできたわけでもないだろうと。楽しいことは結構なことだが、楽しいことが得られないからといってその生き方に意義がないかのような論は余計なお世話というものなんじゃ?。人の欲望を掻き立てて糧を横取りしようというのは商業主義の悪いところだと思うんだが。人の欲は際限がないので、人より幸せになろうと思ったらその分だけリソースを余計に消費したり人を蹴落とさないと。
 まぁ作品の出来としてはおもろ+の価値はあるんじゃないかと思う。オタク描写に引く一般人もいることであろうが、オタクでかつひきこもりのお子さんを持つ親御さんがなんらかのきっかけを掴みたくて視聴するぶんには、むしろお勧めしてもいいぐらいではないかと。そうでない一般人にはとても勧められないんですけどね。
 音響の塩屋翼の名前が気になって仕方がない。80年代ぐらいの主役級の声優さんだよね?。キャプ翼とか星矢あたりの。(キーワードを辿ったらどうも違うみたい。何をどう勘違いしたものやら)エンドロールでひきこもり星人の声アテもやっていたような気がしますが。監督の名前がやけに強調されていたのも気になった。妖奇士もそうですが。OPやEDも良かったよ。

*1:メンヘル

*2:マルチ商法その他

*3:オタク

*4:というよりは社会が複雑化したことによる現代病理とでもいったほうが適切か?。