とりあえずハイマートロス今後について。

 われわれは、精神上の故郷を失ったおかげで、人としての生き方すら忘れてしまったのでは?というものですが、じゃぁどうすればいいのかというと「古き良き故郷を取り戻すべき」とは決してならないのがもどかしい。この豊かな物質文明を捨てて生きていけるのか、社会は回っていくのか?という点もあるし、なにより緊張化する国際関係から目をそむけてハイテクを捨て去るわけにも行かない。*1
 今のところ予想される選択肢は二つ思いつく。昔存在した農村共同体に代わる新しい共同体を試行錯誤しながら作り出していくこと。もう一つは近代市民の育成を行うこと。排他的にどちらかだけを選ばなければならないということもないのだが、実際日本人にあっている(というか受け入れられやすい)のは共同体の育成の方向なんだろうなと思う。いわば近代市民であることが必須であるはずの都市での規範意識の低下を見てみれば、答えはわかりそうではある。これから地方の時代だというわけはないが、いわゆる都市近郊のベッドタウンでは高齢化が進み、活気が失われていると聞く。そういう地域に外国人労働者を入れてうまくいっているという話も聞かないし、むしろ入れて治安がより悪くなっているという噂もちらほら聞こえてくる。地方では退職後の団塊を呼び寄せるべく情宣活動をしているが、年金生活者は基本的には生産をせず、消費する金づるとしても結局金は国から与えられるものであるから、公共事業のばら撒きと構造は大して変わらない。まぁ姥捨て山が増えておしまいという気がしてならないのだが、そこらへんわかっているんだろうか。とにかく中国・インドの莫大な人口の勢いによる抬頭により、日本のポジションは今後益々低下せざるを得ず、かといって教育も中国・インドに敵わなくなってきているので、ハイテクを維持するためのエネルギー確保に苦労しつづけていくと思う。たぶん政府は成長経済を目指すのであろうが、貨幣価値を基準にした額面上の成長は意味がなくなっていくんじゃなかろうか。たぶんインフレにしてかりそめの成長を見せてくるんだとは思いますが。まぁいざなぎ景気を超える云々が市井の感覚だとウソっぱちなのと同様、今後政府が発表する成長は信用できないと思っておいたほうが良い。
 で、結局日本全体として目指さなければならないのが、少ない資源の有効な利用方法なんだと思う。幸いなことに昔から日本は資源が無く狭い国土で、土地ですらやりくりしてただけに強い分野ではあると思う。拘束力が疑われる環境問題の国際間での取り決めは眉唾だとしても、自家用車での燃費のよさの追求とか、節約に関してのチューニングは得意分野だと思う。最近は欧州での取り組みのほうが本格的なので、もう追い抜かれているのかもしれないが。少子化の推進も今後続けて行われる必要があると思う。少子化対策でなく、少子化の方向で。民間のアンケートで子供を作らせるために国は補助金を交付すべきという結果が発表されているが、補助金を出したところで、親の民度を下げるだけになってしまう(ヒント スウェーデン)ので、百害あって一利なしだろう。教育問題で言うと学級崩壊にしたって金を払って環境を整えている私立はほとんど聞かないが、親が給食費を払わないことで問題になっている公立で圧倒的に多い、どう考えても問題を引き起こしているのは子供の教育に低意欲で無責任*2な保護者の問題が大きい。そして子供の教育に責任がもてないから子供を産まない層ではなくて、後先考えずに子供を作って公共機関に丸投げしている層の増加というのが今後10〜20年で問題になってくると思う。そういった層への教育から考えると正直国家運営は大変だとは思う。金にしてもモノにしても流通する量が減るんだとすれば、それをどう社会で多くの人間の間で循環させるかを考えると、これからの国家経営は今までのように欲望解放系ではだめだと思う。
 新たな共同体をつくるといっても、困難はつきまとう。農村共同体の役割を擬似的に受け持っていた年功序列制度華やかなりし頃の企業も一部を除いて崩壊しているし、そもそもどんな共同体なら帰属しても良いのか?その具体的な共同体をもうわれわれは想像できなくなってきているんじゃなかろうか。藤原直哉のインターネット放送局でのロハスを憧れたりもするんだが、やっぱ個人と個人の結びつきがイメージできないんだよな。政府も失われた共同体作りということで特区の奨励*3をしたり、道州制を考えたりしているんだろうが、メッセージが伝わってこない。軍事では物量が多いほうが有利なのに無資源国であるから限界があって、アメリカの保護を離れた展開のことを考えて軍備の公言をしたいんだろうが、こっそりとやっていることからすると後々問題になりそう。少ない資源でやりくりするためには贅沢しない国民の育成が必要なんだが、教育政策の失敗続きで回復がかなり遅れそう。そしてわがまゝ世代の団塊をなだめるために若者層から収奪してばらまきゃなんないだろうし、大変だろうな。政府がやろうとしている大枠は理解できるんだが、実際に行われているのは権力層の利権争いなのがもどかしい。本当なら自民党が都市型政党になる前にやっとかなくてはならなかったと思うんだが、そしてそれは田中角栄ごろには想定されていたと思うんだが、自民党が政権維持のために都市型政党になってしまい、しかも都市部の住民に振り回されて余計事態を悪化させているのを見るにつけ、バブルのときの理性喪失は思ったより根が深いなと思ってとりあえず愚痴は終わる。

*1:憲法9条論議は難しいところだろうと思う。個人的には日本は軍備すると公式に声明を発表してもいいと思ってはいるが、先の大戦の反省が国家としてできていないこと、政治自体が無責任状態であるので、軍を持つ資格はないと冷静に思うが、ここは話がずれるので置いておく。しかし、軍事の傘をアメリカに頼り、それで浮いた国力を産業育成にまわすことが出来た「軍事的鎖国」の時代は終わったといわざるを得ないんではなかろうか。そこまでして育成してきた産業も近視眼的な経営層によってずたずた。幸せな江戸時代は終わりを告げ、混乱の明治への移行時期に差し掛かっているように思われてならない。

*2:相関が無いとは言い切れないが、決して低所得・低学歴が条件では無い。

*3:もう乱発といっていいよね?。