BLACK CAT 第23話「気ままな猫」

 猫なだけに化けたか?。
 原作はさんざんだったとの噂なんですが、アニメ版と比べてグダグダだったの?。うーん、見切った人も多いだろうし、この作品に期待していなかった人は多そうなんで誠に申し訳ないのですが、自分的には手を広げて視聴対象にして良かったという結果になりました。前回の次回予告で述べたとおり、多分この作品の主題は自由と仲間だったと思うのですが、まぁ仲間についてはわざわざ述べるまでもないでしょう。あんまり共同体の維持に関して仲間(というよりは構成員なんでしょうが)のあるべき姿というよりは、生活を楽しむ、非常時に助け合うといった意味合いのほうが強調されていたような気がしますが、この作品の場合そういう視点に絞ったほうがわかりやすいと思われます。
 自由についても、「自分がやりたいように生きればよい」という発言があったとしても、決して登場人物が周囲の迷惑も顧みず自分の欲望のおもむくまゝ振る舞う姿を描写していない*1、かといって原理主義的にこうあらねばならないという描写ではなく、ありふれた生活を大切に生きる姿を淡々と描いているのが自分的に共感できるのです。そしてそれに対置しているエデンが、判断力を失ったたくさんの人々のエネルギーを利用しているというのがこれまた現代に通じるところ大なわけで。エデンの降らせる雨が「ハイテク仕様でしかも黄金色」というのがまた毒々しい。物語がはじまった当初はキャラ弄りやメロドラマ的展開で視聴者の感情をもてあそび、自由という重苦しいテーマは作品の装飾品程度ではないか?と訝しがりながら継続してまいったのですが、やられた。たぶんスタッフ的には自由なり仲間なりの主題を根本に据えながらも、決してそのことを重苦しく視聴者につきつけることなく、どうやら丁寧なストーリー進行を行っていたらしいことがうかがえました。
 今回はどうも後日譚が唐突に挿入されていた部分があって混乱した部分があったり、作画が追いついていなかったりした部分がありましたが、自分的には流せてしまいました。作画を気にする人はDVDを買えば?ということでしょうし。主幹級のキャラの描写が少ないとも思いますが、むしろトレイン・スヴェンの本流を際立たせる&主題からのブレを最小限に抑えるという意味ではすごくバランスが取れていると思います。スタッフが何を伝えたくてこういう物語にしているのかという部分と、状況進行的な物語の二本線を同時に考えつつ視聴できましたよ。まぁ私自身の考察力の低さとこの作品のレベルが合っていただけなのかも知れませんが…。
 というわけで放映の終盤に差し掛かるにつれて、自分的にはどんどん物語が面白くなっていった作品でした。スタッフの皆さんお疲れ様でした。

*1:むしろ欲望に忠実であったにせよなかったにせよ、自分の行動が引き起こしてしまったことにたいして深く反省する描写が結構ありました。