エクハ#6

 剣道娘と野球の試合の顛末と、新メンバー顔出しの話。五人そろう次回が正式な折り返し地点なんだろうけど、ほぼ作品の方向性が見えてきたような感じで、これがなんとも微妙というか絶妙というか、正直自分も読めているのか自信はないんだけども、見かけ上の明るい雰囲気とは裏腹に、これおそらくディストピアとして描いてるでしょという予感がする。現実のアイドルが特にそうだし、声優なんかももうそういう感じに仕上がってきてると思うんだけども、今回の剣道娘のように小さいころからいろんな習い事をしてきて、アイドルなんかはピアノや歌のレッスン、バレエだとかそのへんアイドルに必要な習い事は子供が小さいころから親がさせてるもんだし、歌一つにしたって、もちろんそれ単体で極めてる人には敵わないんだろうけど、習ってることは大抵平均の人間よりはよくできるようになっている。それを組み合わせてアイドルを目指すわけだが、それだけ準備を念入りにしても、アイドルになりたい人間は山ほどいるわけで、すでに過当競争の段階に入ってる。そのなかで生き残るためには自分のアイデンティティを他人に認めてもらわなくてはならないワケで、アイドルになれば事務所がそのへん注力してくれるんだろうが、採用されるまではもう自己プロデュースが必須になっており、それを二十にもならぬ少年少女に求められるって、かなりキツい世界じゃね?という話。で、最近はちょっと前の意識高い系が流行ってきたころから、一般人にも求められるようになっていて、小さいころから親が子供に文化資本を積み上げることができる層はともかく、そうでない貧乏人は、ではその自己プロデュースを小さいころから自覚してやれるか?と言われたら、それも無理な話で、でもそれができなきゃ公立中高の、もう私立中高一貫に上澄みを掬われて残りカスしかいない動物園化した学校に通わねばならず、行き着く先は非正規雇用、低賃金で子供を持つことはおろか、結婚すら難しいという世の中になってきてる。で、底辺化した彼ら彼女らは、アイデンティティを確立して生き残ることができたその結果として競争社会の勝者として君臨してるアイドルを見て癒されたり夢を見せられたりしてるわけだが、もうほんっとにそれのどこがユートピアなんだという話。この作品のキャラたちが既存のスポーツを網羅する勢いでいろんな競技に取り組まなければならないし、結局これって福本伸行カイジだのアカギだのといった、生き残るために次々と過酷な試練に取り組まされる構図と何が違うのかって話。この作品の場合、主人公はアイドルになりたがってるし、他のメインキャラも自分の専門スポーツはともかく、専門外のスポーツにも前向きに取り組んではいるが、それって本当にやりたくてやってんの?って感じ。自分がやりたいことをやってるという側面があるのは確かだが、でも彼女たちが取り組まされてるいろんな要素からするともうそれはほんの一部分で、やってることの大半は他人かどうか知らんが、とにかく外部から求められるからそれをこなしてるわけで、例えば専門外のスポーツは苦手だからやりたくないだとかいってむずかるシーンが一つもない。
 ただ、作品としては少女たちが何に対しても前向きに取り組む姿勢ってのを見せなくちゃならないから、アイロニーとしてのこの世界観は実はディストピアなんですよという主張は欠片も今の所見せてないのだけども、メインキャラはスターダムに昇り詰める幸せな一例でしかないわけで、彼女たちの裏には負けてまた次の機会を狙うしかないとか、負けて夢を諦めた連中がごまんといるハズで、当然にしてシナリオライターもそういう構造なのは百も承知なので、そのへんなにやら不穏な作品だよなーとは思ってるとかそんなの。
 あ、そうそう、アイドルになって有名になれば、今休止状態の道場の宣伝になるという部分は素直に感心しましたです…ハイ。

リコリコ#7

 主人公にとって懸案事項であった、彼女にとってのあしながおじさんが判明する話。なんかネットでリコリコの評判を見て、割と批判的意見がまっとうなのでそれが気になってしまうようになった。今回も主人公の直属の上司の後を尾けて判明とか、まぁガバガバなシナリオにしないと、秘密が固く守られる状態を破れないんでアレだが、もうなんとも。結局今回の話も、今までに伏線というか、過去話とか、過去話でなくても主人公の想いが深いという描写をほとんどしてこなかったから、そこも浅いし広がりもない。結局シチュエーションありきで上っ面を撫でるだけなので、視聴者の方できっと深い事情があったんだろうという善意の補完をしないとちょっと見てらんないって感じ。
 うーん、よーわからん。おそらくオリジナルアニメでこれだけ動画とかにコストをかけてると、キャラの売込みにまで手が回ってないのかなという気もするし、キャラは使い捨てにしてでもシナリオを奥深いものにしようという意気込みも感じない。たとえばなのはとか、あの時の流行はツンデレで、職場のお局様とか自分のことしか考えてない女社員をああいう風にでも見ないと現実の職場でやってけないみたいなところがあったのだが、ブラック労働の現実とも相俟って、キツい職場で厳しい状態に寄り添ってくれる存在になったからこそょぅι゛ょなのに臆面もなく支持が集まったのであろうし、そのへん都築真紀がエクハではもうそういうなにか視聴者に救いを与えるという要素をかなぐり捨ててきたのは、彼の今までの経緯に思いを巡らせるとなるほどなぁとも思うんだけども、こう、なんとも主人公格のメインキャラ二人が超人で、まだ黒髪ロングの方は投射できる余地があるけど、金髪ボブのほうはもう彼女が女であろうと男であろうと同一視を一切拒絶するようなキャラ造形で、しかも救いの女神という要素も今のところ見えないから、この作品のどこに感情移入してよいかわかんないといったところ。任務は自分の高い能力を実感できるから喜んでやるよー。悪人も家族がいるだろうし殺しちゃうと後味が悪いから殺さないよーでも悪人に殺された庶民の苦しみから目を逸らすよーではねぇ。