86#14

 メインキャラ達というか主人公実戦投入の巻。死亡フラグからの即堕ち二コマは、まぁそうだろうなという感じだったのだが、いちおう巻き戻しして一旦見返してしまった。生存率が高いのは駆逐艦雪風も死神呼ばわりされてたからそんなもんかねぇという気がしないでもないが、基本運が大きく絡むのと、やはり生き残る努力をしてるかどうかは結構デカい感じ。雪風もそうなんだが、戦記モノなんかを読むと、戦闘機パイロットでも生還率に差があるのは、そもそもが警戒を怠らないみたいな作業を挟み込んでるかどうかだったりして、この作品でもエースパイロットが敵を撃破するスキルが高いみたいな描写をしてどうしても誤解を招きたいようにしか思えないのだが、敵の撃破より自分がやられない努力をしたうえでの行動が大きく生存率を高めるというのから目を背けたいのかなとか思ってしまう。いちおう今回衝突を避ける判断をした…というところにいろいろ込められてはいると思うんだが、あの時にやはり見栄えがするからと高機動な描写をしてしまうのはまぁなんだかなぁといった感じ。
 しかしまぁここでも差別構造を描くのはそれはそれでエグい感じで、なるほど合衆国軍における日系人部隊みたいな立ち位置なんかなという気がしないでもないが、前線に出るんじゃなくて後ろにすっこんでろというのはある種のやさしさなんだろうか。自然に考えると国防を担うのは生粋の連邦人であって外様に大きな顔をされたくないというメンツのようにも見えてしまうが。

テスラノート#3

 主人公がアジトに住み始める話。前回はこのアニメがダメな改変をやってることで視聴意欲が減退しはしたのだが、むしろ原作をチェックして立ち直ってはいたのだが、なかなか順調に上向きかと言われると微妙な感じ。さすがに今回の話はインターミッションであってメインではなかろうが、そうだとしても結局のところ大きな構造としては終わりなき日常を生きるというものになっているような気がして、それがテスラの遺産を集めるというミッションで、その日常が退屈しないように彩るというものになってるんじゃないかという感じ。今回本部らしきところで報告会があったのだが、別に不手際を咎めるというほどでもなく、これなんだろ?、お仕置きがなくヌルいだけの、ヤッターマンシリーズのボスと三バカトリオのかけあいじゃんと思ってしまった。
 戦争を何とかすべくニューヨークに派遣したというのもお花畑でスゴイ感じ。1943年といえば、前年ミッドウェーで負け、南太平洋海戦で負け、ガ島でボロ負けして既に挽回の機会は失われてたから、もう何ともしがたい段階だったはず。で、原作者がこの日時を設定したからにはそういうことを把握してないはずがないのだから滑稽なのを承知でこうしたはず。
 しかし、ニコラ・テスラが天才だったというのは自分も否定しないし、作者にそれなりの敬意があるのかもしれんが、正直その意図がよくわからんといったところ。オカルトっぽい扱いなので彼の名を出すことによって科学技術に対する興味を引き出そうってのでもなさそうだし、あくまでロストテクノロジーブラックボックスとして扱って、その使い方には気を付けましょう(悪いことには使うなという)感じなので、テクノロジーやその倫理観がメインというよりは、やはり人間ドラマのほうに重きが置かれてるんだろうなという感じ。で、そのドラマ部分もどーなの?と言われたら、現段階ではやはり三文芝居のレベルなのかなというものだが、もしかすると終盤でひっくり返すような展開でもあるんだろうか…なさそうに思うが…みたいな。

暗殺貴族#1・2

 オッサンの異世界転生モノらしい。回復術士の続編をやればいいのに…と思っていたから同作者の別作品を立て続けにアニメ化することの真意を図りかねていたのだが、前作とを比較してなるほどこれがこの作者の作風かとちょっと思い至った点もあってそこそこ面白いとは感じた。リゼロのループものが、就職活動中のお祈りの連続の記号なのだとすれば、回復術士も暗殺者も社会的役割を果たしていたのに、社会にポイ捨てされてその無念を晴らすという構造になっているように思えたので、これはむしろ40代以上の視聴者向けと考えた方が腑に落ちる感じがする。今、大企業が進んで40代以上を切り捨ててきていて、まぁ某KO大学出身の某レッドダイアモンドを経由して某鳥井酒造の社長だか重役だかをやってる恥知らずの発言もさることながら、別に電機大手ではもう何年も前から追い出し部屋なんてもので中高年を切り捨てていたわけだ。アレでもう酷いと思ったのが、お前らスキルを磨いてこなかったから捨てられて困るんだよという発言で、社内政治で人の足を引っ張ることで出世して、現に人を切り捨ててる経営層にそういうならともかく、今切り捨てられてる中高年の大半が、会社の勤務内容を無視して自分のスキルを磨く余裕なんてあったのか、会社の方針が世に合ってないから新しい方法を模索すべきと提案してきた中高年がその大企業で今までどんな目に合わされてきたのか知ってるのかねぇと思ったらとてもそんなことは言えないと思うのだが、まぁつくづく勝ち組とやらの認知バイアスが歪んでるなぁ根本的にと思わざるを得ないわけなのだが、そうやって切り捨てられてきた中高年に対する鎮魂歌というか、弔いの作品なんだろうなという気はした。回復術士にエロ描写が込められているのも、結局はアレ、お子ちゃま向けの作品ではないんですよという主張だろうし、KKOだと女子供に罵られている現状、彼等こそが日が当たるべき存在だという風に思える。
 今回なるほどそういう社会構図を示してるんだろうなと思われるのが転生前のエピソードで、主人公とその助手という形で大人側と若者側の対比を示していたと思う。暗殺者という稼業に恥じるものは無かったのかという若者側の無神経な問いかけという形であろうし、そんなの常識的に考えたらわかりそうなもんだが、例えば会社側に汚れ仕事を業務命令として課されてしまったら、それは倫理に反するからと断ることができたと思ってるアンタみたいな怒りのようなものは伝わってくるし、実際若者がIT業界でブイブイ言わせてるその仕事は、結局のところは失業者を増やすことなのであって、自分も人殺しに加担してる(助手もまた暗殺者の手伝いをやってるにもかかわらず、自分のことは棚に上げてやれ自分は優秀だとか主張して無神経な言葉を相手に浴びせてる)のに、自覚がないその態度など、割と視聴してればなんとなく意図は伝わるとかそんな感じ。まぁ全体的に説明セリフが多くて、なんだかなぁと思わなくもないのだが、説明していることにあまり過不足がなく社会を背負ってきた一人として甘ちゃん(要するに説明されないと分らないようなバカな視聴者相手)に有無を言わせないで畳みかけるようなその態度は、まぁなるほどねと感じるだけのものはあった。
 #2以降は、あんまり幼少時からの生い立ちなんて期待してなかったので、個人的にはもうちょっと話を進めてほしかったと思わなくもないが、アレは結局暗殺される直前の暗殺者の願いであった安らかな生活を報酬として貰ったという形なのだろうし、そのへんはあまり急ぐのもいかんのかもと思い直した次第。
 なんかシルバー民主主義と言われて、いかにも若者が老人のために苦労させられてるという言説がまかり通っているが、氷河期世代を無視してそんなこと言われても…しかも今の若者層、氷河期世代より意志決定権だの実際の生活環境だとか恵まれすぎてるぐらいだろと思っていたから、なるほど人口のボリュームゾーンとして大きめのこの層がターゲットにされるのも時間の問題だったのかもねという感じ。回復術士を視聴してた頃はあまり世代のことを意識せず、今流行の用語でいうエッセンシャルワーカーに対する待遇の悪さあたりがテーマにあったのかぐらいにしか認識してなかったから、ハイハイ、なるほど同作者の別作品を立て続けにアニメ化する意味というのはもしかしてこのへんにあるのかもなという。