ラスダン#12

 悪役(とされるキャラ達)の思惑が明かされて俺たちの戦いはまだまだ続くEND。構成要素がいちいち今ドキ流行りのものの詰め合わせだったんだが、中盤以降なんのかんのいって楽しんでた。ヒキは終わらない平凡な日常を生きるって感じだし、本当なら各キャラの事情もやろうと思えばいくらでも深刻に掘り下げもできるんだろうが、あくまでラノベという形式に合わせて抑制気味にしてる。
 この作品の転倒してるところはなんといっても主人公がロイド以外のメインキャラほぼ全員といったところ。この最終回だけ見ても明らかなんだが、いくらロイドが窮地に陥っても視聴者にとってはどうせ彼はなんとかしてしまうんでしょとわかっているわけで、だから彼がどんな志を持っていようと葛藤らしきものを表明していても視聴者の心には全然刺さらない。ではどのキャラに視聴者の分身として思いを仮託するかといえば、やはりそれはロイド以外のキャラなのであって、彼ら彼女らはコンロン村出身でないが故の力無き人たちであり、力がないならないなりに精一杯発揮しようとしているわけで、また力がないからこそ悩みもするまさに彼らこそが人間として描かれている。ロイド以外のメインキャラだってあの世界の一般人からするとそれなりに能力があるし、あるものは貴族でもあるんだけど、そこはあくまでロイドとの対比なので。
 まぁ結局のところロイド=主人公という図式をいかに早く放逐できるかがこの作品を楽しめるかどうかの分岐点だろう。時々現れる危機もロイドが簡単に解決するから事態が深刻にならないし、なるほどラノベであることを逆手に取った、ひねくれたというか巧緻に長けたというか、ジャンルとしてはそう珍しいものではないけど、ジャパニメーションとしてはちょっと毛色の違う作品だった。

ウマ娘2#12

 今度はメジロマックイーンがというお話。うーん、なんやろ?。やっぱ史実や競馬とこの筋立ての食い合わせが悪い感じ。他の対人スポーツだとライバル同士が同じ大会に出てるのがフツーだが、競馬はそうではないわけで、本当に同じ舞台で競い合いたいならそりゃ調整不足なだけでしょという結論にならざるを得ないし、実際の競走馬のケガとか人知の及ぶ範囲でもないしで、そもそもが競走馬にこのドラマのような対抗意識も仲間意識もないわけで。まぁ今回の話とかそれなりに気合を入れてるんだろうけど、ちゃんとこの筋立てが輝くように設定を最初っから整えなさいよというぐらい。
 イケイケドンドンの話ならそこそこ粗があっても勢いで乗り越えられるけど、悲劇はちょっと間違えるとストーリーが崩壊してしまうので、ちょっと荷が重かったのかなという気はする。前回も述べた通り脚本陣は変わってないから余計な口出しをしてくるのがいるのかもしれずでそのへん何が原因なのか、もしかしてそうではなく脚本陣の力不足なのかもしれないが、次回ラストで雰囲気を変えることぐらいはできるだろうけど、通してみたときにこれはこれでアリになるのかはちょっと疑問レベルと思ってしまう。

裏ピク#12

 無事米軍を救出でき、裏世界への手軽なゲートも見つけて静かにEND。救出も、前回登場したボスみたいなのを何の工夫もなく力押しして解決してたし、どういう理屈で米軍が迷い込んだのか詳しく説明することもなかったし、結局全体的に見ても裏世界とはなにかという示唆もあまりなかった感じ。小桜が認知科学を研究してるってことからその切り口を見せてくれるのかなと思っていたのだけども、その片鱗もなかった。まあ幽霊の正体見たり枯れ尾花なわけで、仕掛けを明かすと陳腐になるわけでそんなことするはずないと言えばそう。そもそもこの作品のタイトルは「裏」世界であって、「異」世界ではないのだから、当然「表」に当たる世界*1があって、同じものを別の方向から眺めると違って見えるというだけであって、なにかこことは違う別世界のことを裏世界というはずはない。都市伝説にしてみても、自分が子供のころに流行した口裂け女を思い出すが、あれも現代人が社会のひずみから生み出した妄想のようなもので、通常過ごしてる日常とは何の関係もないところから生まれてくるはずもない。米軍を救出しに行くというのも、日本人が生み出した妄想のようなものに、異なる文化圏のアメリカ人が巻き込まれるのは酷なことだろうというわけだとすると納得がいく。しかしまぁあんまりそういう風に言ってしまうと野暮でしかないが、やはり裏世界は空魚たちが過ごしてる日常の世界の別の側面であって、最近大流行りの異世界でも何でもないというところはそう外したものでもないように思う。
 しかしなんだな、こうやって一通り視聴してもそう特別面白いというものでもなかったような。文化人類学っぽく言ってみれば、たとえば現代人が共同体を失って個人分断化されてしまい、在地の祭りがますます衰退していく一方、では共同体に由来しない祭りを欲して現在ハロウィンという祭りを若者が積極的に取り入れ、日常の鬱憤なり変わらない日常を在来の祭りで発散してたその役割をどこかに求めている証左でもあって、では昔神隠しだとか怪異として認知されていた人間がなにか得体のしれないものに対する畏怖というものが科学技術の発展した現代においても廃れることがなく都市伝説という形で発露していると見ることもできるわけで、そういう時代は変われど人間の本質ってそうなかなか変わるものではないんだけど、でも外形的なものは変わっていくという見方をすれば興味深いテーマの一つではある。そしてそういうテーマを直球で投げても今ドキの若者は興味を持ってくれるわけでもないので、そこに女の子であるとか、ネット由来であるとかという、それなりに若者が食いつきそうな要素をちりばめてちょっと世間に投げてみましたってトコなのかな。
 別にこの作品がダメだとかいうつもりもないんだけど、苛政は虎よりも猛なり、ましてや都市伝説と虎とは比べようもないから、こう日々の糧に事欠く貧乏人にとっては搾取によって政権に殺されようとする方が、ネットロアなんかよりよっぽど怖いかなといった感じ。これがホラーだというつもりもないんだけど、ホラーだのサスペンスなんかを楽しむことができるのはそれだけ経済的余裕があるときなのであって、そういう層ならまだしも、貧乏人にとってはそんなに響かない話なのでは?。都市伝説より、どんだけ勉強しても甘い汁が吸える正規雇用は上級国民が占有してる状況とか、達成不可能な営業目標を掲げたりパワハラかましてくる管理職のほうがよっぽど恐いデショってなもんで。この作品の裏世界の化け物が仮にそういうもののメタファーだとしても、あまりにも抽象的過ぎてそういう風に感じられないし、おそらくそういうものでもないだろうからあまりフックしないんじゃないかな。ただ、逆に言うとつらい現状を見続けさせられるのもそれはそれでキツいので、そこからの逃避として絵空事が支持されるってこともあるのでなんとも。

*1:おそらく登場人物がいる日常の世界