キンスレ#20

 ついに聖剣の封印を解いてもらう段階に。そしてマルドゥークは魔王アングムンドの召喚を行うのだがそこに現れたのは…の巻。
 うーん、物語の構造がオーソドックスなので、格別面白いわけでもないハズなのだが、なんか今回は結構ツボにはまってしまった。クレオは相変わらずかと思いきや、割とおとなしくなっていて、今回登場のパベルの話に出てきた、かつてのエルフの長ローレインが、こう自分の思い通りにならないとヒステリー起こしてるとか、なんか封印を解いてもらってた時とは雰囲気が違う。あと、カイル王の嫁を百年の眠りにつける…という仕立てが、こう中世西欧風ファンタジーでありながら、コールドスリープという近未来SF仕立て。
 あと、この作品、あくまでおとぎ話風であって、あんまり現代日本の社会問題とのリンクが感じられないなと思っていたのだが、100年前の惨事とか、カイル王が身を挺して魔王を封印したとか、もしかして太平洋戦争だの、特攻隊だのが念頭にあるんだろうかとか。メタファーとするにはあまりに重なりの部分が少ないので、それそのものを表しているとは思えないんだけど、では全然関係ないか?と言われるとそれも個人的には自信がないという。
 結局マルドゥークが召喚したのは魔王かどうかはまだよくわかんないんだけど、現代日本でいうと、こう作品中の100年前の大乱は、仮に太平洋戦争だとしても、果たして魔族は連合軍なのか?と考えて、なんかひらめくものがあった。今作品中に現れてる魔族は決してかつて日本と戦った連合軍の末裔であるとは考えにくいので、結局これ魔族は、負けるとわかっているのに日本を滅亡戦争に追いやった戦前の戦争指導者たちのことだと考えると、100年という数字も含めて割とすんなり当てはまる。要するに戦前日本の特権階級と、戦争に乗り気ではなかった庶民という構図。開戦当初の景気の良かったときはイケイケドンドンだったが、敗戦濃厚になるとインパール作戦みたく、むしろペーペーの兵士はメンツばかり重んじる軍上層部に殺されてるとかそんなの。実際敵軍との交戦より餓死者が多かったりするのだから笑えない一致。で、敗戦して日本の庶民は国民の敵戦争指導者に打ち勝ったわけではなく、平和憲法その他*1で彼らを縛った、つまり封印することしかできなかったというワケ。で、プチ魔王とでもいうべき岸信介という亡霊がアベという形で復活して日本国民が苦しめられてるってのが、こう魔族が猛威をふるってる状態と奇妙に相似形。だが、別に当てつけのように暗喩という形にはしてなくって、ぼんやり似たような感じにしてあるだけなのかなという気はする。
 しかし、ワロタのは、今、時の人である失言癖のあの人の、女は話が長いというアレだが、なんつーか、話の長さというのではないけど、カイル王パーティーのローレインのあり方、カーセルパーティークレオのあり方とか見てると、あーみたいな。個人的な話をさせてもらうと、職場の女性というのはむしろカーセルパーティーのように、フレイのようなあまり口やかましくない、むしろ男と同様フツーに働いてる人が大半で、口やかましい女は少数で大抵同僚の足を引っ張るようなことをしてた。で、クレオのように役に立ったりムードメーカー的な役割をしてくれてればよいのだが、自分の観測範囲内ではそういう人は見なかったな…。では男に目を向けてみるとどうかというと、大多数のフツーの人はともかく、困ったチャンは大抵管理職も平もパワハラ気質、平のほうは管理職ほど強権的ではないにしろ…という感じ。で、男の困ったチャンは大抵孤立してるか、同部署で囲い込まれてるから全体を俯瞰するとあまり目立たないんだけど、女のほうはいわば“島”として目立っちゃうんだよね。だから、現実問題それほど数が多くなくてもその目立つ分だけ女を代表してしまうというか、話が長いとかそういう具体的なものが別の要素になっても、だいたいそれを男が代表してしまうと、その困ったチャンは個人が代名詞になってしまうのを、女になると、その人個人というより女とはそういうものみたいな認知のされ方になってしまうワケ。まぁそのへんこういうドラマだと男の困ったチャンは最近ではゲストキャラになることが多く、女のほうは、この作品のようにレギュラーキャラになってしまうことが多いという感じはする。ただ、さすがにあの失言大王のことを念頭に置いてストーリー作りをされたわけではないとは断言のレベルでいえてしまうので、そのへん事実は小説より奇なりみたいな可笑しさを今回感じてしまったという。

*1:もしかしてこれが聖剣のメタファー?とか