俺ガイル#12

 大勢は決したが、いちおう将来の変化の含みも微レ存で残して爽やかにEND。うーん、前期までのシリーズはかなり好意的に受け取ってたので、今シリーズで個人的にはがらっと印象が変わったのに今だに戸惑ってる感じ。なんとなれば、前シリーズまではなんのかんのうだつの上がらない比企谷の視点で社会批判してたような気がしてたから。ただ、前期からかなり時間が経ってるし、その間に自分の視聴態度も変化してるだろうし、なにより影響があったのはガリナンを間に挟んだこと。渡航ってこういう芸風だったんだ…というのが念頭にあると、どうやったとしてもこの作品も同じような色眼鏡で見ざるを得ない。
 で、自分が今期中盤まで視聴して気がついたのは、これって平安下級貴族の嫁取り出世物語(にしちゃったん)だなということ。平塚というメンターに機会を与えられ、才能を下級貴族の娘ガハマに見いだされたものの、最初の交通事故のトラブルで切り札を手に入れてた主人公が、上流貴族の娘雪ノ下の心を射止めて将来の出世を約束されるという、こう終わってみたら、そりゃ間違ってるをタイトルにつけるだけのことはあるって感じ。だって、最初っからラブコメではなかったんだもの。ネットのインタビュー記事で原作者が先を決めずに出たとこ勝負でライティングしてたとあったが、そこはそこ、ガリナンの作風を考えたら、ホントに結末の見通しなんもないところから小説書いてたの?ってな感じ。
 まぁそんなわけで、やはり振り返ってみても、プロム実施のくだりは、もう比企谷がトラブルシュートをしている*1って感じが全然しなくって、もう徹頭徹尾彼が雪ノ下母へ必死に自分を売り込んでる場面しかなかったという印象しかない。だって、プロムが実施されなくても、基本あの学校の生徒は誰も困らないんだもの。自分の実力を示して家業を継ぐことを認めてもらいたくて、その実力がないのにプロム実施に入れ込んで実際に窮地に陥り、それを比企谷が助けるって構造で、今回実施の合同プロムも、雪ノ下が力を尽くして成功したという成果を手土産をもたせるために比企谷が奮闘してたわけで、それで売り込みが成功して雪ノ下母のお眼鏡にかない、食事に誘われるところでENDなんてもうそれ以外のなにがあるの?って感じ。実際に比企谷の仕事を身近で手伝い支えになっていたのはガハマなのであって、彼女の気持ちに気づいているからこそ途中で気持ちを整理して距離を取り、取り返しのつかない事態になる前に振ってしまうわけで、しかも雪ノ下は今の今までぼっちで一貫しており、そりゃ状況を一通り把握したら世間知らずの貴族のお姫様を手玉に取るのは成長した比企谷にとってはワケないでしょってなもん。
 まぁそういうわけで、そういう構造に気がついてしまったら、出来は悪くないしそういう世相素描なのも評価はするんだけど、恋愛ロマン演出がとにかく茶番っぽく感じて仕方がないので、どうにいも物語にのめり込めなかったというか。上記述べたとおり、自分が本作にシンパシーを感じてたのが社会批判の部分だっただけに肩透かしな感じ。いやまぁ愛はすべてを超越するって結論にされてもお花畑だし、これはこれで現実を示してペーソスを誘うのは明らかに純文学に近い立ち位置なんだけど、いざ目のあたりにするとユメもチボーもないなって感じ。

富豪刑事#12

 おぼっちゃんの父親に関しては視聴者に示される真実が二転三転して目が回ったのだが、まぁ民主主義の希望を示すんだったらそんなに悪くはない〆だったかなという感じ。情報公開の顛末も、視聴者に一旦判断を任せるような作りで、ミスリードっぽい要素もあり、天使と悪魔の囁きみたいな構造だったのだが、結論はまさかのデウス・エクス・マキナだったという。その瞬間はやっちゃったという驚きだったが、よくよく考えてみたらこれが一番スマートな処理方法だったかもという気はしてる。とはいえ、アドリウムなるもののおかげで神戸財閥の資本力が支えられてるはずなので、それが失われていなかったエピローグはど~なの?という感じはした。
 全体的な構図はよくできていたとは思うが、個人的には父親の行方や真相を探る後半エピソードは長すぎたという印象。庶民からの搾取によって得た財力は、おぼっちゃん刑事のやり方でちゃんと社会に還元してるって構造がなかなか良くできていて、彼のその頭からネジが飛んじゃったカネの使い方のバリエーションをもっと見たかったという。後半のエピソードはカネ持ちのイエ問題なのであって、古株の刑事が執念を燃やすのも違和感があったし、実際総理大臣までやった人の息子がシャブ中で死んでも警察は不問に付してたでしょというのを考えたら、そこで警察の正義感を振りかざされても正直ドッチラケなわけで、せめてもっと社会に関わりのある形にできなかったもんかという感じはしてる。
 前半部分は面白かったし、かといってそのトラブルシュートを積み重ねて2クールやるだけのカネもなかったんだろうなと考えるとアレだが、その前半の財産を頼りに後半もなんとか勢いで走りきったという印象。前半見たら後半見なくても十分ってほどでもないし、トータルで見たら全然悪くはないのだけども。

*1:社会の不条理を彼がスティグマとして全部背負うって構造