うーん、ゴーンやっぱグダグダやねぇ。

 妖精書の護送の折、派遣した部隊を二分して案の定襲撃されて妖精書を奪われるとか、前に妖精兵器を護送した際、組織のほぼ全勢力使ったのに奪われる経験しときながらなんてバカな連中なんだろと、もうドロテアお仕事する能力ないとしか思えないわけなんだが、まぁそういうツッコみしても仕方がない。ヘンな話、妖精書が奪われる展開を一視聴者である自分が先読みできるんだから、シリーズ構成はわざとやってるわけで、冷静に考えてみても、護送に十分手を尽くしてその結果無事に妖精書が送り届けられました…というお話にするわけにもいかない。ただ、いくら戦後復興の混乱期で、十分なリソースがないから満足な組織運営ができないって設定だとしても、秘密警察のようなかなり特権の与えられている組織があまりにも未熟であるというのは果たして本意なんだろうか?とは思う。やはりそれなりに知力を尽くしたんだけど、どうしても手の回らないところができて綻びにつけこまれてしまうって展開じゃないと、いくら主人公格のキャラが頑張ってても「オマエがバカだから失敗するんだよ」という感想がどうしても浮かんでしまう。昔のバカアニメだと主人公が危機に陥っても、そのことをお見通しだから実は対策が予め考えられていて、次々と困難を排除していくってのもあったが、それについてはむしろ慎重勇者がパロディにしているわけで、しかも物語に説得性があるのはちゃんとその準備の描写をしてるから。まぁ組織として失態続きの展開ではあるが、この作品のターゲット層、就職したての若手サラリーマンあたりだろうから、社会的にもスキルが未熟だろうし、だからこそこの作品のメインキャラも未熟に設定して感情移入しやすくしてるんだろうけど、同じ失敗を繰り返すところはちょっと新人社会人でも視聴して苛つくんじゃなかろうか。


 今回のマーリヤとヴェロニカの禍福逆転も、個人的にはオイオイといったところ。生贄に捧げられるのは恵まれたほうだと言っていてずっこけた。以前旧約聖書カインとアベルのお話について述べたと思うが、あれ、ユダヤ教ではなくてキリスト教の説教では、やはり神様には最上のものを捧げるべきという解釈がされているケド、それ違うから…という話。再度言っておくと、人間、食糧生産において穀物生産が効率的だから、基本的にそれを選択する。モンゴルなんかのように冷え込みが厳しく降水量の少ない土地柄では雑草のような植物しか生えないから、しかたなくその雑草を家畜に食わせて肉に変換してかろうじて食料を得てる。なので、農作物を捧げたカインはもともと豊かな土地を与えられていたのであり、羊を捧げたアベルは非常に貧しい土地を与えられていた。若い羊を捧げたのも、大人の羊は毛も有用だし一頭屠ればたくさんの肉が得られる。が、子羊はそういう生産活動においての寄与度が低く、また肉が柔らかいということは筋肉が発達していないということだから、狼に襲われるときは真っ先に犠牲になり、せっかく育てたのが台無しになるわけだ。だから狼に食われるぐらいなら…ということも考えられる。なので、アベルは別に神様に気に入られようとして子羊を献上したのではなく、厳しい環境では足手まといになりかねんから一番価値の低いものを失礼を承知で神様に押し付けたぐらいの感覚。それを考えたらユダヤの神様、よっぽど民の窮状を察することのできる存在で、子羊を貰ってそれが別にアベルが最上のものを捧げたわけでもないのを知って高評価したというのであれば、よっぽど物分りがよいとすら言える。そして民衆というものは、弱いものに慈しみを示してくれる神様を信じるものである。



 で、よく干魃や飢饉で村人の誰かを生贄に…という話が出てくるが、これも何度も述べた通り、食糧生産に必要な肉体労働に向かない女子供が選ばれたわけであり、それは災害で人が少しでもたくさん生き残るために無駄を究極まで切り詰める行為と不可分ではない。物語ではお姫様だとか村長の娘が選ばれるものもあるが、それも別に聴者の憐れを惹くためのレトリックではなく、やはり生産能力が低く、消費だけは著しいから、やはり無駄を切り詰めることが本意。
 なので、ヴェロニカがムラに幸せをもたらすというのであれば、それは真っ先に犠牲にするべき存在ではないわけで、そのへんどう考えてるのかちょっとわからん。もしかすると、ヴェロニカ、村の生産という観点からして一番の穀潰しであるという事実が明らかになるのかもしれないので、今、これがあかんと結論づけても仕方がないわけではあるが。直接生産に関わらなくても、社交的で調整能力があるということであれば、生産要素を効率的に配分できて、村の潜在生産能力を引き出すわけで、力仕事だけが生産性に関わるわけでもないわけで。


 しかしやっぱり妖精がなんのメタファーかわかんないな。妖精村スーナがどこにでもある村の代表として描かれているのか、それとも宝石やレアメタルなどのような価値ある埋蔵物の限定特産地であって、特異的な恵まれた村なのかもよくわからん。そもそも近代っぽい世界設定ではありながら、サブタイトル表示を見ると、むかしむかしのおとぎ話の形式をとってるわけで、個人的にはかつてどこにでもあった地方の村々をあの形で代表させているように思うし、妖精もそのどこにでもあった価値ある財産的な持ち上げ方のように思える。かつての村にあったもので、それは村で管理しなければならず、悪用すると国を滅ぼすような影響力を持つとなると、貨幣経済に関するものというよりは、人間の欲望に関するなにかのような気がするが…。まぁこれは確かに巧妙に隠されてはいるんだろうなとは思っている。