さいころ倶楽部、かなり面白くて期待はずれだった

 新番チェックのときはオタクが跋扈するアニメなのかなとか思っていたので、個人的には予想外の大当たり作品だった。
 まぁ作品全体からして説教臭い予定調和モノなのだが、アニメ公式のイントロを読んだら成長モノと書いてあったし、そういう目的が最初っからあるのなら、ボードゲームという素材とのミックスとしてよくできてる。ゲームの紹介モノとして参考程度になれば良いと思っていたのは前にも述べたが、ちょっとこれは背筋が伸びる感じ。
 まず、ゲームの紹介がわかりやすい。ルール説明してもそれだけでゲームの面白さはわからないから具体的にプレイしてみせるのは定番だが、ゲーム終盤にはプレイとしてちゃんと形になってるし、ゲームを通じて成長するってこともミッションとしてクリアされているからなかなか無難な仕上がり。
 そもそもボードゲームは「勝ち負けを決めるためのコミュニケーションツール」ってことよりも、それ自体がなんらかのものを表現するものになってる。例えば社会そのものをある視点で切り取ってみせるとかそんなの。今回の「インカの黄金」も、探検して宝探しという表層も、ゲームをやる動機としてそれなりに面白いが、中身の説明を受けると、これ、結局のところリスク管理ゲームなのだとわかる。チキンレースという捉え方も間違っていないが、チキンレース自体の勝利条件は臆病でないことを示すためにいかに我慢するかってことなので、ヘンな話、ブレーキを掛けずに海に突っ込んだり壁に激突するのが究極の勝利になる。ところが、これは収益を最大化していかにタイミングを見計らって撤退するかということなので、レッドオーシャン的なものから事業撤退時期を見極めるってことにもつながる。
 しかも、これはゲームなので、2番ではダメというのも示されていて面白い。現実だと投資額を考えて何倍ものリターンが確保できれば別に二番でも三番でも人生的には勝利条件を満たすわけなんだが、ゲーム上の目的はあくまで一番になることなので、今回主人公が最後の判断としてチキンレースのブレーキを掛けないという判断は正しい。かといって今回初登場の金髪ネーチャンが撤退判断を下したのは間違いってわけでなく…というのも納得できる流れ。しかも、主人公が臆病風を取っ払って正しい判断を下せたのは、決して自分だけのものではないというのもクライマックスの結論として美しい。
 PCでもソシャゲがメインになってしまったから、それに慣れていると想像もつかない世界だとは思うのだが、世の中にはこういうゲームもあることを知るのは割と新しい世界を目の当たりにする感じで好ましいと思うんだが…。マイナーなジャンルに光を当てるのに、昨今は美少女を客寄せパンダとしてるだけの作品が多いのだが、これ、結構ジャンルそのものの面白さを引き出しているように感じる。