キャロル&チューズデイ最新話まで。

 いちおう新番チェックのときは視聴対象にはしてたんだけど、ガルフレふむふむのお供に消化してみた。
 おそらくアメリカの社会問題とも併せてもうちょっと重たいものかと思っていたんだけど、意外にテイストは軽め。舞台はどう考えてもアメリカがモチーフなのだが、物語的には火星が舞台ってことになっていて、第1クール中盤までどうにも引っ掛かっていた。まぁおそらくだが、現実のアメリカ社会ということだと、「こんなのアメリカじゃない」というクレームがつく可能性があって、それを避けたのかなという気がしないでもない。ざっと視聴した限り、確かに社会問題がいろいろ散りばめられていて、それはアメリカのものだったりするんだろうけど、実際にはそういう重苦しいテーマがすごく骨抜きにされていて、先進国だったらどこにでもありそうな感じに一般化する作業をしているのかなという感じ。
 もしかしたらこれからのクライマックスでテキスト的な盛り上がりがあるのかもしれないが、今のところ全体的には音楽自体が主役であって、キャラが繰り広げるドラマ部分は個人的には三文芝居の範疇。
 正直あちらの事情に詳しいわけではないので、何が正しいとかそういう判断基準がわからないから主観的なものになる。視聴した感じ、あちらの文化をスタッフはよく調査していろいろな要素を盛り込んでいると思うので、あっちでは本当はこうなってるなんて言える根拠を持ち合わせてない。自分あちらの音楽に詳しくもないし、わざわざ選って聞くこともないのだが、あちらの音楽が好きな人が作ったんだろうなとは思う。主役級の二組の楽曲はまぁ似たような感じのものなのだが、個人的に面白いと思ったのが前半で大部を割いて描写されていたオーディション番組のあたり。おそらくあちらのTV番組にああいうのがあって、都合よく構成してみせたんだろうけど、なるほど日本に輸入されているあちらの楽曲は選別されているんだなと思った。かの地ではあんなにバリエーションがあるんだなと裾野の広さが窺えてこれは終始感心しながら視聴してた。出演者のキャラをわざと濃くしているのはげっぷが出るのだが、その濃いキャラの歌うものが揃いも揃ってクォリティ高く仕上がっているの、なかなかのもの。
 この作品に通底している大きなテーマに「AI」というものがあるが、これが微妙なのが残念。もちろん実用化されて現にAIの問題になっているものもあるんだろうが、ほとんどがAIが実用化されたらきっとこんな問題が起こるだろうという想像の産物という要素のほうが強いので、今一と感じてしまう。まぁだからこそ火星が舞台という近未来SF設定でもあるんだろう。が上述の通り、この作品の優先順位は音楽>人間ドラマ>社会問題なので、そのへん扱いは軽いしスルーできる範囲に収まってる。
 うーん、音楽を主軸としてあらゆる要素がバランスよく配置されているのはよくやってるなという感じだが、個人的にはこれだけ音楽にこだわりをみせてその部分のクォリティが高いというものでなかったら途中で見切っていたかも。ドラマとしては、あちらでは決して避けて通らない人種差別問題を、この作品では今の所見事にスルーしてるし、孤児であるキャロルがピアノで金銭的に余裕のあるチューズデイがギターなのも、普通逆じゃね?とも思うんで、トラブルを避けるためにいろんなことから逃げすぎてはいませんか?といった感じ。まぁ普通に考えて火星に人類が移住してから50年であのような社会になるはずがないでしょ*1ってなもんで、そのへん突っ込んでも益はないのだが。
 いろいろぬるさが感じられて視聴中背筋が伸びるって感じではないんだけど、音楽部分の作り込みがよいので不思議と退屈しない。まぁダラダラ視聴を続けていくと思う。あと一ヶ月ほどだろうけど。



 そうそう、窪之内英策の名前久しぶりに見た。今でこそ全然見ないが、若い頃はビッグコミックスピリッツを目にしていたのであぁあの人かぐらいの懐かしさはあった。

*1:地球と同じ環境が整っているので投下資本は莫大だから、これまたコストがべらぼうに高い宇宙旅行までして貧民が火星であのような日常生活ができるはずがない