川柳少女を見てみた

 なんかいろいろ微妙な感じ。最新話まで視聴して思ったのは、これおそらくアニメにすべきじゃなかったのかもという点。主人公?の七々子が唖という設定なのだが、漫画という音なしメディアのほうがしっくり来るような気がする。現にアニメの本作を視聴するとちゃんと声が当てられていて、じゃぁリアリティを重視して声なしでやったらということを想像すると「ないな」と思わざるを得ない。実際絵描きキャラ登場回で声なしでやってたが、これでは視聴のハードルが上がるわなと納得。自分もアニメはながら視聴することが多いので声がないとしんどい。
 そこで、重要なポイントではあるのだが、この作品、川柳というより唖のほうがテーマとして重い。声という手段を封じられているから意志の伝達に困っているのかと思うと、当人たちはやたら発信者としてアクティブで、そういう視点で視聴するほうが面白い。
 日本はこう古事記だとか日本書紀に見られる通り、文字文化は輸入されたものであって、もともと音声文化という要素が強い。川柳も五七五が基本ということは、そこには音声を是とするリズム感を重視しているわけで、原作漫画も短冊に書かれた川柳を視覚で提示してはいても、読者の脳内に自然とそのリズム感を生じさせる効果を期待しているはずで、そのへんの唖というテーマとの微妙なミスマッチが逆に面白く感じる。
 エピソードは何の変哲もない日常系&ラブコメで、これまた微妙。ところがちはやふるだとかこの音とまれ!などの和そのものをテーマとした作品のように、やたら勝負につなげて大会を目指されても困る…というか、川柳こそ日常そのものを題材にするというところを考えると、なるほどこれは確かに風景設定としては正しいと思うしかない。が、テキスト自体は極々平凡で、川柳だけでなく優れたテキストがときおり見せる日常の切り取り方によって新しいものを提示するってところはほとんどない。が、これまた思うには、逆にそういう優れた日常の切り取り方を連発するような作品であったらおそらく売れてない。平凡な日常からの逸脱がないからこそ、それなりに人気を得たんだろうなと思うと、やはりこの作品「微妙」というしかないのが困る。正直感心させられることばかり。