キノの旅 第12話

 うーん、わからん。
 闘羊の話、よくわからんかった。羊といえば聖書の昔から民衆、それも牧童が必要なという意味で自立していない人間のメタファーとして描かれることが多いので、そういうのを念頭に視聴していた。が、羊が旅行者を襲う理由が今一特定できない。えさの豊富な草原に放逐したということだし、こう、観客のためにお互いをいがみ合わされるように育てられた挙げ句、棄民されたと考えてみても、それならなぜ元居た国を襲わないのかとか、どうにも辻褄が合いそうにない。闘羊ということなら、羊を攻撃するように躾けられるわけで、人間を襲うというのは闘羊にとって優先順位は低いのではないかとか思ったりする。但し、あの門番が語っていたことがウソである可能性も十分に高いので、よくわからんところ。羊が心配というのなら別にちょいと見に行けば良いだけの話であって、なぜそれを全然しようとしないのかとか、あの断崖も今回このアニメで見る限り自然の力で出来上がったものとしか思えないが、実際には人為的に断絶する柵のようなものであって、この作品はそもそも寓話なのだから、わざと人為的であることを見せないようにしてるのかもだとか、考えれば考えるほど腑に落ちる解釈に落ち着いていかない。冒頭では日本語のみだが、ヒキに出てくるサブタイの英語訳としてStray Armyとあったから、え?、軍隊だったの?という驚きはあるが、軍を廃したら凶暴なので放逐すれば人を襲うようになるというのもヘンな話である。羊同士が争い合ってるわけではなく、人を見たら反射的に襲ってきているところからすると、やはり人間に対してなんらかの怒りなり恨みなどがあって、自分の命を顧みることなく突進してくるとなると、その思いは深いものがあると考えざるを得ないが、ではその原因はなにか?というのを考えても思いつくものがないという。まぁ個人的にはやはりあの門番の動物愛護の観点からというエクスキューズが怪しくて、何が原因であんなに凶暴になったのか知らないが、危険だから生活圏から当座けて隔離する何らかの出来事なり判断があったんだろうなとしか考えられないのだが、それも今一しっくりこない感じである。
 別にエピソードのすべてが現実社会のなんらかのメタファーであるべきというわけでもなく、現実から色んな要素を借りてはくるが、語られることは一種の思考実験であってフィクションそのものであってくれても構わないんだが、そういうのとも違うっぽいしな。この第2期、自分の思い違いもあるだろうが、結構な割合で現代日本の問題点をそれとなく示していると思っているので、これもそうなんかな?と考えても見たんだけど、それもやはりしっくりくる解釈は思いつかなかった。
 ふと思い出したのは実際の自衛隊員が野党の国会議員に「国民の敵」と罵った件だが、原作の時点でその犯罪行為は起こってなかったし、こじつけにも無理があるという感じ。このエピソードをチョイスしたアニメスタッフの意図ならありそうだが、まぁ普通は関連はないと考えるべきだろうな。
 さて、第2期を視聴し終わって、個人的にはあまりパンチが効いた感じのものではなかったかな。第1期はもっとおどろおどろした感じだった記憶があるのだが、もうかなり前のことだし、自分の解釈力も違っているので、昔の印象と比べるのはあまり適切でないような気もするが。たゞ、この日本の現状を見るに、今、この作品をアニメ化して大衆に晒すことの意義は確かにあるという気はするので、金策をした人には敬意を評したいと思う。もっと日本がマシな国になったらあらためて続編を視聴したい。