なんか大きなおねえさん方がいろいろ垂れ流しの作品だった。年末はユーリ本とか出てたんだろうな。
基本はフィギュアスケートの約1年を大まかになぞっていたので、特に構成として新しいところはなかったかも。とはいえ、新しい要素はいろいろ入っていたようで、そのへんなんとも評価しづらい。なんかせかつよを思い出してしまった。せかつよのほうがドラマというか展開が凝っていたけど、こちらはどちらかというと話運びはフツーでそのほかでいろいろ実験していた感じ。
絵的には最初凝っているのかなと思ったのだが、割とクォリティが低くて、縮尺があってないこともあって困惑。が、自分的にはそれほど絵に重きを置かないのでまぁそんなものかといったところ。が、おそらく同じセルの使い回しをしたうえで、回を重ねるごとにクォリティを上げたり枚数を増やして、見せ場である最終回でクォリティが極大になるような作業工程にしていたんだろうと思う。が、なんといってもOP映像のクォリティが一番高かった。エンドロールを見たらスケート実演なんてのがあって、そのわりには本編ではモーションキャプチャーもあまりトレースもしていなかったように思う。CGを丸々使わなくても補助で使えばそれなりに見栄えがすると思うのだが、そうしたようにも思えない。正直OP映像や終盤のアニメーションのクォリティを保てなければ、実写のほうがはるかに迫力もあるんだろうけど、対象は世界レヴェルの演技なのでそういうわけにもいかないだろう。動きは三次元のリアリティに近づけているが、いわゆるアニメ的な絵や動きだからこそ表現できることも多いのに、それになるべく頼らずに本作ならではのものを目指した心意気は買いたい。
絵にリソースを割かずに、その分音楽に投資したのだろうけども、これはたしかに豪華。これ、ほとんどがオリジナルなんだよね。もっとクラシックの定番を使っても良さそうなもんだけど、そのへんはこだわりなんだろう。カヴァーするときにも必ずアレンヂしてたし、そのへん実際のフィギュアの選曲も既にあるものをそのまゝ使うことはほとんどないので、その流儀に従ったというか。まぁ著作権料払うよりオリジナルを使ったほうが却って安上がりだったのかも。そのオリジナル曲もどっかで聴いたような、なにかに良く似せたという安っぽいのではなくって、味付け程度は取り入れるが基本ほとんど書きおこしといったものでよく奮発したなぁといったところ。
ストーリーはちょっと主人公の性格付けが凡庸なところ以外はそれなりに楽しめるもので、特にスケートを知らない人向けに紹介って感じだったし、そのへんはうまくできていたかなという程度。自分は昔は見るスポーツはフィギュアスケートを評価していたので、冬はなんとなく見る機会がそれなりにあったのだが、素人が選手の演技を見て好き嫌いで判断していた程度であって、このぐらいのルール説明は微に入り細に入りでないのでありがたかった。アニメでもいわゆる芸術点よりは技術点に焦点を当てゝ勝負をしてたのもそんなもんだろうなという感じ。
さて、本作の面白い視点があって、そのうちの一つが地域興しの視点があったこと。まさかスポ根?に混ぜることができるとは思わなかった。偶然紫波町のオガールプロジェクトを知る機会があって、バレーボール専用体育館で意欲的な挑戦をしているってので全国で最初の取り組みらしい。まぁそれはともかく、地域おこしで使うカネを土建屋に垂れ流し、維持費で破綻するハコ物でどの地方公共団体も失敗しているわけだが、この作品では、人に投資するという視点が明確になっていてちょっと感心した。まぁ別に世界的なスポーツの才能を持つ芽がどの地方にもいるわけではないから、こういうのも博打というか、初期設定如何によるわけで、そのへん全国で取り組めるものでもないが、別に人に投資するその分野がスポーツに限らなくても良いわけで、これはなかなかのもの。あとはその地方にもともとあるものも活用しようってところで、特効薬というわけではないが、何か指針になりそうなものであることは間違いない。
本作で面白いところのもう一つのものは、リスクテイキングの描き方が丁寧だったこと。まぁこれはフィギュアスケート特有のものなのだろうが、今まで他の作品も主人公が危機に陥った場合、それを打破するためになにか努力だの工夫をするということは物語の試練の克服といった意味では必ずあったわけだが、これは追い詰められ感の演出が少なくて、自分の持つ実力との相談で挑戦するという流れが自然だった。今までの作品だとやれ特訓だの秘密兵器だのを入れてくるのが定番で、それはあまりに漫画的というか、非現実的と感じさせるものが多かったのだ。それが本作では自分の今までの蓄積の延長上にあって、ちゃんとバランスが考えられている。そりゃ無から有になるとか、劇的に能力向上ってのはドラマのカタルシスとしては有効なんだろうけど現実にはありえんだろと思うわけで。
そんなわけで、割とネットでの評価が高い割にそれほど自分的にこれは特筆して凄いというほどのものでもないとは思うのだが、しかし、やはり本作ならではのものはたくさん盛り込まれており十分楽しめる作品ではあった。