響け!ユーフォニアム 第5話

 いやまぁ、出来過ぎではあるよな。

 地域の野外合同演奏会にて面目躍如といったところ。そんな数週間で上手くなるもんかと思わなくもないけど、部員のもともとの技術がそれほど下手糞というわけでもなかったんだろう。そうなれば、特に野外だと細かなニュアンスなど表現してもそれは消えてしまってどうでもよいから、言ってしまえば音が揃ってさえいれば形にはなる。軍楽隊の野外演奏を聴いてもらえば(今回の演奏でもわかる)明らかなのだが、フルートなんて柔らかい音を出してもそれは聴取者の耳に届かないので、むしろ刺すような音を出さねばならない。まぁうまく吹くよりあわせることのほうが重要で、そのへんやはり効率的な気持ちの合わせ方というのを滝先生はやってたと見るしかない。

 すなわち、集合して最初の発言はリラックス重視で、出番の直前(大抵はあの段階で顧問が口を出すことはない)に生徒のコンプレックスの裏返しであるプライドを刺激して集中させるという手法だわな。最初っから緊張させていたら、出番までの待機時間に維持できるはずもなく、いざ出番の寸前に高揚感を与えようとしても、当の部員は緊張の維持をし続けていた末の停滞なので、これをもう一度高めるのは難しい。緩急を使い分けた指導であるが、こういうのは春秋だとか十八史略などの古代中国の名将軍のエピソードあたりに例がそこそこ載っていることだから、実際その場でやれるかどうかは別にしても、意識して学習することが可能だし、意識しないで自然に身に付くことはない。

 名プレーヤーは名コーチたりえない場合が多いのはやはり集団をコントロールするという意志とその手法をどうやって見つけるかということに尽きる。部活動でいえば、部員は指導者のあり方に賛辞を送るか非難するかというある意味批評というか文句言いの立場でしか普通物事を考えないから、その受身の態度ではいくら良い指導者にめぐり合っても、いざ自分が指導者の立場に立って同じことができるか?と言われると難しい場合が大半。指導される側が一歩進んでいたとして、指導者の発言(指導)の意図や真意を汲み取って自分の技術向上にうまくつなげることができても、それは所詮受身の態度であってやはり集団のコントロールという概念に踏み込んでいかないと手法を身に付ける以前の問題になってしまう。

 しかし、この作品は学園ドラマであっても、こう金八先生だとか夕陽丘の総理大臣ではなく、あくまで生徒視点の成長モノなので、滝先生の指導は修飾程度にしておいてクローズアップしてはならないわけだ。そのへん、顧問を上手く空気化させて部の上昇基調と併せて本格的にエンジンを吹かせてきた感じ。