コーヒー冷却器具を試してみる。

 今までアイスコーヒーは、(ペーパー)ドリップしたてのホットコーヒーを、直で氷入りのグラスに導いて作るものだったが、この方法はもともとのコーヒーを濃く作らないと氷を大量に融かす分薄まってしまうのでどうにもゝどかしいものだった。自分は常々抽出したてのホットコーヒーを水で冷やして、それから氷を入れて極力薄まらないように作れないものかと思案していたのだが、この度その装値を作ってみることにした。基本はその水で冷却する部分は中学高校でよく見るリービッヒ冷却菅をつかうというものであるが、リービッヒだと熱交換部分が直管であって、冷え切らないのではないか?と案じていた。その部分が螺旋状のもの(グラハム管というらしい)というのをいちおう見知っていたのだが、この度そのグラハム管をebayで安く購入できる(本当は果実酒作成の折に見つけていたステンレス製の凝縮管が欲しかったのだがどうにも現段階では入手に難がありそうなので断念した)見通しが立ったので、購入手続きをしてとうとう試すことができたのでちょっとご披露。




 ebayでも中国の業者。なんとこのような大げさな梱包で届いた。

 基本透明テープでぐるぐる。これを剥がすのがめんどくさいのだが、スチロール?製の箱は両面テープで止められているので注意。

 冷却部分が40㎝のを購入。探せばこの部分が60㎝のもあるのだが、あまり長いと背が高くなりすぎてドリップがしにくいのでこのへんは環境によるだろう。全長は52㎝ぐらいだったかな?。

 冷却水用の管を蛇口に取り付けるアダプター部分を自作するのでその部品。タカギのピッター蛇口にシリコン製チューブ内径12㎜。と異径チューブのコネクター

 右側のネジ部分を回していけばチューブが押しつぶされて水漏れがなくなるという仕組み。

 完成。そう難しい作業でもない。

 蛇口につけて試してみる。特に問題も無し。

 これが一番到着が遅かった。

 随分外箱が大きいなと思っていたが、中身は小さかったという。

 実験用のスタンド。これ本体は2000円しないのに送料が2000円以上する。合衆国本土から送られてくるのだが、どうもebayの海外発送システムを使っているらしく、いちどケンタッキー州のアーランガーに集められてから(こゝまでは早い)、海外発送手続きに切り替わる。

 支柱を直接台にネジ込むタイプ。本当ならこれ支柱のネジきり部分を長くして台を貫通させ、六角ボルトで固定するようにしないとスグ緩むんだけどねぇ。しかもなんとメイドインチャイナ。中国のサイトで取り扱っているところが見つかれば送料分安くなるんだろうけど、ちょっとばかし検索した程度ではヒットしなかった。

 ケックチュービングアダプターというもの。普通冷却水はゴム管を直接冷却菅につなぐんだけど、アダプターを噛ましてゴム管を冷却菅から手軽に取り外したいという思惑があって注文。

 これが部品。

 まづこれを嵌めて

 Oリングを装着。このOリングがぴったりと冷却菅の冷却水導入部分に嵌り、もう片方の黄色のプラスチック部品と密着すれば水漏れはしないという構造。

 これで準備OKなはず。

 水色の部品にチューブを嵌める。普通のゴムのほうが安いが、劣化するとやれガラス部分にねとついたり、硬化してボロボロになるのでシリコンチューブにした。この水色の部品の口径が大きめでチューブが入りにくい。抜けなければオッケーなので特に深く嵌めなくてもと思い、この程度でも良しとした。

 冷却菅を支柱に固定するクランプ。冷却菅を抑える部分はあとの画像のように布で巻いておく。いちおうそれをしなくても緩衝材はもともとついているので必要ないといえばその通り。

 いちおう主要部分の全体図。割と凝縮管部分が台の重心部分から離れているので、凝縮管を手前に引っ張るとた易く倒れそうな気はする。こゝはむしろ中国の業者でよく売られている台座部分が長方形の製品のほうが安定するような気はする。

 冷却菅の導入部にろうとを装着。この漏斗はpowder funnelとあったが当初の目的では上にドリッパーを載せるだけ(ドリッパーを使うのなら、直接グラハム管に接続できないので漏斗は必須)だから特に精度は必要ないと考えていた。

 摺り合わせ部分。ホットコーヒーが注がれるのでガラスの膨張的に言うとあまり好ましくないのかもと思っていたが、よくよく考えてみれば大学時代摺りあわせ部分のフラスコと還流部分の接合部もよく熱してたわと思い出す。両方ともボロシリケイトガラス(つまりパイレックス=耐熱ガラス)なので問題ないはず。

 管内を洗うということで上から湯を注いでみると、下の流出部分で盛大に飛沫が周囲に飛び散る*1。小さいカップに注ぐときは下駄を履かす必要があるだろう。

 いよいよドリップ。やはり装置が高いのでドリップしにくい。

 摺りあわせ部分の様子。

 螺旋部分の様子。といっても大半流れ落ちた後。ドリップしながら画像を撮るのは難しい。

 流出部分。いちおう受けているのはサーモスの400mℓの真空断熱タンブラーなので、冷却菅の流出部よりタンブラーの縁のほうが高くてコーヒーが零れることはない。

 ちなみにドリップした後の様子。ドリッパーはいわゆる三つ口のではなく、純円錐形のやつ。これ専用のペーパーフィルターが高いのだが、三つ口用のペーパーの折りかたを工夫して使用してる。中身が見えにくかった割にはコーヒーの粉の残り方が理想的。よく見える環境でもこんなに上手くいったことは稀。ペーパーフィルターは3〜4人分用、コーヒーは専用匙2杯分で出来上がりのコーヒーが300mℓぐらいなので、ちょうど二人分を正規の分量で作ったことになる。

 実はケックチュービングアダプターの下(冷却水導入部)から水漏れが発生。黄色どうしの部品の噛み合わせが悪いのか、それとも水色と黄色の部品の噛み合わせが悪いのかわからないが、漏れて水道水がコーヒーに混ざるのは言語道断。直接シリコンチューブを嵌めた。なんだよ、高かったのにサ。ちなみに上のほうは水漏れしてなかった。

 ちなみにろうとにペーパーフィルター(1〜2人用)を直接嵌めてみた。なんかこれでも良い感じがする。


 台所が汚いのはご勘弁を。


 いちおうこれで抽出・グラハム冷却直後に飲んでみたけど、常温に近いというよりはぬるいと感じた。原理的に水道水以下の温度には冷えないが、それにしても自分が期待していたほどでもないかなという程度。ドリップ直後の流体温度は60〜80℃ぐらいだと思うので、それが40〜50℃まで冷えたかなというのが体感だが、後で実測したら、冷却水22℃で、導入91℃流出62℃、導入76℃流出57℃、導入62℃流出48℃、導入52℃流出43℃だった。まぁどっちにしろ、この段階ではとてもアイスコーヒーとはいえず、やはり氷で冷やすのは必須。冬だと水道水も冷たいので、それなりに冷えるだろうが、そもそも冬にキリキリ冷えたアイスコーヒーが飲みたいか?という問題が横たわる。


 さて、それに氷を投入して冷やすと、自分が喫茶店で飲んだアイスコーヒーよりは濃い。前述の通り、元々のアイスコーヒーは氷を盛大に融かして薄まる分、深く焙煎した豆を使って濃く抽出しなければならないが、これだと深い焙煎も濃く作る必要もなく、普通分量でドリップしてアイスコーヒーを楽しめるというレヴェルにはなる。とはいえ、やはり氷が融かす分を考慮し、また人間の舌は冷たいものは味を薄く感じてしまうということから、心持ち濃く抽出したほうがよいだろう。


 が、なんというか、結論としてそこまでしないとダメか?と言われると、かける手間に比べてみると、氷だけで冷やすほうが手軽で味にそんな違いはないと思うとなんとも微妙なものである。やはりこの装置では粗熱を取るぐらいの効果しかない。凝縮器に金属製のものを使えば熱伝導率が大きい分よく冷えるし、冷却水に氷水を使えばタンブラーに氷を入れなくともアイスコーヒーを作ることができるだろうが、おそらく効果的に冷やすためには1.粗熱を取る+2.冷却水に氷水を使うの二段階をきっちりやらないと効果なさそうで、そこまでするのはちょっと戸惑う。せっかく器具を自作(自作というよりは組み合わせたゞけだが)してみたが、どうにも無駄遣いをしてしまったなぁというのが正直な感想。


Lab Scientific Cast Tool Iron Support Stand Ring Acid Resistant Finish 7-3/4"x8" 1735.44JPY shipping 2346.27JPY


400mm,24/29,Graham Condenser,Glass Coiled Column,Lab Chemistry Glassware 3474.97JPY
90mm,24/29,Glass Powder Funnel,100ml,Lab Glassware,Made From Borosilicate 1397.34JPY
Silicon Rubber Hose,OD 9mm,ID 6mm,3 Meter/lot,Fit for our Glassware 735.44JPY
Flask Clamp,Condenser Lab Iron Holder,Clip,Total Length 180mm 3309.50JPY at 2Qty


モノタロウ シリコンチューブ MGJG-12.0 12mm×16mm 1巻(1m) @¥539(外税) × 1
タカギ ピッタ-蛇口 (FJ) G003FJ @¥369(外税) × 1
サンプラテック TPXチューブコネクターテーパータイプ異径型 3544 大 (10個) @¥479(外税) × 1
ケック ケックチュービングアダプターKA-14E @¥1,082(外税) × 2


 スタンドは合衆国の業者で届くまで2週間ほど。ガラス器具その他はebay業者のdeschemというところで送料もなく、到着はなんと注文から二日後。到着時割れていた漏斗を交換してくれた。冷却菅まわりはモノタロウで購入したが、これが1週間もかゝった。ケックチュービングアダプターの入荷待ちだろうが、理化学機器の業者は大名商売なのか対応が遅いっぽい。なんかグラハム管が3500円は安すぎるという感覚。モノタロウでもアスクルでも一万はくだらないので、日本の業者を使う理由が見当たらない。600㎜のでも8000〜9000だから割安感は半端ない。
 が、この装置全体で一万六千円も使ったのでなんかちょっとかけた金額に比べて得られた効果を考えるとシオシオという感じ。流体を冷やすということで他の用途があるわけでもなし。

*1:液体には粘性があるのでガラスに張り付き、縁でガラスに誘導されて外側に流れてしまう。要するに小学校で習う「ろ過ではろうとの先をビーカーの内壁にくっつけておきましょう」。