ステラ女学院高等科C3部 第10話

 なんでこんなことに…。
 まぁビックリだわな。サバゲ紹介を萌えアニメでやるんだから、そこそこテキトーにそれらしいエピソードを詰め込んでそれらしくでっち上げる作品なのかと思ってたら、趣味にのめりこんでドツボに嵌る姿をこうまで真剣に描いてくるとは思わなかったよ。見ているときには集中させられてなかなかよろしいんだけど、この作品を視聴対象に選んだ自分の動機を考えると、ちょっとドン引きな感じがして滑稽。
 主人公がどうしてこういう袋小路に陥ってしまったのかを考えると、次号予告のそのら先輩のちょっとした表情から察するに、おそらくきっかけは彼女なんだろうなと思い至る。なまじっか彼女がサバゲに臨むにあたって求道者たるべしなんて雰囲気を伝えちまうもんだから、生真面目な主人公が技能向上の罠にといったところか。かといってそのら先輩が主人公にしたことは他の部員にもしていたわけで、たとえばれんとには伝わらなくて、じゃぁ生活するうえで主人公のように会得するのが幸せなのか、技能向上はほどほどにサバゲは楽しむ程度なのが幸せなのかは作品で語られている通り。残り話数からすると主人公が引き上げられて解決という構成だろうが、よくこゝまでやるよと感心する限り。
 こういう状況を扱うんだったら二昔前ぐらいだとモロにスポ根でといったところ。高校生の部活動でもよいし、安直に取り扱うんだったらプロ野球選手が合衆国の大リーグに行くって話の方が自然なんだよな。高校野球(他のスポーツでも全然あり得る)の越境入学なんてのも、当然にして「自分は地元の弱小チームにいる存在ではない、強豪校こそ自分が輝ける」ってなもんで、生々しい話になってしまう。
 で、現実的なスポーツに落とし込んでしまうと、そのスポーツやその競技者への非難になってしまうし、そのスポーツの競技者はおそらく題材がサバゲであるという段階で視聴対象にはしないから、棲み分けというか、この作品のメッセージが該当者には伝わらないというすれ違いにという構造がまぁなんといゝますか、そのミスマッチをどう判断してよいやらで困ってしまう。いやほっとけといったところだろうけど。
 今回の話で含蓄があるのは、主人公は凜に言われたことは決して本人がそう思っていることではなく、結果としてそうなってしまっている…ということ。そしてそれを言語化して伝えたところで、それが正しくは伝わらないことっつーのがよく表現できていたということ。そのら先輩が主人公の状況が良くないと思っているにも拘らず、決して口頭で注意しないし、他の部員が揉めているときにもほっとけといった態度なのはなるほどなんだよね。
 そしてこの構造は例えば「ちゃんと口で言ってくれないとわからない」とかいうバカの繰り言に対する「どうせ口で言ってもわからない」というよく見る光景に当て嵌まる。ほんでもって、こういうのは社会的地位の高い人間が主人公の陥っている穴に嵌っていると、誰も注意することができなくて、周囲の人間に不幸を撒き散らすだけでなく業績も悪化して、その責任を負いたくないがためにさらに暴君の度合いを強めるといった、不幸の拡大再生産にしかならないって構造につながる。
 なんか決して勝てないとわかっている戦争に突入して、案の定負けてその責任を取らなかった層の子孫が今盛大に自民盗にいて、日本をめちゃくちゃにして憚らない現状、こういう構造を示すことに意味がないとは言わないんだけど、なんかちっとも解決にはつながらないんじゃないかとは思うんだわな。いや、アニメ程度に解決なんて期待してもしょうがないんだけどね。そもそも本作の主人公には悪意がないし、おそらく展開としては主人公が誰にも相手にされなくなって本人が反省するといった段階を経るだろうけど、社会的地位の高い人間で同じような状況に陥ってる連中は、誰にも相手にされなくても仕事上仕方なく付き合わなくてはならなくて、本人が自覚するということがめったにない。権力を振るえば自分の思い通りになるもんだから状況がちっとも良くならないんだよね。